第六章十八節 憤激
ノートレイアの報告を聞き終えたシュランメルトは、早々に入浴を済ませてベッドに横たわった。
「まさかグライス家が、あのような理由でタケル達を……」
天井を仰ぎながら、シュランメルトは一人ごちる。
「しかもタケル達だけではない。ノートレイアの報告によれば、
シュランメルトはベッドのシーツをきつく握りしめながら、怒りをあらわにする。
「ベルグリーズ王国の民でなければどうしようと構わないとでもいうのか? ふざけるな! 連れ去られた者には連れ去られた者なりの事情があり、そして生活があったはずだ! それを一方的な都合で踏みにじる……いくら
『その通りです、ゲルハルト。私も許す事は出来ません』
「
シュランメルトの憤りを聞いて、自らも本心を打ち明ける
しかし、『ですが』と前置きして、残念そうに続けた。
『ベルグリーズ王国の守護神である私では、直接止める事は出来ません。出来るのは、夢などで警告を発するのみ。手は尽くしていますが、これだけで止まるとは思っていません」
「承知した。だからこそ、半神半人の
『ええ。グライス家を止められるのは、貴方……いえ、貴方達だけです』
「
『その通りです。グライス家との因縁を断ち切りたいと最も強く願っている者達がいます』
「タケル達か……」
シュランメルトは横たえた体を起こし、思案する。
「既に彼らは巻き込まれている。今さら“被害を及ぼすな”とは言わん。だが、作戦が必要だ。証拠はノートレイアが集めているとはいえ、奴らは
『それは貴方の良心が許さないでしょうね。いかにこれだけの事をしたグライス家といえど、ベルグリーズ王国の民ではあるのですから』
「別の方法を探す。だがその前に、頭を冷やしてくる」
『行ってらっしゃい、ゲルハルト』
感情を整理すべく、そして自身の望む結末への戦略を組み立てるべく、シュランメルトは外に出たのであった。
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