依頼3『暗殺者《アサシン》達』

2年と少し前




ランスレット国には裏で働く集団がいた。


その集団たちは暗殺を行っていた。


もちろん恨み、妬み、私怨、邪魔だから等様々な理由でもお金さえ払えばその集団は動いていた。


そして、必ず死体をわざと残すことによって仕事の終了を知らせ、報酬を貰うということを行っていた。


もし、依頼主は報酬期限までに代金を支払わないとその依頼主は変死してしまうという噂だった。


そして、今回の標的は……




ここはランスレット国の領地である村




大きなお腹をした女性がひとり歩いていた。


髪は癖ッ毛ではあるがおっとりとした感じの女性が歩いていた。


すると1人のお婆さんが、




「あら、レイちゃん、お腹の子、大きくなったわね!」


「ありがとうございます、もうすぐ産まれるとはいえ油断できません」


「きっとかわいい子が生まれるわ!」


「ありがとうございます!」




レイは大きなお腹でも入るような少し汚れてはいるが大き目のワンピースを着ていた。


そう言ってレイは小さな家に戻った。


すると


半袖の茶色く薄汚れた服と同じ汚れの着いたズボンをはいた男が




「レイ! 大丈夫か! あまり無理するなよ!」




と心配そうに駆け寄った。


レイは




「大丈夫よデイル……そんなに心配しなくても……でもありがとう」




と声を掛ける。


デイルは




「そうか……ちゃんと生まれるか不安だな」




と少し過保護になっていた。


レイは夫の顔に手を当てて




「ありがとう、私と結婚するために家を捨ててくれて、こんなみすぼらしい家に住まわして」




と少し申し訳なさそうだった。


デイルは




「何を言ってるんだ、レイ、私は決められた人と結婚するより君と結婚したかったんだ! 後悔なんてあるわけないだろ! あんな豪華だけの何もない空っぽの家よりこの家の方がたくさんの者があるんだ! だから、僕は君と結婚できたことの方がすごく嬉しいよ」




と言って顔を赤らめた。


そして、2人は向き合ってキスをした。




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夜のことだった。


レイが妊娠しているとはいえお金を稼がないと生活は出来ない。


その為デイルは、次の朝までに町に到着するために夜に野菜を荷馬車で運んでいた。


そして、レイはベッドで休もうとしていた。


すると




「やあ、こんにちは……大きいね、そのお腹……子供がいるのかい?」




とローブを着ていた人がいつの間にか立っていた。




「!! だっ誰ですか!! あなた!」




とビクッとしながら言った。


すると




「いやいやいや、別に君に名前を言いに来たんじゃないよ、そんな用事はないからね、大丈夫だよ、すぐに済むから」




と言って笑っているのがなんとなくだがレイには分かった。


レイは




「何をするんですか!」




と睨みながら聞いた。


すると




「大した用じゃないよ、本当に大した用ではないんだ、君とお喋りするわけでもないし、交渉することもないんだ、お願いしたい事もない、ただね……」


「ただ……」




とレイは恐る恐る聞いた。


すると




「君の命とその子の命を貰うことが、今日私がここに来た理由なんだよ!」




と嬉しそうな声で言った。




「いやああああああああ!!」




とその場で悲鳴を上げて震えた。


だが




「に! 逃げなきゃ!!」




と言ってすぐに立ち上がりドアを




バン!!




と勢いよく開いて走り出す。




「ダメ! ダメ!!」


「おやおやおや、助けを呼ぶのかな? それとも逃げだけなのかな? さあ! 鬼ごっこだよ!! 走れ走れ!」




とローブの人は言った。




「ハッ! ハッ! ハッ! ハッ!」




とレイはお腹を庇いながら走っていた。




「どうして!! いったい! どうして!!」




と青ざめながら走り続ける。


そんな時、何かを踏んだのか




「いやああ!!」




とそのままお腹を庇いながら転んだ。




「うう……ダメ……この子だけは……」




と泣いていると




トン トン トン




と誰かが歩く音がした。




「そんな……さっきの奴が……来る…どうしてこんなことに……」




レイは泣きながら怯えていた。


それなのに、彼女は途中で転んでしまった。


彼女は再び立ち上がろうとしたが上手く立つことが出来なかった。




「ドっどうして!!」




と足を見て無理やり立とうとしたが立てない理由が分かった。


両足が切断されていた。


足からは血がドロドロと流れていた。




「え……え……」




と真っ青になっていた。


すると




「いやああ、ビックリした? そうだよね? ビックリするよね? 何があったか分からないよね? だってあったはずの足が無くなってるんだもん、わたしでもビックリするよ」




