第九章 決戦

第九章一節 気付

「うーん……」


 その頃、ベルリール城にいるグスタフは、何やら悩んでいた。


「どうしたのですか? グスタフ」

「フィーレ姫……。そろそろ、ししょーに会いたいなって……」

「むーっ、わたくしでは不満なのでしょうか?」

「そうじゃないけど……。いくら必要な事だと分かってても、ししょーとずっと離れてるのは……」


 みるみるうちに落ち込むグスタフ。

 と、そこにシュランメルトが通りがかった。


「ならば、おれと一緒に工房の様子を見に行くか?」

「お兄さん!?」

「シュランメルト!?」


 驚くフィーレとグスタフを見て、シュランメルトが補足する。


「しばらくここにいるからな、帰れていない。タケル達にはベルリール城ここにとどまってもらうが、かといって何も報告しないのもあれだ。手紙も時間がかかるし、なによりおれ達に向けて荷物か何かが来ていたら受け取る必要もあるしな。それに何かあっても、おれなら切り抜けられる。どうだ、グスタフ?」

「うん、行こう! 僕もFlammbergフランベルクで追いかけるから!」

「決まりだな。フィーレはどうする?」

「わたくしは……お姉様と用事がありますので、見送らせていただきますわ。一緒に行きたいのは、やまやまなのですけど……」

「承知した。リラに会ったら話しておく」

「わたくしも、お姉様やお父様に伝えておきますわ」


 かくしてシュランメルトとグスタフは、リラ工房へ一時的に戻る事になった。


     *


 機体を工房の格納庫近くに降ろしたシュランメルトとグスタフは、屋敷の玄関前に向かう。


「待ってて」


 グスタフが玄関に設置された水晶球の前に立つ。

 これでリラのいる部屋に設置された球体が赤く光り、来訪者の正体を知らせる――はずだった。


「あれ? おかしいな……。ししょー?」


 グスタフが呼びかけるも、応答は無い。


「何かあったのかもしれん……まて、これは何だ? ……手紙か」


 シュランメルトが、玄関扉に挟まった状態で床に落ちていた手紙を見つけ、開封する。グスタフも、隣に来て黙読した。

 文面は以下の通りであった。


---


 リラ工房の関係者に次ぐ


 リラ・ヴィスト・シュヴァルベは預かった。

 返してほしくば、異世界から来た三人の少年少女を、指定する場所と日時に連れて来い。


場所:ガルスト

日時:3日後の23時


 ヘルムフリート・ベルリ・グライス


---


「えぇっ、ししょー!? 連れ去られたなんて……!」


 驚愕するグスタフをよそに、シュランメルトは手紙を握りつぶしながら激怒していた。




「ヘルムフリート・ベルリ・グライス……必ず貴様を打ち倒し、リラを取り戻す! 首を洗って待っているが良い!」

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