第2話 闘いの神
東山安井のスーツ姿の男性は、佐武の鑑識によると、鈍器のような物で後頭部を何回も強打されたことによる、頭蓋骨骨折と失血が原因のよぅだ。
とすると、殺人事件の可能性が高くなる。
『おいおい・・・
東山安井金比羅宮の前で。
まさか、崇徳天皇の怨霊。』
またまた魔界に結びつけ始めた。
『流石、魔界刑事勘太郎・・
しかし、東山安井金比羅宮
いうと楢崎のアパート。』
佐武は、かなり古いことを思い出していた。
六道珍皇寺殺人事件の犯人、楢崎が隠れていたアパートと目と鼻の先である。
それにしても、何の関係もないと断言できる。
木田の到着まで、現場は勘太郎が仕切るしかないのに、魔界に気を取られていては。
ふと見ると、佐武はじめ、鑑識作業員が、旨そうな物を噛っていた。
勘太郎の腹が鳴った。
よく考えてみると、朝、添田の電話で、起こされてから、何も食べていなかった。
『佐武・・・
それ何・・・
旨そうやん。』
『Lチキや・・・
ファミチみたいなやつ。
隣のローソンで売ってた。』
現場の駐車場の隣が、コンビニエンスストアのローソンで、鑑識作業員達は、買い食いしていたというわけだ。
『佐武・・・
現場、しばらく頼む。
俺も、それ食いたい。』
そう言うと、あわてて買いに走った。
勘太郎のその姿に、現場が笑いに包まれた。
しばらくして、勘太郎がLチキを噛りながら、片手にコーラを持って帰ってきた時には、木田が到着していた。
『おはようございます警部補。
朝、何も食べずに家を飛び
出して来たもんで。』
勘太郎は、言い訳をしたが、木田は意に介していない。
『おぅ勘太郎・・・
それにしても、そのコーラ。
デカ過ぎひんか。』
勘太郎・1‐5リットルのペットボトルをがぶ飲みしている。
『なんでそんなことして肥え
へんねん。
神様、不公平でっせ・・。』
東山安井金比羅宮の方を拝む木田。
この師弟は、どこまでが本気なのか分かりにくい。
『何はともあれ、勘太郎。
スーツに着替えて来い。』
木田の命令で、勘太郎がママチャリで帰って行った。
40分ほどして、駐車場の前に日産SR26DETT型直列6気筒DOHCツインターボをライトチューンアップした2600ccの轟音が響きわたって、勘太郎が帰って来た。
『やれやれ、ようやく通常の
臨戦体制になったな。』
木田がため息ましりに呟いた。
有名なGTRの覆面パトカーの登場で、現場の空気がピーンと張り詰めた。
『ところで、被害者の身元は。』
木田の質問が飛ぶ。
『身元のわかる物を持ってはりませんでした。』
佐武の返答には、勘太郎が反応した。
『物盗りか・・・
狙い打ちか、刹那的強盗か。
いずれにしても、凶悪
やな。』
勘太郎が、ボヤくように呟く。
『最近、凶悪事件が増えとる
感じせぇへんか。』
そう言いながら、本間警部が近づいたから、さぁ大変。
交通整理に当たっていた最初に臨場したパトカーの巡査2人は、ちんぷんかんぷん。
しかし、佐武が鑑識作業員に向かって。
『鑑識作業員・・・
総員気をつけ・・・
京都府警察本部捜査1課課長
本間警部に対し、敬礼。』
と叫んだから、巡査2人も、大慌てで敬礼。
『えらいことになったな。』
と言いあった。
本間は何やら考えている。
『だいたい、崇徳天皇は
白峯さんやろう。
闘いの神さんやってことから
スポーツの神さんになってる
人ちゃうんかい。
まぁ、そんなことえぇわ。
木田・勘太郎・・・
清水署に捜査本部立てる。
捜査1課に集合かけろ。』
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