第九章十七節 昼寝

 それから間もなく、シュランメルト達は解散する。

 18時――ではなく、作戦行動を考慮して17時半に、格納庫にあるそれぞれの機体に搭乗するまでの自由時間を好きに使う為だ。


     *


 シュランメルトは昼食まではいつも通りに過ごしつつ、13時から16時まで、昼寝を取る事に決めた。念を入れて、時間が来たらパトリツィアに起こしてもらうように――逆に時間が来るまでは、パトリツィアを含め誰にも起こさないよう――頼んだ上でだ。


 一方のタケル達は、緊張からか落ち着かない。

 昼食時にシュランメルトの予定を聞き、自分達も眠ろうとするが、どうにも寝付けなかったのである。


「うーん……。寝たほうがいいのに、全然眠れない」

「目をつぶって、ひたすら無心になるの。タケル」

「私は無心どころか、ずっと武者震いが止まらないぞ」


 タケル達は無意識に、緊張感を抱いていた。

 無理もない。今夜、いかなる結末であれ、全てに終止符が打たれるのだから。


「ねぇ、タケル……。私達、どうなるのかな?」

「うーん、どうなるんだろうな……」


 守護神の御子みことされる、シュランメルトでも分からなかった事だ。ただの人間であるタケル達には、想像の余地すら無い。


「ま、なるようになるさ。そうだろー、タケル?」

「そうだね、リンカ……ッ!?」


 次の瞬間、リンカがタケルの背中に、豊かな胸を押し付けていた。


「にひひ」

「えっ、ちょ……!?」

「私もくっついて……いいかな?」


 リリアもまた、タケルに抱きつく。

 しばしドギマギするタケルを見て反応を楽しんでいたリンカだが、やがて表情が真剣になった。


「ここで失敗したら、こんな事も二度と出来なくなるんだ。そんなの嫌だね」

「私も」

「ぼ……僕も」




 三人は密着したまま、最後の昼寝を取ったのであった。

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