第四章七節 翌朝

「…………ふわぁ。もう朝か。それにしてもシャインハイル、貴女という人は……」


 裸に布団を掛けただけの姿であるシャインハイル。

 そんな彼女を見たシュランメルトは、そっと肩に手をかける。


「くれぐれも、体調には気を付けてくれ。とはいえそろそろ、朝食の時間だ。起きるんだ」

「んっ……。あら、ゲルハルト……」

「おはよう、シャインハイル」

「おはようございます。うふふっ❤」


 シャインハイルは嬉しそうに、シュランメルトに体を寄せる。


「構わないが……続きはしないぞ」

「承知しております。それに、貴方は今日で帰るのでしょう? リラ工房に」

「ああ。タケル達の様子を見ておきたいからな」

「でしたら、その邪魔をする道理はありませんわ。わたくしわたくしの仕事をし、貴方に助力させていただきます」

「頼もしいな。なら一つ頼ませてもらおう。ノートレイアからの伝言は、代わりに受け取ってくれ」

「ふふふっ。かしこまりました」


 シャインハイルは軽いキスをシュランメルトにすると、ドレスを身に付け始めた。


     *


「おはよー。アッツアツだったねー、ゲルハルトー」

「茶化すな、パトリツィア。また黒猫に化けて見ていたのだろうが」

「たまにはよろしいでしょう、パトリツィア様? もっとも、わたくしとは今日で一度離れるのですが」

「はーい。それより、ゲルハルトー」

「何だ?」

「いつ離れるのー?」

「朝食後すぐにでも、だ。どうかしたか?」

「んーん、何でもないよー。確認したくなっただけ。それよりお腹減ったー。先行って食べてるねー」


 パトリツィアは珍しく、シュランメルトを置いて朝食へ向かった。


     *


「ごちそうさまでした」


 それからは何事もなく、シュランメルト達は朝食を済ませる。

 と、シャインハイルが話しかけてきた。


「ふふっ。少しの間、寂しくなりますわね」

「悪いな。またいずれ、タケル達を連れて戻るさ」

「お待ちしております。うふふ」


 シュランメルトはシャインハイルに見送られながら、パトリツィアを呼ぶ。


「パトリツィア」

「はーい」

「そろそろ行くぞ。そうだ、見送りはシャインハイルだけでいい。他の連中は仕事があるだろうしな」

「かしこまりました」


 三人は正面玄関から外に出ると、Asrionアズリオンを召喚する。

 一度格納庫から紋章の刻まれた残骸を取り出し、そしてベルリール城の外に出た。


「では、また来よう!」

「もう一度混浴しようねー、シャインハイルー」

「うふふっ。お待ちしております」




 かくしてシュランメルトとパトリツィアは、リラ工房へと戻ったのであった。

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