第七章四節 義理

「おっそいなー……」


 その頃。

 パトリツィアはベルリール城内で、いつまで経っても帰ってこないシュランメルトを心配していた。


「ボクを置いてAsrionアズリオンに乗ってくなんて、はくじょーもの。ま、いーんだけどね。シュランメルトの元になら、すぐ行けるから」


 ふてくされながら、窓の外を見る。

 と、Asrionアズリオンがベルリール城から離れていく姿が視界に映った。


「な、何やってんのシュランメルト!?」


 次の瞬間、パトリツィアの姿がベルリール城から消えた……。


     *


「ゲルハルト!」

「パトリツィアか!?」


 パトリツィアは一瞬で、Asrionアズリオンの操縦席に移動していた。


「何やってんのさ、ゲルハルト!? 勝手に単独行動なんて!」


 シュランメルトを叱りつけるパトリツィアだが、シュランメルトは一瞬驚いたのち、しめたとばかりに告げた。


「丁度良かった、大至急リラに連絡しろ! 『リラ工房に危険が迫っている可能性がある』とな!」

「えぇっ!?」

「早く!」

「わ、分かった!」


 シュランメルトの必死の形相に、パトリツィアは気圧される。

 だが、すぐに頷き、ベルリール城にこれまた一瞬で戻っていった。


(……行ったか)


 それを確かめたシュランメルトは、拡声機を起動して呼びかける。


「ノートレイア、いるな!?」


     *


「リラ!」


 ベルリール城に戻るや否やリラを見つけたパトリツィアは、シュランメルトに言われた事をすぐさま伝えた。


「本当なのですか、それは?」

「分からない。けど、ゲルハルト……シュランメルトが言ってたんだ」

「なるほど……。念の為、私も向かいます。タケル様達をお願いしますね」


 リラはすぐさま、格納庫にあるOrakelオラケルを起動しに向かった。


---


 その様子を、タケルが見ていた。


「リラ工房が……? まさか、僕たちのせいで?」


 疑問に囚われながら、タケルはリラの後を追って格納庫に向かう。


「駄目だよ」


 それを止める者がいた。

 新緑の神殿騎士団の制服を着た、小柄な少女――アサギだ。


御子みこ様から言われたの。わたし達は、あなた達三人を守れって。外は危ないよ? さっきまで襲ってた敵が、まだいるかもしれないんだよ?」

「けど、だからって!」


 タケルは自分達の恩人――そして自分達が住んでいた屋敷――が危機に晒されていると聞いて、おとなしくしてはいられなかった。


「簡単に引き下がるつもりは無いみたいね。けど、気持ちは分かるよ。わたしは容認できないし、あなたを止めるけど」

「くっ……!」


 歯噛みするタケル。


「待って」




 そこに、リリアとリンカが現れた。

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