第六章十六節 撤退

『そろそろ入ったか』

『あたし達も行きましょうかね』


 シュランメルトとノートレイアは、シャインハイル達がベルリール城の敷地に入ったのを見て撤退する。

 すると二人と入れ替わるように、王室親衛隊の魔導騎士ベルムバンツェが向かってきていた。シュランメルトとノートレイアはそれぞれ、自らの機体を飛翔させる。


御子みこ様、いったい何が……?』


 親衛隊機の1台が、シュランメルトを呼び止める。

 シュランメルトはノートレイアを行かせてから、返答した。


「透明化の能力を有する機体と交戦した。王族並びに最優先警護対象が襲撃を受けたからな。証拠となる残骸もあるだろう」

「かしこまりました」


 親衛隊員の応答を聞いたシュランメルトは、今度こそベルリール城に向かった。


      *


Asrielアスリール!」


 敷地内に着陸し、Asrionアズリオンを元の場所へ戻したシュランメルトは、Asrielアスリールに向けて呼びかける。


『はい、何でしょうかゲルハルト』

「何でしょうかだと? タケル達を危険な目に遭わせたのは何故だ!」


 そう。シュランメルトはAsrielアスリールの説得を受けたからこそ、タケル達を街に行かせたのだ。

 しかし現実は、タケル達どころかリラ、グスタフ、フィーレ、そしてシャインハイルまでも巻き込んだ襲撃を受けたのだ。元々反対していたシュランメルトを説得させておいてこの体たらくでは、怒るのも無理はない。


 だがAsrielアスリールは、あくまでも穏やかに答えた。


『簡単な事です。彼らには一度、気を引き締めてもらいたかったのですよ』

「だから敢えて、街へ出かける事に賛成したと?」

『ええ。それに、これは彼らの目標にもなります』

「目標?」

『はい。“全てを終えて、ゆっくり街を楽しむ”という目標ですよ』


 そこまで言われて、シュランメルトは察した。


「そのために、一度賛成したのか。だが、それでもだAsrielアスリール。タケル達はもうおれの友人だ。いくら母さんだからって、そう簡単には許せないな」

『それについては申し訳ありません。貴方に黙っていたのは、確かに悪い事でしたね』


 Asrielアスリールが謝意を示すと、シュランメルトは話を続けた。


「ともあれ、母さんの考えは把握した。過ぎた事を言っても何も始まらない。ノートレイアから話を聞くのが先だ」




 シュランメルトは城内に入り、しばらく経ってノートレイアと合流した。

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