依頼14『証言の男』

ある男が取り調べを受けていた。


がそれはもはや自白を取るためだけの尋問の様な行いだった。




「頼むウウウ……信じてくれええ……俺はしたくてしたんじゃないんだああ……愛する者を殺すなんてそんなああああ……」


「はああ!! 実際お前が血まみれでお前の女房を刺殺してたのを多くの人が見てんだよ!! それを丸わかりの嘘をついて逃れようたってそうはいかねえぞおおお!!」




と衛兵もイライラしながら言った。


その時




「すみません! 少しよろしいでしょうか!」




と言って1人の衛兵が入ってきた。


それを見て尋問していた男が




「あああん!! 今取り調べ中だ! 後にしろ!!」




と言って当然起こった。


しかし




「勇者一行の1人である北島 舞殿がその男とお話がしたいと言って来ております!!」




と伝えると




「なあ!! どうして!! うーんまあいい!! 通せ!」




と言って衛兵は




「はい! どうぞこちらへ」




と言ってドアを開けると舞とリストアが入って行く。




「すみません、お仕事中気になることがありまして」




と言って舞が入ってきた。


それを聞いて衛兵の男が




「まさかこの男が何か失礼を?」




と聞くと




「いえそうではありません、その人から聞きたいことがありまして」




と言って用意された椅子に座る。


そして男に聞いた。




「あなたは体が勝手に動いて殺されたと言ってましたが本当ですか?」




と聞いた。


それを聞いて衛兵は




「それはこの男の嘘です信じてはいけません」




と注意をするが




「すみません、我々の仲間が異様な死を遂げたことで気になる点がありまして」




と言った。


それを聞いて衛兵は




「!! ……確かに……気になるかもしれませんね」




と言ってそのまま黙ってその場に座る。


そして舞は再び




「すみませんが詳しく教えてくれませんか?」




と言って聞いた。


男は




「今日私は妻の誕生日で好きな食べ物をを食べさせたくて思い出の食堂に入った事です」




と男の話が始まる。




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男の名前はエドミール


そして妻の名前はレマードであった。


男は妻の誕生日に2人の思い出の食堂に入る。


そして、美味しい料理を堪能するため席に着こうとすると




「アイテ!」




と言って1人の女の子が躓いてエドミールに当たった。




「大丈夫かい?」


「はい! ありがとうございます!! では!」




と言ってそのままぺこりとお辞儀をしてお金を店員払い、店を出る。


レマードは




「子どもっていつ見ても可愛いわね、リアーマもレクラも元気でやってるかしら?」


「きっと大丈夫だよ、私達の子供だからね」




と言って笑いながら席に着く。


そして、それからは出されていく料理を堪能していった。


2人は初めて出逢った事や子供との思い出の話をしてにこやかに笑っていた。


そして、料理が終り席を立った。




「美味しかったね、次は私の誕生日の時にもここに来ようかな」


「それもいいかもしれないわね! 楽しみだわ!」




と言って2人は席から離れようとした時だった。




チャキ




と音がしてエドミールの手に冷たい物を握っていた。


それに気づいて手を見るとそこにはナイフが握られていた。




「何だ……どうして私はナイフを握って……」




と不思議に思っていた。


するとレマードは




「どうかしたの?」




と聞いた。


エドミールは




「何でもないよ、でもなぜかナイフを持っていたんだ」




と言って笑ったいた。


すると腕が急に動き出してレマードの首にナイフが




ブス!!




