本編

第一章 転移

第一章一節 召喚

「何だ、ここ……!?」


 森の中に、一人の少年と二人の少女がいた。


「こんな場所、見たこと無い……!」


 震える青い髪の少女の――正確には三人全員の――足元には、魔法陣の描かれた布がある。


「シッ、何か聞こえる……!」


 紅い髪に狐の耳と尻尾を持つ少女は、遠くから聞こえる轟音を察知した。


「まずいよ、タケル、リリア! 囲まれてる!」

「囲まれてるって……何にだよ、リンカ!?」

「分からない!」


 戸惑っている間にも、徐々に、しかし確実に、轟音は三人に迫ってくる。

 逃げようにも、姿の見えていない敵、まして全方位から同時に迫っている事実。三人はどうしようもなかった。


 やがて、敵が姿を現す。

 それを見た、タケルと呼ばれた少年は、思わず呟いた。


「機械の……巨人?」


 そう。三人を取り囲んでいるのは、12台の魔導騎士ベルムバンツェと呼ばれる、全高10m前後の巨大人型兵器だったのだ。

 うち1台が、拡声機を起動して三人に呼びかける。


『お前達が“招かれし子供達”だな。侯爵閣下の元まで同行してもらうぞ』

「ッ……」


 三人が歯噛みするが、どう見ても有機的でない装甲には歯が立たないと判断したのか、結局は何もしていない。

 雑多な種類の魔導騎士ベルムバンツェの、隊長格とおぼしき1台が手を伸ばしたその時――




『貴様ら。おれ達“リラ工房”の私有地で、何をしている?』




 いつの間にか、もう1台の魔導騎士ベルムバンツェが現れていたのであった。

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