第七章五節 急行

 その頃シュランメルトは、Asrionアズリオンの走行で出せる最高速度で、リラ工房まで急行していた。


御子みこ様、参りました」

「来たか。荒っぽい人使いだが、頼むぞ」

「へい、それがあたし達神殿騎士団員の使命ですからね。ところで、御子みこ様。運びます?」

「頼むぞ。パトリツィアのいない今、Asrionアズリオンは地上走行しか出来んからな」


 ノートレイアのAsrifelアズリフェル・_Violettiaヴィオレティアが、Asrionアズリオンを背後から抱えてブースターを吹かす。

 圧倒的な速度で飛行しながら、リラ工房まで一直線に向かった。


     *


「着いたか……ッ!」


 当たってほしくない予想が的中していた事で、シュランメルトは歯噛みした。

 40台を優に超える雑多な種類の魔導騎士ベルムバンツェが、リラ工房に肉薄していたのだ。


「かなりまずいですねぇ」

「まずいどころなものか、陥落寸前だ!」


 リラが事前にこれでもかと張り巡らせた対魔導騎士ベルムバンツェ用の防衛機構で、侵攻をぎりぎり食い止めていた。

 しかしこれ以上放置しては、今にも屋敷が破壊される勢いである。


「まだ屋敷が無事な内に連中を排除する! ノートレイア、降ろせ!」

「かしこまりましたよ」


 Asrionアズリオンが先に着地し、Asrifelアズリフェル・_Violettiaヴィオレティアが遅れて着地する。

 2台の魔導騎士ベルムバンツェの乱入に、侵入者達は機体の首を向けた。それを見たシュランメルトは、拡声機を起動して自身に注目させる。


『そこまでだ。貴様らの所業……目に余る』




 つかと小盾を取り出し、すぐさま結晶を伸ばして大剣と大盾を形成すると、シュランメルトは敵魔導騎士ベルムバンツェの集団に向けて突っ込んで行ったのであった。

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