と思いっきり刺さった。




「っがばああ」




とレマードは血を噴き出して信じられないような表情をしそのままも倒れて




「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」




と悲鳴を上げてもがき苦しんだ。




「アアアアアアアアア……どうして……なんでええええ」




とエドミールは泣き叫びながら自分の手に掛かった夥しい程の血を見ていた。




「なっなにをやってんだおっさあん!!」




と言って店員の1人が震えながら言った。


エドミールは




「ちっ違う!! 私は!! こんなことをしたいわけじゃ!!」




と言って真っ青になり震えていると体が勝手に屈み落ちていたナイフとフォークを両手が勝手に拾い握りしめていた。




「何だ……これは……」




と言って震えているとレマードは




「あな……だ……やべ……て」




と必死の形相で言った。


しかし、エドミールの両手は容赦なくレマードの首や顔面を何度も何度も刺し続けた。




「嫌だ! 嫌だ!! やめてくっれ!! 俺ええ!! 何でえええ!! 何で勝手に動くんだよおおおおおお!!」




と言っても容赦なく腕は振るわれて今まで見て来たレマードの顔も首も刺し傷でグチャグチャになる。


そして、痙攣しながらレマードの動きが完全に止まった。


そして、エドミール自身もレマードがどうなったのかが分かった。


レマードは死んでしまっていた。


完全に血を流して息もしておらず、心臓も動いていなかった。


それを見てエドミールは




「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」




と悲鳴を上げるように泣いた。


すると




「衛兵だ!! 動くなああ!! 貴様!! 自分が何をやったのか分かっているのか!!」




と言ってエドミールを押さえ込む。




「違う……違うんだああ……私はこんな……どうして……いったい何なんだあああ……」




と言って泣きながら言った。


しかし、衛兵は男に怒った状況など分からず




「確保しろ!!」




と言ってそのまま連れて行ったのであった。




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そしてそれを聞いた舞は




「つまり、あなたは自分の妻を刺してしまってはいたが、自分から望んで刺したわけではないんだな」




と言った。


エドミールは




「そうです……どうして自分でもあんなことをしたのか今でも分かりません……でもなぜか体のいうことが聞かなかったのです……どうして……レマードおおお……本当にすまないいい」




と言いながら泣き出した。


リストアは




「聞いてるだけだと何が魔法的な物で操られたってことかなあ?」




と言った。


すると衛兵は




「そんな魔法がありますか? 聞いたことがない……人の体を操るなんて……」




と当然のように言った。


舞は




「それに似た魔法は?」




と衛兵に聞くと




「操るわけではないですが麻痺だとか動きを阻害するなどがありますが……だからと言ってそれらは相手を刺し殺すような器用なことは出来ません……魔法子にも確かめてみますか?」