と言ってローブの人が来た。




「ドっどうして……どうして私なの……私なの……」




と泣きながら聞いた。


ローブの人は




「さあ? 何か恨まれることでもしたんじゃない?」


「恨まれること?」


「さあ? どうだろうね? さてと、もう終わろうか? まずは子供かな? そうすれば私好みになるかな? あなたは?」


「や……止めて……お願い!!」


「止めな――い!」




そして、




グシャン!!




といつの間にかお腹は刺されていた。




「……わっ私の子供……いや……嫌ぁ……」




ズパン!!




「ハイ丁度頂きましたああああああ!!」




顔は絶望の表情で宙に舞い


ローブの人の手元に落ちて来た。




「はああ、いつ見ても素敵だよ……この、すべてに絶望した顔……」




と言ってそのままローブの人は消えた。




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次の日


デイルは野菜を売り終わり大量のお金を持って帰っていた。




「たくさん売れたぞ! これでレイとお腹の子にたくさん美味しい物を食べさせることが……何だ、あの集まりは?」




とデイルは異様に思いその場に急いだ。




「でっデイル!! どこに行ってたんだ!! あんたの嫁が!!」




と1人の男が血相を掻いて肩を揺さぶった。


デイルはその言葉を聞いて真っ青になった。




「……レイが……レイがどうしたって……」




と言って集まった人を掻き分けて中心へと入って行った。


そして、顔はなくなっているが、デイルには分かった。


愛しい妻が無残な姿で死んでいるのが分かった。




「あ……どうして……ああ……」


「デイル……」


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」




とデイルは悲鳴を上げた。




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1人の仮面を着け、ローブに包まれた女性がいた。




「やったわ!! これでデイルは私の愛しい人になるわ!! あははははあはははは!!」




と狂ったように墓場で喜んでいた。


すると




「報酬は?」




とどこからともなく声がした。




「ああ、ありますとも! 大丈夫ですよ! 払います払います!」




と言って女性は大金を墓場の近くに置いた。




「よろしい、では……またのご利用を……」




と言った。


報酬金はいつの間にか消えていた。


だが彼女にはそんなことはどうでも良かった。




「さああ!! 早く落ち込んでいる彼の元へと向かわないと!! きっと苦しんでいるわ! 私が手を差し伸べないと!!」




と言って喜びながら墓場から去った。




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とある個室の部屋に数人の女性がいた。


皆、木製の机の周りにある木製の椅子に座っている。


そして、そのうちに一人が、




「いやああああああああああああほおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 大金だあああああああああああああああああ!!」




