第六章十一節 観光

 一同が城門から出ると、ベルグレイアの街並みが迎えた。


「わぁ……」


 息を呑むリリア。タケルとリンカも、同様の心境だった。

 王城は元より、王城近くの建築物にはどれも、外壁に繊細な絵画風の細工が施されていて、幻想的であった。


 しばし呆ける三人の近くに、フィーレがやって来る。


「せっかくの観光です。ベルグレイア自慢の服やお土産などを買ってみるのはいかがでしょう? もちろん、お代はわたくしが出しますわ」

「えっ、いいのフィーレちゃん!?」

「もちろんですわ。タケル様にリリア様も、同様に致します」


 フィーレは笑顔で、タケル達に語り掛けた。


「では、皆様のペースでまいりましょうか」


 かくして、一同は最初の一歩を踏み出した。


     *


 最初に立ち寄ったのは、やはり服屋である。

 リリアとリンカは、どの服を買おうか迷いに迷っていた。


「うーん、迷っちゃうな……」

「私はこれかなー! 姫様、お願い!」

「かしこまりましたわ!」


 観光のついでとばかりに、めいめいに買い物を楽しむ。


「タケル、欲しいものはあるか?」

「そうですね……」


 待っている間に、シュランメルトとタケルは今後の相談をする。


「この辺りで有名なおやつのみs」

「「きゃああああああぁぁぁぁぁっ!」」


 と、突如としてリリアとリンカの悲鳴が響いた。


「リリア! リンカ!」

「行くぞタケル、離れるな!」


 シュランメルトとタケルは、服屋に急行した。


     *


「う、うぅ……」

「フィーレ!」


 最初に見たのは、ボロボロになったフィーレだった。


「無事か!?」

「わ、わたくしは……。ですが、不覚を取りましたわ……。お二人とも、どこかに連れ去られて……」


 フィーレは何とか、リリアとリンカに関する顛末を見ていた。

 何とか、リリアとリンカが連れ去られた方向を指し示す。


「フィーレ、無事でしょうか!?」

「お姉、様……。それに、リラ師匠にグスタフも……」

「ここは私達に任せて、シュランメルトはお二人を!」

「承知した! タケル、くれぐれもリラのそばにいろ!」


 シュランメルトはフィーレの指し示した方角に従い、走りだした。


     *


「そこか……むっ」


 シュランメルトの視界にいたのは、リリアとリンカを拉致した男二人――そして、ガレスベルとサリールであった。


「ぐわぁっ!?」


 ガレスベルとサリールは同時に、男達を倒す。


「無事でしょうか、御子みこ様」

「ああ、おれは良い。だが、リリアとリンカは……いや、大丈夫そうだな」


 捕まっていたリリアとリンカは、ややぐったりしているが命に別条はなかった。


「だが、これだけで済むとは思えない」

「同感です。周囲に気配が多数あります」

「“変わり身”としてはあまり良い気分ではありませんが、シュランメルト様、それにお二方のお命が最優先。私も戦わせていただきます」




 シュランメルト、ガレスベル、サリールは、リリアとリンカを内側に囲む円陣を組んで構えていた。

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