第六章五節 閑話

 シャインハイルに案内されている最中、タケルは半ば呆けていた。


(シャインハイル姫……。大きい……)

「なにボーッとシてんのかなー?」

「うわっ!?」


 そんなタケルにちょっかいをかけたのは、パトリツィアであった。


「そ、その……」

「言わなくていーよ」

「え?」


 困惑するタケルに、パトリツィアは小声でそっと話しかける。


「キミがシャインハイルのおっぱいをジッと見てたの、分かってるから」

「え……むぐっ!?」


 思わず叫び声を上げそうになるタケルの口を、パトリツィアが押さえる。


「静かにしなよ」

「ん。んん、んんんん!」

「タケル、どうしたの?」

「何でも無いよー。ちょっとボーッとして、妄想でもしてたみたい」


 異変に気づいたリリアを、何とか言いくるめて無視させる。

 意識がタケルから離れたのを確かめたパトリツィアは、更に小声で続けた。


「あんな大きなおっぱいを見るのは男として仕方ないんだけどさー、タケル。せめて見るなら、ボクかリンカのにしな。シャインハイルはゲルハルト……いや、シュランメルトの婚約者だから、下手したら強めにぶっ飛ばされるよ」

「ぶ、ぶっ飛ばされ……って、え?」

「どしたの?」

「パ、パトリツィアさんのはいいって……」

「うん。いーのいーの、ボクのは見るだけならいくらでも。まっ、リリアやリンカが嫉妬しなければ、だけどね」

「うーん、それは……」


 悩むタケルをよそに、パトリツィアはしれっとシュランメルトの隣まで戻った。

 と、シュランメルトから疑問を口にされる。


「何を話してたんだ?」

「特にないかな。敢えて言うなら……タケルをからかってみた♪」

「からかった? 奴が本気にするとは思えんが……」


 シュランメルトは、リリアとリンカにわずかに視線を飛ばしながら返した。


「知ってる。それも承知した上で言ってるんだしー」

「……」

「なになに、シュランメルトー。ちょっと嫉妬したのー?」

「他人をからかうという思考が理解出来んだけだ」

「ふーん。シャインハイルをからかった事も無いんだー」

「記憶の限りでは、間違いなく無いな」

「意外と冗談とか苦手だねー?」

おれ道化どうける事を求めないのでな」


 シュランメルトは突き放すように、パトリツィアに告げる。


「そー。けど、そんなシュランメルトも好きだよー、ボクは」

「それは光栄だ」


 が、パトリツィアは不服の表情をせず、あっさり切り上げた。


「皆様、そろそろお父様……いえ、陛下のいらっしゃる“玉座の間”ですわ」


 シャインハイルが立ち止まり、一同に促す。




 そこには――全高15m程はあろう、人間が通るにしてはあまりにも巨大な扉が、そびえ立っていた。

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