と嬉しそうにする1人の背の低い少女が椅子から立ち上がった。


その子はパーカーを着ていて短パンを履いて瞳は黒く、短い黒髪はツインテールに結んでいた。




「ノリア、嬉しいの分かる……でもうるさい」




と瞳が黄色くバンダナで髪をまとめて口には碧いマスクをしており服は露出の多い衣装でズボンは長ズボンを着ている女性が言った。


それと同じく




「そうだ、我が妹よ、興奮は止まらないが落ち着け」




と瞳がノリアと同じく黒く、タンクトップの上にでコートを着ており、ズボンはロメイトと同じく短パンの黒髪ロングの女性ノリアに行った。


ノリアは




「分かったよ、イナミ、ナリア姉」




と言って席に座った。


すると




「今回は私の仕事だから私が多めに貰えるんだよね!! コレクションもゲットして嬉しいよ!!」




とセミロングのブラウンで瞳は碧く、作業服を着てキャップ帽子のつばを後ろに向けて被りながらゴーグルを掛けている少女が嬉しそうに言った。




「あらあら、良かったわねロメイト! よしよし」




とロングの白い髪に、灰色の瞳をし、白くて動きやすそうなスカートのある衣装を着た女性が、ロメイトと呼ばれた女の子の頭をゴシゴシと撫でている。




「ううん!! くすぐったいよ! ハイネウス! 止めてよおお!!」




とロメイトはその女性をハイネウスと呼んで止めるように言った。


すると




「お前ら黙れよ、報酬は分けるから、ちゃんとロメイトが多めに渡すから」




とスーツ姿の服を着た金髪でセミロングの碧い瞳の女性が話した。




「わーい!! アメナガス!! ありがとう!!」


「ただここにいないが情報係りの分を省くけど」


「えええ!! 情報係って何してるの!!」




とロメイトが文句を言うとイナミが目線を向けないまま




「今回の夫がいない時間を教えてくれた……」




と言う。


ロメイトは




「関係ないよ!! 夫が居ようが居なかろうが!」




と反論した。


だがイナミはロメイトの方に目線を向けながら




「それでも用心大切……」




と両手を組みながら言う。


するとノリアが




「でも物好きだねえ、ただの嫉妬の為だけにこんな大金を払おうだなんて! 私には到底理解出来ないよ!」




と嬉しそうに袋を叩く。


それを聞いてナリアは




「まあな、だがやはり恨みというのは人それぞれ何だろうな……欲しい物は人それぞれってわけだ……それにあの女からしたらこんな金なんて1日で稼げるんだろうし」


「ええ!! これ600万ガルドだよおおお!!」




とノリアは驚いた。




(ガルド=10円の世界として見てください)




するとロメイトは




「?? 普通じゃない? 私の作った剣とかたまにそれぐらいいくけど?」




とキョトンとしながら言った。


ロメイトは普段鍛冶屋をやっていてものすごく評判も良く時折王族の剣の依頼も受ける。


ナリアは




「何だよそれ!! 私たちなんてそんなに稼ぐことなんてないぞ! せいぜい暗殺でたまにあるぐらいだろ!! 少しぐらいこっちに融通しろよ!!」




とキレると




「やだよおお!! 暗殺したのは私だしいい!!」




と言ってロメイトは多く渡されたお金を隠した。


ナリアは




「糞……」




と言うとアメナガスは




「まあまあ、取り敢えず分けたから受け取るんだ」




と言ってそれぞれに報酬を渡した。


ナリアもノリアも文句は言っていたが




「ははは!! なかなかな金だな!!」


「ああ、これなら豪華な飯が当分食えるな!! ノリア!!」




と言って喜んでいた。


ロメイトは




「ははは! これならコレクション部屋の管理をしても余る!! どうしようかな! 服を買おうかな! それとも次暗殺の為に使う武器の作成に挑もうかな!! ああんもうう!! 私ったら! 服より武器に心躍ってるううう!! 私のしょ・く・ぎょ・う・病!」




と言ってくるくる回っていた。


ハイネウスは




「私はどうしようかしら、化粧品の売り上げも良いし奴隷でも買おうかしら? また水につけて興奮を収めないと」


「私……服買う……化粧品も買いたい……ハイネウス……ロメイト……また付き合って」


「うんいいよ!!」


「私もイナミちゃんと買い物行きたい!!」




と言って盛り上がっていた。


そんな中アメナガスはお金を数えて




「うむ、今回はこれぐらいか……」




と計算していた。


それを見てイナミは




「また……妹さんの?」




と聞くと




「ああ、私が面倒見ないといけないからな」




と言って集中していた。


ロメイトは




「たまには自分に使ったら? 気分転換も大切だよ?」




と言うと




「ああ、まあそうだな、だがあまりファッションとか興味ないし食べ物も食べれたらそれでいいし」




と言ってあまり興味なさそうだった。


そして




「まあ取り敢えずは暗殺以外の生活面で化粧はするからまたお願いするよハイネウス」


「……分かったわ、教えてあげる」




と言って嬉しそうにしていた。


するとノリアは




「さすが! 自分の縫い目を隠すだけの技術がある人は違……」




バギイイ!!




