第一章二節 遭遇

「ここがおれ達の、新しい私有地か」

「リラもやるよねー。あっという間に貴族から私有地を買い取るなんて」


 なかなかガタイの良い青年とグラマラスな恰好をした女性は、柵で囲われた土地に踏み入る。

 ぐるりと土地を見回した青年は、呟いた。


「平原と森……それに沼地も見えるな。魔導騎士ベルムバンツェの訓練にはもってこいの環境だ」

「だろうねー。リラもそう考えて、ここを大金で買い取ったんでしょ? しかも平然と、何枚も金貨を出してさ。大胆だと思わない、ゲルハルト?」

「今のおれはシュランメルトだ。分かったな、パトリツィア」

「はーい、シュランメルト」


 シュランメルトと呼ばれた青年が、森を見る。


「確認も兼ねて散歩するか? リラ達が来るまで、少し時間もある」

「さんせーい」


 と、その時。

 シュランメルトとパトリツィアの目に、まばゆい光が見えた。


「ッ、今のは何だ!?」

「走るよ、シュランメルト!」

「いや、ここからでは遠すぎる! 魔導騎士ベルムバンツェが速い……来いッ、アズリオンッ!」


 シュランメルトはパトリツィアの手を掴んだまま、天高く叫ぶ。

 その刹那。




 シュランメルトとパトリツィアは、全高15mにお呼ぶ漆黒の騎士の中に座していた。




「行くぞ、パトリツィア!」

「はーい……。もー、キミはなんて強引なんだい……」


     *


「やはりAsrionアズリオンの機動力なら……おい、どうしてここに無関係なはずの魔導騎士ベルムバンツェがいる?」


 シュランメルトがAsrionアズリオンの投影する光景越しに見たのは、灰色、緑などの雑多な機体群であった。


「それだけじゃないよ! なんか、囲まれてる!」

「囲まれてるだと!?」

「うん、いち、に……三人くらい!」

「助けるぞ!」


 シュランメルトはAsrionアズリオンの背面に取り付けられたブースターを起動し、吹かしつつ一気に跳躍する。

 数kmはあった距離を、わずか十数秒で詰め切った。


 謎の魔導騎士ベルムバンツェ達よりやや離れた場所に着地すると、シュランメルトが拡声機を起動して呼びかける。




「貴様ら。おれ達“リラ工房”の私有地で、何をしている?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る