第七章二節 無貌

御子みこ様、ご無事でしたか!?」

「ガレスベル! タケル達三人を集めて護衛しろ! 急げ!」

「かしこまりました!」


 いつになく急いでいる様子のシュランメルトを見て、ガレスベルは即座に、何が起きたかを察した。

 女性用の浴場から向かってきたリリアとリンカを呼び寄せると、鍵のある一室に入れさせ、アサギとオティーリエをも中に入れてから鍵を掛けさせる。


「ひとまず、三名の安全は確保しました」

「承知した。だが、まだ分からん。以前のように、不可視の魔導騎士ベルムバンツェを繰り出してくるかもしれん。おまけに今は夜、隠密行動にはうってつけの時間だ。こちらも魔導騎士ベルムバンツェに乗って備えるぞ」


 話しながら、シュランメルトは正面玄関に、ガレスベルとサリールは神殿騎士団の拠点に向かう。途中で分かれ、目的の場所まで全力疾走で向かった。


     *


Asrifelアズリフェルが合流するまでは時間がかかる……。ここはおれが何とかするしかないか。来いッ、アズリオンッ!」


 屋外に出た瞬間、シュランメルトはAsrionアズリオンを召喚する。

 屋内の防御は王室親衛隊や神殿騎士団に任せ、自身は外の防御に向かった。


『シュランメルト!』

「リラか!?」


 と、魔導騎士ベルムバンツェの足音が響く。Orakelオラケルだ。


「はい、私も加勢します。手薄な場所に向かいましょう」

「頼むぞ。おれは正面の橋の前に陣取る」

「分かりました」


 Orakelオラケルが移動したのを見届けたシュランメルトは、橋の前に陣取る。

 つかと小盾を取り出し、漆黒の結晶を纏わせて大剣と大盾に変えた。


 そこまで準備を整えてから、シュランメルトは敢えて拡声機を起動する。


『さあ、おれはここにいるぞ! 挑む者はいないのか!』


 直後、城壁の内側が瓦礫がれきを吐き出す。遅れて橋――魔導騎士ベルムバンツェ3台が真横に並んで何とか通れる程度の幅――からも、瓦礫がれきが吐き出された。


(やはり姿は見えないか……。しかし魔導騎士ベルムバンツェの重量だ、石造りの、いやAdimesアディメス結晶製の物であっても、踏みつけたりすればただでは済まない。それに足音まではごまかせないはずだ。ならば――)


 シュランメルトは目を閉じ、周囲の音に集中する。


(右側、距離400mからどんどん近づいている――今だ!)


 足音がギリギリまで近づいたタイミングで、右に大剣を振り抜く。

 大剣は手ごたえを残しつつ、襲い来る魔導騎士ベルムバンツェを両断した。


(まずは1台……。しかし数が未知数だ。音で探れない事はないが、不意打ちには注意せねばな)




 シュランメルトは集中力、そしてこれまでにない警戒心を持ちながら、見えざる敵との戦闘を開始した。

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