第六章十七節 報告

 玉座の間の裏にある、グロスレーベの執務室にて。


「済まない、遅れた」


 シュランメルトとノートレイアは一番最後に入室した。

 部屋には二人の他に、グロスレーベ、シャインハイル、リラが既に入室していた。


「ヒヒッ。揃ってますねぇ」

「何だ、これは?」


 シュランメルトは戸惑っている様子を、ノートレイアはこの集まりを承知している様子を見せる。


御子みこ様。あたしが集めたんでさあ」

「ノートレイア。どういう集まりだ?」

「グライス家の調査が終わったんで、報告に来たんですよ。つい数時間前、完遂したんです」


 ノートレイアはいつもの調子で、シュランメルトに話しかける。


「承知した。頼むとしよう」

「元よりそのつもりですとも。そんじゃ、始めますかね」


 そして懐から、書類をテーブルの上に置いた。

 グロスレーベにシャインハイルは嫌な顔一つせず、手に取る。


「今渡したのは報告書。資料は置きっぱなしにさせてもらいますよ、たった1部しか盗めなかったのでね。まったく、予備でも何でも複製してほしいもんです」


 ノートレイアは愚痴りながら、報告を始める。


「まずさっきの透明な魔導騎士ベルムバンツェ。グライス家の研究の産物らしいんですがね。ありゃ、ハドムス帝国製の機体を改造して特殊な魔術を施した、隠密特化のシロモノですわ」

「魔術?」

「ええ。グライス家あいつらの独自に編み出した魔術です。原理や様式はまだ解明出来ていませんがね、機体表面を風景に同化させて、肉眼を誤魔化すんですよ」


 シュランメルトの疑問に答えつつ、ノートレイアは報告を続ける。


「次に、この対抗策です。魔導騎士ベルムバンツェに掛かった魔術を打ち消すものらしいんですがね。あたしのAsrifelアズリフェルが放り投げた球体に、そのまま施されていたんでさあ。どうやら使い捨て式のようで、しばらくして見たら解除されていたんですわ。とはいえ、こっちは二つ盗みだしたんで、まだ1つあります。Asrifelアズリフェルと共に、城の格納庫に預け入れたままですがね。とはいえまだ透明化させ続けてるんで、はた目には空の駐機場があるように見えるんですが」

「ふむ、おおかた分かってきたな。既にヘルムフリートから報告を受けていたが、奴は今の内容を隠しおった。それにしても、どこか慌てた様子だったのは、お前の所業ゆえだったか」

「ご明察でさあ、陛下。さて、ここまではほんの序の口ですかね」


 ノートレイアが一度言葉を止め、間を作る。


「序の口……?」

「ええ、リラ殿。本当の目的は、異世界からやって来たって三人組の事なんですよ。ま、“ここアンデゼルデに連れてこられた理由”ってもんです」


 一呼吸置いてから、ノートレイアがさらにもう1枚の資料を取り出す。

 手にしたまま、話し始めた。


「――何だと!?」




 説明を聞き終えたシュランメルトは、信じられない、そして許しがたいものを聞いた気分だった――。

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