京都魔界伝説殺人事件・崇徳天皇

近衛源二郎

第1話 崇徳天皇は神様。

794年桓武帝によって遷都された平安京。

現在では、年間5千万人を越える観光客が訪れる。

日本を代表する観光都市である。

小さな地方都市に過ぎないが、西暦794年から、1千年を越える我が国の首都であったことは間違いがない。

そんな古都京都のど真ん中を東西に貫く四条通りの東端にある八坂神社の石段下の目前に走る東大路通り。

この東大路通りを南下すると東山安井という小さな交差点に差し掛かる。

この交差点のすぐ側にある石の鳥居をくぐると東山安井金比羅宮である。

京都最強と言われる縁切り神社として有名なパワースポットである。

東山安井金比羅の目前、先ほどの東山安井の交差点。

近くに月極駐車場が数件。その中の1軒で、早朝スーツ姿の男性が倒れていた。

場所柄、酔っ払いが多く、駐車場の利用者は、いつもの屋根の下で眠った酔っ払い程度に思って、とりあえず110番。

『ハイ・・・

 110番です。

 事故ですか、事件ですか。』

『いや、酔っ払いやと思うん

 ですけど、駐車場の奥で倒れてはりますねん。』

『ご連絡、ありがとうござい

 ます。

 場所は、どこですか。』

諸々の説明の後、パトカーが来てくれることになった。

しかし、酔っ払いと思われた男。

パトカーの巡査によって、心肺停止がわかったため、救急車を要請された。

よほどヒマなのか、救命救急隊の救急車が到着した。

屋根には、ドクターカーの文字が誇らしげに書かれている。

今は、医師は、乗っていない。

救急隊員は3名。

パトカーの巡査から矢継ぎ早に報告がされる。

聞きながら、スーツ姿の男性に近づいた先頭の救命救急隊員が、いきなり、しゃがみこんだ。

『頭の下、血だまりになって

 ます。

 事故や病気と違う可能性が

 ありますね。

 お巡りさん・・・

 ひょっとして、その小さな

 懐中電灯で照らしただけで

 しょう。

 近づく時は、電気消し

 てた。』

言いながら、その救命救急隊員は、携帯電話を取り出した。

『おはようございます。

 捜査1課ですか。

 救急救急隊の添田です。

 木田警部補は、まだです

 よね。』

当然である。

午前6時だ。

いくら捜査1課といえど、宿直の者しかいない。

『なるほど、では出勤されま

 したら、消防本部の添田

 まで、ご連絡下さい。』

そう言って電話を切ると、再度、電話をかけている。

パトカーの巡査2人は、びびっている。

有名な、京都市消防局添田消防士長が、目の前で電話をかけている。

しかも、相手が京都の警察官なら、誰もが憧れる木田警部補らしい。

ところが、今回は違った。

『おぅ・・・

 起きてくれたか・・・

 こんな早よぅに申し訳ない。

 救命救急の添田です。

 実は、東山安井で変死体な

 んや、勘太郎君、たしか家

 近かったと思ってな。』

パトカーの巡査2人にとっては、とんでもないことになってきた。

京都府警察本部のスーパースターである。

真鍋勘太郎巡査長を呼ぼうとしている。

勘太郎は、東大路三条の少し北で東大路通りより少し東のマンションである。

京都文教学園家政女子高校中学の近いマンション。

15分ほどで、スウェットスーツ姿でママチャリに乗った勘太郎が現れた。

大あくびである。

間違っても、女子高生に人気は出ないであろう。

『添田さん、おはようござい

 ます。

 お待たせしました。』

添田消防士長が振り向きながら立ち上がって、手を上げた。

『ごめんなぁ・・・

 こんな時間に・・・

 それにしても、勘太郎君とは

 久し振りやなぁ・・・。』

『ハイ・・・

 上手い具合に、佐武が宿直

 やったんで、呼んどきま

 した。』

朝一番から、東山安井に、そうそうたるメンバーの集合になってしまった。

途中、添田の携帯に、木田から着信して、木田も東山安井に向かっているという。

パトカーの巡査2人は、交通整理と、駐車場の契約者と利用者への説明係になってしまった。

『それでも・・・

 あの方々と同じ現場で仕事が

 できるなんて、夢のよぅや

 ないか。』

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