第五章三節 帰還

『お帰りなさい、シュランメルト』


 リラは拡声機を用い、Asrionアズリオンへと呼びかける。


『ただいま帰ったぞ、リラ』

『ボクもいるよー!』


 程なくして、シュランメルトとパトリツィアから返事が来た。

 タケル達は訓練を中断し、Asrionアズリオンが着陸するのを見届ける。


『見たところ、そこの機体に乗っているのはタケル達のようだな。リラに鍛えてもらっているのか。ところでリラ、今日は何をするつもりだ?』

『光弾の射撃訓練、それに実戦です』

『実戦か。おれもやってみたいものだな』

『ちょ、ゲ……シュランメルト!? Asrionアズリオンで出たら、訓練にならないじゃん!』


 ツッコミを入れたのはパトリツィアである。

 事実、機体性能も技量も、シュランメルトとタケル達とでは雲泥の差であった。仮に戦うとすれば、わずか3秒で勝負がついてしまうほどだ。


『承知している、パトリツィア。だからおれは、Bladブラドを借りよう。余りはあるか?』

『1台でしたら、あります。ですが、シュランメルト。貴方は全く異なる操縦方法の機体を、乗りこなせるのですか?』


 そう。シュランメルトの搭乗するAsrionアズリオンは、透明な半球に思念を直接送り込む事で操作する、特異なものだ。

 そんなシュランメルトが、いきなり操縦桿方式に乗り換えるのは大きな障害を伴う。リラはそう考えていた。


『乗りこなせるさ。直接教えを受けたのは10年以上前からだが、リラ工房の機体整備に携わる内にある程度思い出した。後は一度動かすだけで、一通りの手順は完全に思い出すさ』

『かしこまりました。では、今から乗り換え願います』

『ああ。その前に、この残骸を格納庫で保管する』


 言い終えるや否やAsrionアズリオンが格納庫へ向かい、残骸を置く。

 そしてシュランメルトとパトリツィアはAsrionアズリオンから降りた。


「では、おれは乗るとしよう」

「ボクはキミが出るのを手伝おっかな」


 シュランメルトとパトリツィアは梯子を上り、タラップへ向かう。

 そしてシュランメルトが乗り込んだのを見届けると、パトリツィアはタラップ近くの装置を適当に操作した。


「これかな……おっ、上がった上がった!」


 タラップが跳ね橋の要領で上がったのを確かめたシュランメルトは、操縦桿を軽く動かす。

 Bladブラドが一歩、前に出た。


『操縦方法は問題無いな。では、行ってくるぞ』

「はーい、行ってらっしゃーい!」




 パトリツィアはBladブラドが格納庫の外に出たのを見届けてから、タラップより降りた。

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