第四章六節 寝室

 混浴場から上がってからの事。

 シュランメルトとシャインハイルは、二人揃ってシュランメルトの寝室に来ていた。


「先ほど散々楽しみはしたが、あれは貴女の約束とは別のものだ。約束は約束、きっちり果たそう」

「うふふっ、わたくし達から強引に襲ったのに、きちんと別の話にしてくださるのですね。大好きですわ、シュランメルト」


 シャインハイルは、シュランメルトの唇にキスをする。


おれも貴女の事が大好きだ、シャインハイル。それに約束を反故ほごにするなど、守護神の御子みことしての矜持が許さん」


 シュランメルトもまた、シャインハイルの後頭部にそっと手を添えた。

 そして、しばし二人は舌をも絡めた、濃密なキスをする。


「んちゅ、ぴちゅ……んんっ」


 目の前の相手の存在を自らに刻み込むように、互いを貪る。

 いつの間にか抱き合っていた二人は、呼吸の限界まで口を離さなかった。


「…………ぷはぁ❤」


 やがて、シャインハイルがシュランメルトの服に手をかける。


「ふふっ、ゾクゾクしますわね。ねえゲルハルト、貴方もわたくしのドレスを、お願いしますわ」

「勿論だ」


 衣服と肌がこすれる音が、部屋に響く。

 やがて、照明のほとんどが落とされた。


「来てくださいませ」

「ああ」


     *


 その様子を、一匹の黒猫が静かに覗いていた。


(相も変わらずだなぁ。さっきもシたっていうのに、どんだけ絶倫なのさゲルハルト)


 黒猫はしばし、その場に留まっていたのであった。

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