第六章十節 支度

 翌日。

 一同は起床して朝食を取った後、出かける準備をしていた。


「ベルグレイア……どんな街並みなんだろう」

「うん。気になってほとんど眠れなかったよ」

「楽しみー!」


 三人は既に着替えを済ませ、玄関に向かっている。

 玄関前でリラ達と合流し、出かける予定だ。


     *


 その頃。

 シュランメルトは、神殿騎士団に話を付けていた。


「……というわけだ。既にAsrielアスリールから話されているだろうが、よろしく頼む」

「かしこまりました、御子みこ様。我ら“神殿騎士団”が責任を持って、お守り致します」


 真紅の礼服らしき衣服を纏った長身の男が、シュランメルトにうやうやしく頭を下げた。


「さて、話はこれで終わりだ。ガレスベルのみならず、サリール、アサギ、そしてオティーリエも頼むぞ」

「「かしこまりました」」


 この場にいる全神殿騎士団員の返事を聞き届けたシュランメルトは、きびすを返してタケル達の元に向かった。


     *


「シュランメルトさん、何かあったのかな?」


 タケルの疑問通り、シュランメルトは集合に遅れていた。

 明確な時間指定を行ったわけではないが、“シュランメルトだけがいない状況”になっていたのだ。無理もない。


「ところで、タケル、リンカ」

「何?」

「なにー?」


 と、リリアが新たな疑問を提示する。


「気になったんだけどさ……。タケル、シャインハイル姫に案内されてる最中、パトリツィアさんと話してたよね」

「う、うん」


 まさかおっぱいの事を言われるのだろうかと、タケルは身構える。


「その時に聞こえたんだけど……。“ゲルハルト”って、誰?」


 が、帰ってきたのは意外なものであった。


「ゲルハルト、か……。確かにそんなような名前が聞こえた気がしたけど、誰なんだろう。少なくとも、僕達の知り合いにはいないし……」

おれを呼んだか?」

「「シュランメルトさん!?」」


 タケルとリリアが、揃って驚愕する。


「むっ。ゲルハルトとはおれの名前の事だが、呼んではいないのか?」

「あ、はい。ちょっと、話をしてただけで……」

「そうか。ともあれ、準備は出来たようだな。リラ、行けるか?」

「はい。いつでも」


 シュランメルトはすぐに、次の言葉を言う。


「では、行くぞ!」




 その言葉と同時に、城門が開け放たれる。

 かくして、タケル達の観光が始まったのであった。

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