と聞くと




「すみませんがお願いできますか?」




と舞が言った。


衛兵は




「分かりました、では今連れてきます」




と言って1人衛兵を残して取調室から出て行った。


そして




「さて……一つ聞きたいんですがよろしいですか?」




と舞はエドミールに行った。


エドミールは




「な……何でしょう……」




と俯きながら言った。


舞は




「腕にある小さな傷はなんでしょうか? お仕事の関係で出来た物ですか? それとも連れて来られる際に出来た傷ですか?」




と質問した。


エドミールは




「え……そんな……仕事は酒屋ですが腕に小さな傷が出来るようなものでもないですし……連れて来られる際も怪我をするようなものでもなかったはずだ……」




と言って不思議に思っているようだった。


舞は




「後気になるのは最初の女の子だ……どの腕に当たったか教えてもらってもいいですか?」




と聞いた。


エドミールは




「この……今傷がある部分……です……」




と言った。


それを聞いて




「これは憶測ですが……その時の女の子が怪しいかもしれません」




と言った。


衛兵は




「それはさすがに無いでしょう……当たって傷をつけたとしても操るという関連性が見当たりません」




と言った。


舞は




「確かにそうですが、でも今はそれも怪しむ点だと思います……もし傷をつけたとしたらどうしてそんなことをしたのかが気になります」




と言った。


エドミールは




「じゃあ……その女の子がやった可能性があるかもしれないと?」




と言った。


舞は




「怪しいだけで絶対ではありません……それに……関連性がないのも事実です……すみませんが店の名前を教えて貰っても?」




と聞くと




「アルバーバーの食堂です」




と言った。


衛兵は




「でもどうするんですか? 店に行っても女の子のことを覚えている者もいないと思いますよ?」




と聞くと




「エドミールさんは顔は覚えていますか?」




と聞くと




「うろ覚えだがなんとなくです……見れば分かると思います」




と言った。


それを聞いて




「それでは衛兵と共にですがまたその店に行ってみましょう……もしかしたら見つかるかもしれないので」




と言った。


エドミールも




「分かりました」




と言った。


衛兵は




「舞殿、今日は遅いのでこいつは牢屋に入れることになりますよ」




と言った。


エドミールは




「もし……もし俺が殺していないことが分かって妻の敵を取れるなら……入るぐらい大丈夫です……舞様……お願いします」




と言った。


舞は




「ああ、では明日行くとしよう」




と言った。


そして、舞とリストアは取調室から出ると衛兵が




「魔法に詳しいレガーベル殿です」




と言って1人の男が立っていた。


レガーベルは




「えっと……相手を操るのに似た魔法を知りたいんですっけ?」




と言った。


舞は




「はい、そんな魔法に近いものはありますか?」




と聞くと




「そうですね、やはり衛兵さんが話した通り麻痺魔法や行動を阻害するような物しかないですし……それも操るようなものはありません……残念ながら」




と答える。


それを聞いて




「分かりました……本当にありがとうございます」




と言って頭を下げる


そして、レガーベルは




「では聞きたいことはもう無いですか?」




と聞くと




「はい……本当にこのために呼んで申し訳ございません」




と再び頭を下げる。


レガーベルは




「いえいえ、帰る前で下からいいですよ」




と言ってそのまま帰って行った。


リストアは




「舞……これって……レイミーを殺した犯人に繋がるの?」




と聞いた。


舞は




「それは難しいだろうな……だが」


「だが?」




と聞くと




「そんなような者が裏にはいる可能性が高まる……もしかしたらたどり着ける可能性がある……まだ分からないがな」




と言った。


リストアは




「みっ皆には言うの?」




と聞くと




「いや、ちゃんと分かってから言った方が良いだろう……そうでないと混乱させる可能性もある……それに多くの人数で探るとバレる可能性がある……リストアもすまないが内緒にして貰っていいか?」




と聞くと




「わっ分かった……でも、無理しないでね」




と言った。


舞は




「心配してくれてありがとう……でも大丈夫だよ」




と言って笑顔で言った。




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そして、2人は部屋に戻って




「すまない……遅くなった」




と言った。


するとランチェルは




「何を調べてたんだ?」




と聞くと




「時間が止まった事で分かることがあるかを書庫で調べたんだが……やはり分からないな……」




と嘘ではないことを言った。


ランチェルも




「確かに……それは気になる……」




と言って俯く。


啓示も




「でもどうして俺らは大丈夫だったのかも気になるところだ……」




と止まった時間を啓示と舞が動けた事にも疑問を持っていた。


それを聞いてラベルが




「魔王の仕業だから勇者に選ばれたお2人には効かなかったんじゃないのか?」




と言った。


レジリアは




「私もその方が有力だと思うぞ」




と啓示に言う。


啓示も




「そう……なのかもしれないな……そうなると魔王を倒して問いたださないといけないな……」




と言った。


舞は




「明日の武器の新調だがすまないが私とリストアは少し用事が出来て行けないんだがいいか?」




と聞いた。


ランチェルは




「どんな用事だ?」




と普通の疑問を投げかけた。


リストアは




「私の毛が少し抜け始めるからそれ用のブラシを買いたいの、いいかな……」




とすまなそうに言った。


それを聞いて皆は




「良いぞ、大丈夫だ」


「まあ抜け毛なら仕方ねえか」


「女の子にそんな言い方するな、私も構わない」


「それなら仕方ないな」


「分かりました、こっちは任せてください」




と言った。


そして、その日は皆眠った。




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次の日他の皆は鍛冶屋に向かい


舞とリストアは獣人専用の店を聞くと言って取調室に行った。




「すみません、エドミールさんと一緒にアルバーバーの食堂に行く予定なんですが?」




と衛兵に聞いた。


衛兵は




「勇者様! 聞いております! 少々お待ちを!」




と言って牢へと向かう。


すると




「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」




と悲鳴が聞こえた。




「な!! どうした!!」




と言って舞はリストアと牢へと入って行った。


すると




「えっえっエドミールが……死んで……死んでる……」




と震えながら衛兵は指を指した。


エドミールは喉を思いっきり古い鉄格子のとがった部分で突き刺して血を流し死んでいた。




「な!!」


「う……そ……」




2人は真っ青になりエドミールを見た。


舞は




「やられた……証拠を隠滅をするためか……」




と言った。


リストアは




「どういうこと!」




と聞くと




「明日自分の罪が晴れるのに自殺する者がいるか! まだ操られていたんだ! それで自分の喉を刺して死んだんだ!!」




と言って悔しそうにしていた。


舞は




「だが……裏に何者かがいる可能性は見つけた……店に行ってみよう」




と言ってリストアと衛兵に言った。

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