第五章四節 模擬

『聞こえるか、リラ? 戻ってきたぞ』


 Bladブラドに搭乗したシュランメルトは、すぐさまリラに呼びかける。


『その様子では、問題無く乗りこなせるようですね』

『ああ。想像通りの動かし方だったからな、カンはすぐに取り戻した』


 それを証明するかのように、Bladブラドが屈伸運動をこなす。

 10数年ぶりに乗ったとは思えないほど、滑らかな動きだ。


『ふふっ。タケル様達への訓練は、問題無くこなせるでしょう』

『胸くらい貸すさ。大切な客人だからな』


 シュランメルトが、Orakelオラケルの隣に立つ。

 タケル達の射撃訓練が終わるまで、適宜助言を挟みつつも、基本的には静観していたのであった。


     *


『そこまで。皆様、場所を移しましょう。フィーレ姫、グスタフ、Bladブラドに乗り換えてください』


 号令をかけ、射撃訓練を終えるリラ。

 フィーレ姫とグスタフがいったん格納庫に戻ったのを確かめると、自身はタケル達を先導し、他の機体を案内する。


 機体を歩かせる事一分。

 案内した先は、広大な荒野であった。


『ここであれば、存分に戦えます。では、タケル様、リリア様、リンカ様。横一列に、距離を空けて並んでください。そしてそのまま、しばしお待ちを』


 それに従い、タケル達が並ぶ。

 シュランメルトも、正対するように並んだ。


『後はフィーレとグスタフを待つだけか』


 しばらくして、フィーレとグスタフの搭乗じたBladブラドが駆けつける。

 と、2台とも巨大な台車を押していた。


『お待たせしましたわ』

『後は全員がこれを持てば準備完了だよ!』


 台車には、訓練用の剣が合計6本、そして盾がやはり合計6枚載せられていた。


『まずはおれが貰おう。見ていろ』


 シュランメルトが、剣と盾を受け取る。

 それからフィーレの乗ったBladブラドがタケル達の元まで台車を押し、それぞれ一セットずつ受け取らせた後、自身はもう1台の台車へと向かった。既にシュランメルトの横に立っていたグスタフと同様に並び、準備が整う。


 それを見たリラが、説明を始める。


『皆様、準備は万端のようですね。では、これより模擬試合の説明を始めます』


 リラの言葉に、全員が耳を傾ける。

 特にタケル達は初めてなのもあって、集中して聞いていた。


『試合形式は3対3の戦いを一回。機体が行動不能になれば脱落とみなします。脱落した機体は私が、Orakelオラケルで安全圏まで回収しましょう。また、攻撃方法に制限はありませんが、胸部への攻撃は厳禁です。では、合図は私がします』


 その言葉と同時に、シュランメルト達リラ工房の陣営が凄まじい気迫を放つ。


『始め!』




 合図と同時に、シュランメルト達リラ工房陣営が疾走した。

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