第九章七節 準備

 タケル達の協力の約束を取り付けたシュランメルトは、自室で簡単な書類をしたためていた。


「作戦行動の概要をまとめておく必要がある。都合二枚、同じものを用意しようか」


 凄まじい勢いでペンを走らせた結果、シュランメルトはわずか20分で作戦概要を書き終えた。


     *


「グロスレーベ。頼みがある」


 玉座の間に向かったシュランメルトは、タケル達から回収した手紙を見せた。


「まずはこれを読んでくれ」

「ふむ……。ヘルムフリートを見逃せなくなりましたな」

「それだけじゃない。リラの奪還が急務となった。しかし期日は手紙にある通り、3日後の23時。あまり多くの時間が無い。だがそれを承知で言わせてもらおう。動かせる限りの軍を動員してもらいたい」

「当然ですな。リラ殿は我が国屈指の天才導師、そして御子みこ様の師匠でいらっしゃる。我ら王家の誇りにかけて、救出せねばなりません」

「助かるぞ、グロスレーベ。さて、おれは神殿へ向かおう」

「何をなさるおつもりで?」

「お前の事は信頼している……が、用心に用心を重ねるのは大事だ。神殿騎士団と話をつける」

「かしこまりました。では、少々お待ちを」


 グロスレーベによって、轟音と共に地下へと続く階段が現れた。


「感謝する。後は任せたぞ。そうだ、これを渡しておく。部隊指揮官に見せてくれ」

「かしこまりました」


 最後に作戦概要を記した手紙を渡して、シュランメルトは地下へと下って行ったのであった。


     *


 長い長い階段と通路を通り抜けた先には、巨大な地下神殿があった。

 と、シュランメルトが呼びかける。


「いるか?」

「はっ、御子みこ様。神殿騎士団一同、ここに揃っております」


 現れたのは、真紅、天色、鮮緑、山吹、今紫の服に身を包んだ五人組――神殿騎士団である。


「頼みたい事がある」


 真剣な様子で切り出したシュランメルトを見て、ガレスベルが様子を察する。


御子みこ様。命令で構いません」

「ならば、命じよう。3日後の23時にヘルムフリートの元へ向かうタケル、リリア、リンカを、死力を尽くして援護してくれ。なお、王国軍の大部隊も同行する」


 シュランメルトの命令を聞いた神殿騎士団の一同は、一斉に礼を取る。

 と、ガレスベルがさらに進言した。


「ヘルムフリートの元へ向かわれるのでしたら、ノートレイアが情報を握っております」

「ノートレイアが?」

「フヒヒ。あたしは陛下の命令で、別個に任務を受けていたんですよ。もっとも、あまり喜べる結果ではありませんでしたがね……」

「失敗、したのか?」

「ヘルムフリートの確保には」

「詳しい話を聞かせてくれ。お前が任務に手を抜くとは思えん、相応の要因があったはずだ」




 ノートレイアは一礼すると、何が起きたかを話し始めた。

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