第九章五節 合流

 新型機に搭乗して輸送していたシュランメルト達は、ベルリール城の城門前へと降り立った。


おれだ、シュランメルトだ。開けてくれ」

わたくしもおりますわよ」


 いきなり城内に入ろうにも、見慣れないこの機体では怪しまれて当然だ。

 しかしシュランメルトとシャインハイルは、先んじて胸部装甲を開き、門番の許可を得ようとしたのである。


「なるほど……。見慣れぬ機体だと思いましたが、御子みこ様とシャインハイル姫殿下でいらっしゃいましたか。ところで、そちらの銅色の機体は?」

おれの連れだ。リラ工房に所属するグスタフ・ヴィッセ・アイゼンヘルツ……と言えば分かるだろう」

「かしこまりました。どうぞ、お通り下さいませ」


 門番はあっさり許可すると、3台を城内へ迎え入れた。

 王族はもとより、守護神の御子みことあっては、その威光は絶大なものである。


「感謝する。行くぞ」


 かくしてシュランメルト達は、無事に移送を完了したのであった。


     *


 シュランメルト達が格納庫に魔導騎士ベルムバンツェ3台を預け入れてから数分後。


「お姉様、いらしたのですね」

「あら、フィーレ。シュランメルト達が貴女を探していたようですけれど、急ぎの用みたいでしたのでわたくしが代わりに行きましたわ」

「どのような用事でしたの?」

「新型機の移送ですわ。リラ工房に運び込まれた、3台の機体ですわね」

「まあ……。聞いていれば、駆けつけましたのに……。ともあれ、お姉様。ありがとうございます」

「構いませんわ、フィーレ。それに……」

「それに?」


 シャインハイルが顔を赤らめ、両頬を押さえる。


「……ううん、何でもありませんわ。何でも、ね」

「そ、そうなのですか……」

「話は済んだか?」


 近くで一連のやり取りを見ていたシュランメルトが、シャインハイルとフィーレに呼びかける。


「は、はい。済みましたわ」

「どうしたのでしょうか? シュランメルト」

「タケル達に打ち明ける。先ほどグスタフと共に、見過ごせないものを見たのでな。特にフィーレ、お前は見ておくべきかもしれない」

「これ。ししょーの屋敷の玄関に、挟まってたの」


 グスタフが、フィーレに手紙を手渡す。


わたくしにも見せていただけるかしら……って、これは」

「許せませんわね……。まさかわたくしが弟子である事を知らないのでしょうか、ヘルムフリート?」


 フィーレは手紙を、くしゃくしゃになるのも構わず強く握っていた。

 その様子を見たシュランメルトが、続ける。


「意思は決まったようだな。さて、そろそろタケル達のいる場所まで案内を頼む。移動していないとも限らないからな」

「かしこまりましたわ。とはいえ、移動はしていませんが」




 シュランメルトはフィーレについていくようにして、タケル達の元へと向かったのであった。

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