第4話 悲しみを力に

勘太郎と木田は、愛唯に、捜査本部に来て欲しい件を頼んだ。

残酷なことだと思ったのだが、愛唯は園田の敵討ちにと快諾してくれた。

しかも愛唯は、ドレスのままで行くつもりだ。

勘太郎がタクシーを手配したので、萌が、愛唯に付き添って来ると言い出した。

木田からの連絡で、本間が全員集合をかけている。

いくら新しいとはいえ、警察署などという建物は、無骨で殺風景な建物だ。

そんな建物が、愛唯と萌が入ったとたん、華やかになって。

女子職員達は、羨望の眼差し。

『警部補・・・

 綺麗な人達ですねぇ。』

木田に話しかける女子職員。

捜査員達も、驚いている。

ピンクの花柄の和服姿の萌が、本間に挨拶する。

『警部・・・

 ご無沙汰してしまいまして、

 すんまへん。』

もう全員が、ひそひそ話しになっている。

『流石は、警部や。』

『あんな美人と親しそうに。』

木田が、本間に報告を始めた。

『警部・・・

 こちらが、先ほど電話でお

 話しした高柳愛唯さん。

 被害者のフィアンセです。

 萌ちゃん所のホステスさん

 ですわ。

 みんな・・・

 紹介しとくね・・・

 こちらの和服の美人さん。

 祇園の乙女座っていう高級

 クラブの女将さんで、高島

 萌ちゃん・・・

 うちの真鍋勘太郎の奥

 さんや。

 ほんで、こちらが今回の被

 害者のフィアンセで、高柳

 愛唯ちゃん。

 萌ちゃんとこのホステスさ

 んや。

 被害者は、園田貴史さん。

 実は、愛唯ちゃんは、昨日

 園田さんからプロポーズさ

 れたばっかりやったんや。

 幸せの絶頂から地獄に転落

 させた犯人は、絶対に許せ

 へん。

 彼女のためにも、なにがな

 んでも星を挙げるぞ。』

捜査員全員の顔に怒りが浮かんでいた。

タクシーの支払いをして。少し遅れてきた勘太郎が、捜査本部の後ろで、萌の横に並んだ。

捜査員と女子職員達が、騒ぎ出した。

『勘太郎・・・

 奥さん、美人やなぁ・・。』

佐武が勘太郎に話しかける。

『おいおい・・・

 お前、俺らの結婚式に参加

 してくれたやんか。

 何回も家に来てるやん。

 あの時と違うのは、ドレス

 やスウェットから和服にな

 ったぐらいのもんやで。』

何回も会っているにもかかわらず、洋服と和服では、見た感じがかなり変わることが面白いと2人で笑った。

『和服は、女の子をおしとや

 かに見せるからねぇ。』

萌の言葉に、激しくうなずく勘太郎。

『たしかに・・・

 和服の時は・・・。』

そこまで言って口ごもった。

愛唯が、泣き出したので、萌がそばに行ったからだ。

『皆さん、貴史さんの敵討ち

 、よろしくお願いします。』

愛唯は、涙ながらに頼んだ。

捜査員は、全員が捜査1課の刑事なのだから、犯人に憎しみを持たない者はいない。

愛唯と萌を、覆面パトカーで店まで送り。

『愛唯ちゃん・・・

 悪いんやけど、君のカスタ

 マーカード見てもえぇか。』

愛唯にとって、勘太郎は刑事というより、勤め先の旦那である。

否やがあるはずはない。

勘太郎が、何枚かのカードを捲ったところで手を止めて書いてある内容に釘付けになった。

同じように、何枚かカードを捲っては1枚づつ抜き出していく。

勘太郎が抜き出したカードのカスタマー。

つまり顧客は、ある特徴で、一致している。

勘太郎は、抜き出した数枚のカードを持って捜査本部のある東山清水警察署に戻ると木田に相談を持ちかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る