第八章六節 報告
「陛下。お耳に入れたい情報がございます」
ベルリール城に戻ったノートレイアは、グロスレーベを呼び止めていた。
「何だ、ノートレイア?」
「フヒヒッ。少々信じがたいかもしれないのですがね……」
ノートレイアは、城とリラ工房、そしてタケル達を襲撃した存在が全て、グライス家の手の者である事を告げる。
「お疑いでしたら、回収してきた残骸をご覧くださいよ。山ほど外に積んでありますからさ」
「いくら神殿騎士団でも、城の敷地に何をして良い訳ではないのだがな……。とはいえ、疑いはせん。一度は改めるが、まさかお前が嘘をつくわけも無いだろうからな」
「まっことありがたきお言葉で。では、本題に入りましょう」
ノートレイアは蛇のような目つきをしながら、笑みを浮かべて話した。
「確信を抱くきっかけとなったのは、
「ふむ、予想していた通りか」
「へ?」
グロスレーベの意外な返答に、ノートレイアは呆けた顔で固まる。
「あ、あの、陛下?」
「私がグライス家の動向を把握していないとでも思ったか?
「さ、左様で……。しかし陛下、では何故、これまで静観されていたのでしょうか?」
「簡単な話だ。これまでは泳がせておいた。証拠に乏しかったのだからな。いかに権力においては私が上といえど、相手は侯爵。規模としては大きな貴族だ。ゆえに迂闊に手出しすれば、責任問題になりかねんからな」
グロスレーベは淡々と、目的を告げる。
「だが、ベルリール城に刃を向けたのであれば話は別だ。“国家反逆罪”として、強制捜査の口実を取り付けられる。加えて大功のあるリラ工房にまで危害を加えたとなれば、それはより盤石となる。今がこの機会だ。お前の報告を以て、引き金は引かれた」
機を見たグロスレーベは、次なる一手を打つ。
「強制捜査を拒んだ場合に備え、ゲルト3等将官(少将)に合わせて2個大隊規模の部隊(
「ヒヒッ、かしこまりましたよ陛下」
命令を聞き取ったノートレイアは、音も立てずに消える。
一人になったグロスレーベは、窓越しの外の景色を見ながら呟いた。
「愛国心は見事。しかし、その行いは人道に反している。加えて国の在り方、いや守護神様の教えである『力は護る為にあり』にも逆らっている。いかなものを見出すとて、ベルグリーズ王国の王としてそれを許す訳にはいかないのだよ。ヘルムフリート」
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