第八章五節 新型

 翌朝。

 屋敷の防衛魔術の一部を整え、自室で眠っていたリラは、台車が転がる音で目が覚めた。


「ん……。あら、もうこんな時間でしたか。私にしては、遅い目覚めですね。それにしても、この音は……」


 リラには心当たりがあった。すぐに身支度を整え。屋敷の外へ出る。

 そこには、6台の魔導騎士ベルムバンツェ――うち自立歩行している3台のBladブラド、残る3台は台車に横たわっていた――が立っていた。


 来訪してきた魔導騎士ベルムバンツェの1台が、胸部装甲を開く。

 男が降り、リラの前に向かった。


「リラ様、お待たせしました。依頼されていた3台の改良型魔導騎士ベルムバンツェ、確かに届けさせていただきます」


 降りた男の名は、エルセン建造工房の主――ウルリヒ・シュタッテ・エルセンであった。


「ありがとうございます。機体は格納庫に移送願います」

「かしこまりました」


 ウルリヒが腕を振って合図すると、2台のBladブラドが台車の上の魔導騎士ベルムバンツェを運び出す。

 わずか数分で、3台の魔導騎士ベルムバンツェが工房に移送された。


「全て完了しました。これからもごひいきに願います」

「ありがとうございます。こちらこそ、今後ともよろしくお願いしますね」

「ええ。ところで……随分と、似せましたね?」

「はい。この子達もAsrionアズリオンに……弟子の魔導騎士ベルムバンツェに強く影響を受けて設計しましたので」

「あー、そうでしたね。あの試作機と似てると思ったんですよ」

「ふふっ。この子達は、以前造った機体の問題点などをフィードバックしたのです」


 リラがクスクスと笑う。


「私が完成させたいと願っている試作機、Bergionベルギオン。今、納入してもらった3台は、その派生形というものです」

「なるほど。ともあれ、Großerグローサー・ Tapfererタプファラー・ RitterリッターHellerヘラー・ Blinkenブリンケン・ SternシュテルンEwigエイヴィヒ・ Brennenブレンネン・ Flammeフランメ。金銀銅と派手な色合いですが、とにかくしっかりお納めしましたとも」


 これらはいずれも、納品された3台の名前だ。

 ちなみに、Großerグローサー・ Tapfererタプファラー・ Ritterリッターが銀色、Hellerヘラー・ Blinkenブリンケン・ Sternシュテルンが金色、Ewigエイヴィヒ・ Brennenブレンネン・ Flammeフランメが銅色である。


「では、失礼します」


 最後に一礼し、ウルリヒ達が去っていく。

 それを見送ったリラは、格納庫へ向かった。


「さて……当面の目的は達成しました。この後はどうしましょうかね。シュランメルト達と合流するも良し、あるいは……」




 今後の行動を決めかねたリラは、納品された魔導騎士ベルムバンツェを眺めていた。

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