第一章 ヒステリックな彼女

5


 秋葉原駅近くの公園にて。


「でっ……話って……何?」

「唐突に聞くのは……あれだね」

 公園内にはプランコ、滑り台、鉄棒、ジャングルジム、と言った子供が楽しめる場所だ。

 その場所に高校生の大人が居る。


 亜久刃あくばつかさはプランコで遊んでいる。

 服装はドレスではなく、黒一式の服。

 ゴスロリの服とは違うけど。

 黒のTシャツの上にカーディガンを羽織り、黒のスカート。

 髪は茶色の長い髪。

「あれっ、さっきはピンク……だったような」

「ちょっと、亜久刃つかさ、遊んでないで聞きなさいよ!」

 富崎が怒鳴る。


「我は自由かぜだ! 誰にも邪魔はさせない。誰だろうと」


 亜久刃つかさは片手を頭に掲げた。

「……はは、はむ」

 俺はおにぎりを食べていた。

 近くのコンビニに行って、昼飯を買って公園に来た。

「さーてと!」

 亜久刃つかさはプランコから飛んで着地する。


「我は、ダーク・スプリング! 闇の王なり! 全ては……闇と化する」


 亜久刃は中二病的に言った。

 ほんと、変な女の子だな。富崎の言う通りに。

「闇は……あんたでしょ!」

「ぐっ! でっ、我に何か用か?」

「用は……あっち」

 富崎が夜神を指差した。


「む! 俺か!?」


 何、一体……


「主は誰だ!?」


 中二病的に格好付けて言う。

「俺か……俺二年の夜神聖夜だ。話ってなんだよ。富崎があるんじゃないのか!」

 夜神は叫びながら言った。

 そして富崎は深い溜息を吐いた。

「あんたって、ヘタレね」

「んな! なんで、そんな事を言われなくてはならん! 大体話があるって言ったのはお前だろうが!」

 全く、意味が分からん。

「えっと……亜久刃さん、私達は『新・生活部』を作ろうとしているの。それには三人以上部員が必要。だから入ってくれないかな!」

 と単刀直入に言った。

「ちょっ、おまっ」

「……わ、我に入れと?」

 亜久刃は首を傾げていた。

「さぁ夜神、話をして」

「はぁ、そう言う事か」

 富崎の言っている事が漸く理解した。

 同じ学校の生徒だから、部に引き入れて学校に馴染ませる。

 その部活には三人以上の部員が必要だ。

「えっと……あっ、亜久刃さん、お願いがあります。部員になってくれないか!」

 と頭を下げてお願いする。

「……主よ、事情の説明を要求する」

 俺は事の事情を話した。

 新しい部活を作り、毎日楽しく過ごす、人を助け、人の為に何かをし、人に慣れるようにする。

 その事だけを話した。

「ふむ、つまりあれか……ボランティアみたいな事をするのか。そんなんで申請が通るのか、主よ!」

 相も変わらず中二病的に言う。

 この人達を馴れさせる事、そんな事が果たして出来るのか……

「大丈夫だ、今は同好会って事になっている。君が入ってくれれば、後一人捜せば……なんとかなる」

「……そう、主、我を必要としてくれるのか……周りの皆は、我を認識してくれないのに、主は、我を認識してくれるのか!?」

 亜久刃は哀しげな表情をして顔を俯かせた。

「ちょっと、何泣かしているのよ!」

 怒号が聞こえた。

「くっ、俺が泣かしたんじゃない!」


「我、嬉しい!」


 と夜神に抱き付いた。

「うわっ!」

 驚きの余り、倒れそうになった。

「ちょっと、亜久刃……さん!? いきなりこう言うのは……」

「……亜久刃ではなく、ダーク・スプリング、と呼んで欲しい」

 いや~それはちょっとなぁ。

 学校でその名で呼び合ったら変に見られる。

「そう言うのを他の人に気に入られるように、協力するからさ、まずは……」

「まずは……」

 亜久刃は復唱する。


「離れて!」


 と言い、亜久刃を素っ気なく離した。


「っと、我! スイサン!」


 と意味の分からぬ事を言った。

「ちょっと、終わったの!」

 と富崎が近寄って来る。

 何故か怖い目で睨んで来た。

「あぁ、入ってくれるみたいだ。さぁて、これから頑張らなくちゃな。後一人」

「はぁ……何を言っているの、もう三人揃っているけど」

「はっ!?」

 富崎は腕を組み言った。

「どう言う事だ!」

「だから、私も入ってあげるわよ。私もその、人と馴染めないから」

 と頬を赤くした。

 良いのだろうか。


 こうして、俺達は部としての活動をして行く事になった。


 富崎めぐみと亜久刃つかさを人に慣れさせる事が出来るのだろうか。

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