第三章三節 準備

「では、準備にかかります。今から三分後に格納庫へ。グスタフ!」

「はーい、ししょー!」

「三分経ったら、皆様を格納庫まで案内して」

「はーい!」


 リラはグスタフに指示を送ってから、格納庫へ向かう。

 続いてフィーレも向かい、機体の準備を始めた。


 待っている間に、タケル達が雑談する。


魔導騎士ベルムバンツェか……」

「あの巨人に乗るんだね」

「なんか、楽しみ!」


 それを聞いていたグスタフが、三人に言う。


「そうだね。僕も楽しみだったんだ。けど……ししょーの指示、ちゃんと聞いてね」


 少々影を落としたような表情になる。

 無理もない。グスタフの父は、魔導騎士ベルムバンツェの誤操作により多量の土が入った袋を頭上に落とされ、その衝撃と生き埋め状態になった事で死んだのだ。

 ゆえに、グスタフは魔導騎士ベルムバンツェの教練に関しては、普段よりも真剣に受けている。まして相手が初心者だったり、近くに生身の人間がいるのであれば尚更だ。


 普段とは違う様子のグスタフに、タケル達は少々ぎょっとしつつも頷く。


「わ、分かった!」

「もちろん、リラさんの指示は聞くよ!」

「そーそー、何かあったら困るし!」


 グスタフはその答えを聞いて、満足そうに頷く。


「その様子だと、大丈夫そうだね。ん、そろそろかな。行こっか」


 三分経った事を確かめると、グスタフは三人を連れて格納庫へ向かった。


     *


 格納庫には、既に起動を終えたフィーレとリラの魔導騎士ベルムバンツェ、その隣に3台のそれぞれ濃灰色、青色、赤色の機体があった。


『皆様、聞こえますか?』


 リラの魔導騎士ベルムバンツェOrakelオラケルから声が響く。


『あちらに立つ3台の魔導騎士ベルムバンツェが、皆様の乗る機体です。まずは胸部の操縦席まで』

「こっちこっち!」


 グスタフは引き続き三人を案内し、胸部の操縦席まで誘う。

 胸部近くの高さにあるタラップから、順に乗り込む。


「リンカちゃん、先に乗りなよ」

「それじゃ、私はこれ!」


 リンカが座ったのは、赤い機体だ。


「リリア、これに」

「うん!」


 続いてリリアが座ったのは、青い機体。


「そして最後は……」


 最後にタケルが乗ったのは、濃灰色の機体だった。

 それを見届けたグスタフは、タラップ近くの装置を操作して跳ね橋の如く上げると、自身の魔導騎士ベルムバンツェへ向かって乗り込む。


『皆様、乗り込みましたね。グスタフ、貴方も乗りましたか?』

『はい、ししょー!』


 返事と同時に、グスタフ専用である六本腕の魔導騎士ベルムバンツェFlammbergフランベルクが現れる。


 そこまで確かめてから、リラは高らかに宣言した。




『では、準備は万端ですね。これより、魔導騎士ベルムバンツェの実践訓練を始めます!』

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