「ぐえべえ!!」




余計なことを言ってハイネウスに殴り飛ばされた。




「すまないな、ハイネウス、ノリアには私からちゃんと言っておく」


「よろしくね……」




と少し怒りながら言った。




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ある豪邸の屋敷で


デイルはレイと一緒にいた時とは違う貴族の服を着ていた。


デイルは悲しみに暮れていたがある女性のおかげで少し元気を取り戻していた。


しかし、デイルの心の闇は消えていなかった。




「大丈夫? 苦しいわよな……大切な人を失ったんだから」




と言ってデイルの肩に手を置きながら言った。




「レクア、ありがとう……君の優しさに気づいていればレイが死ぬことはなかったんだ……すべては僕が悪い」


「あまり自分を責めないで……あなたは何も悪くないわ」




と言って慰めていた。


レクアは元々デイルの婚約者であったが、デイルがレイと恋に落ちて何もかも捨てて彼女と結婚したことによってレクアとの婚約は解消されたのであった。


レイが死んでデイルは心に傷を負いながら暮らしているとレクアがやって来て彼を元気づけた。


そして、勘当した親たちを説得して再び婚約をして今奥さんとして一緒にいたのであった。




「ねえ、私そろそろ赤ちゃんが欲しいの……いいかな?」




と言ってレクアはデイルを誘った。


だがデイルは




「すまない、もう少し待ってくれるかい? 本当にすまない」




と言って断った。


レクアは




「大丈夫よ、私なら……」




と少し悲しそうにしながら寝室に戻った。


そんな悲しそうな顔を見てデイルは




「このままじゃだめだ……この心に残った苦しみを消さないと僕は次に進むことが出来ない……」




そんなことを言いながら頭を抱えた。




そして次の日




デイルは家系の仕事をこなすために取引先に行っていた。




「暗殺者? そんな噂が……」




デイルは取引先の主人にそんな話を聞いていた。




「ああ、何でも裏で動いていて違法ではあるが金さえ払えば動いてくれると聞いている」


「そっそうなのか!! それは本当か!」


「だがレイ殿の殺され方を見ればもしかしたら誰かが依頼して殺した可能性もあるぞ」


「そっそれはどういう!!」




とデイルは男に聞くと




「奴らは殺したのが自分たちであることが分かるように特徴的な殺し方をするらしい……もしそうならば多分仲間の誰かの可能性があるなあ……殺した自分自身になってしまうから聞いてもらえないかもしれないな……」




と言っていた。


それを聞いてデイルはあることに気づいた。




「でもそれは依頼主は含まれてないんじゃないか?」


「それはどういう?」


「つまりだ、例えそいつがレイを殺したとしても依頼主が依頼さえしなければそいつはレイを殺さなかったんだろ?」


「まあ、そうだな……まさかお前!」


「もしそうであるならば依頼主を殺してもらうよ……殺した暗殺者も許せないがだが一番許せないのは罪もないレイに対して殺意を向けてお金を払った依頼主だ!! こうなったら依頼主だけでも僕は! 僕は!!」




と言って怒りを露わにしていた。


取引先の男は




「まあ、別に俺は構わないし、聞かなかったことにするよ」




と言って気を遣ってくれた。


それを聞いて




「で、どこで依頼できるんだ?」




と聞くと




「ランスレット国の墓場で依頼を聞いているとの情報だ……くれぐれも気を付けるんだぞ?」




と言って注意を払った。


デイルは早速大金を持って墓場に言った。




「暗殺者!! いるか!!」


「ああ、いるぞ……何か用か……」




と呼びかけると声がした。




「聞きたいことがある……俺の妻……レイを殺す依頼は受けたか……」


「それは言えないな、もし受けたとしたらどうするつもりだ?」


「いや、君達を殺すつもりはない、もし受けたのならばその依頼主を暗殺して欲しい! もしただの殺人ならば殺した奴を暗殺して欲しい!」




と言って大金を置いた。




「金は終わった後で貰う、だが聞いた話だと依頼主は分からないようだな……そして、殺した犯人も分からないようだな? そうだな?」


「ああ! 分からない!! ダメか?」




すると




「いや、聞いただけだ……何処まで調べればいいのかを確認したくてな……依頼の場合は依頼主だけでいいのか?」


「ああ!! 依頼主だけでいい!!」


「分かった……誰が死んだか君は分からないだろうから秘密裏のメッセージを送らせて貰う……それでいいか?」


「ああ! 構わない!」




そう言ってデイルは暗殺者に依頼を出した。




「では、またここで……」




そう言ってそのまま話が終わった。




「頼んだぞ……」




と言ってデイルは心の底から祈った。


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