第一話 ヒステリックな彼女

4


 そして日曜日がやって来た。

 結局、今週は普通に過ごしている。

 別に日曜日が楽しみ、と言う訳でもない。


 ただ単に流されただけだ。

 一体どう言うつもりなのか……

「行きたくないな……はは」

 自分の家で弱音を吐く。

 休みはしっかりと休みたい。そうしないと。

 労力が続かない。

 しかし、行かないと富崎めぐみは何をしでかすか……分からないからな。


 夜神聖夜は気が重い気持ちで荷物を持ち、家を出た。


 朝の十時に待ち合わせって言っていたっけ。

 夜神聖夜の今日の服装は一般市民らしい服装だ。浅草駅に到着し、彼女を捜す。


「居た!」


 富崎めぐみは肩に掛けるバッグを持って立っていた。

 服装も妙に気合い入っていた。

 白いワンピースにカーディガン。ニーソソックスを履いて、靴もおしゃれ。

 何、気合い入れているんだよ。

 黒髪をポニーテールにしているし。

 自分をアピールしているのか。

 今日は日曜日、人が多く……本当に酔ってしまいそうになる。

 夜神は富崎の方へ向かった。


「お早う」


「うっ!」


 ピクリと驚き、振り向く。

「……あっ、あんた! 何、その格好!」

 最初の一声がそれかよ。

「はぁ~別に良いだろう。『デード』じゃあるまいし。でっ、なんだ、話って」

「えっ!?」

 富崎は呆然としていた。

「どうした?」

「なんでもないわ! はぁ……行くわよ」

 突然と怒り出す。

 なんなんだよ、あれは。

 全く、理解出来ない。


 富崎は電車に乗るみたいだった。


「おい、何処行くんだよ!」


「付いて来れば、分かるわよ」


 と富崎は言った。


 俺達は電車に乗り、目的地に着いた。


「秋葉原……確か……オタクの聖地。お……お前、オタクなのか!?」

「はっ! 何を言っているのか分からないのだけど……なんで私が……『オタク』になる訳!」

 と富崎は逆ギレをする。

「……違うなら……良いけど。怒んなくても良いじゃないか」

「あんた、私に対して失礼な事を思っていたからでしょう!」

 大きな声で叫ぶ。


 周りの視線が痛い。

 コスプレ姿の人達が居るのにも関わらず、怒声を上げられるものだ。

「行くわよ……」

「あぁ……だから何処にだ」


「メイド喫茶よ」


 えぇーメイド喫茶って。

 本当に訳が分からない、


 日曜日は派手過ぎな人達が大勢居る。

 歩く度、コスプレしている人達が居る。

「なっ、なんで……喫茶店に行くんだよ!」

 俺は歩きながら聞いた。

 富崎は「ふう~」と息を吐いた。

「この前、中二病の娘の真似をしたの覚えている?」

「中二病? あーね、言っていたね。なんか」

 あの話に何か関係があるのか。

「その人が……居る」

 富崎は指を差した。

 メイド喫茶に向かうのだった。


 東京都内にあるメイド喫茶、どれぐらいあるのだろうか。詳しくは知らないが喫茶店は数多くある。

 その中の一つ、秋葉原のメイドin喫茶に入る、俺が居た。


「おかえりなさいませ!!! ご主人様」


 中に入ると、メイド服を着た女性達が大きな声で言った。

 黒髪ロングと茶髪の女性が接待してくれた。

 初めて来てしまった。

 昔の仲間なら何を言うのだろう。

 流石に周りは男性客が沢山居る。

 店内はおしゃれで雰囲気も良い。中ではカラオケセットまである。

「……ちょっと、何ボーッとしてるの。行くわよ」

 富崎に言われ、夜神もその後に付いて行く。

 メイドさんに案内してくれた場所に座り、注文をする。

「あの、今日、亜久刃あくばつかささんは入っています?」

 と富崎がメイドさんに聞いた。

「あくば……つかさ、さんですか?」

 メイドは首を傾げ呟く。

「えっと……誰だっけ?」

「あー! ほら、いつも中二病みたいな事をやっている」

 富崎は説明に入る。

「あーあの娘ね……居るには居るけど……あの娘に何か」

「じゃ、呼んで貰える!」

 富崎は名出しし、メイドに指示した。

 なんか、偉そうだ。

「……はい、畏まりました」

 黒髪ロングの女の子がニッコリと笑い、お辞儀をし行った。


「おい、初対面なのに、よくあんな態度でお願い出来るな」

「メイドはご主人様の言う通りに動く、それが仕事よ」

 お前がご主人様。と言うよりも女王様だろう。

「所で、亜久刃つかさって……誰?」

「亜久刃つかさ、私のクラスメイト。妙な女の子で、いつも意味が分からない行動をする」

 説明するように言った。

「へぇ~そうなんだ。でっ、その亜久刃つかさが此処に居るって、なんで分かったの?」

「……それは、別に良いでしょう! そんな事は些細な事よ」

 とそっぽ向く富崎。

 何かよからぬ事をしたな。


「待たせたな! 我をご指名とは、中々見応えがあるお客人だ」


 ふと全身黒いドレスを着た女の子が現れた。


 髪が長く、腰まであって、ピンク色の髪を掻き分けていた。

 背を高く見せる、ブーツを履き、いかにも自分がNo.1だと言っている風だった。

「ふっ、我、ダーク・スプリング、誘いながらも、我を欲すると言うのか!」

「はい?」

 よく意味が分からない、なんだこの娘。

「はい、はい。誘ってあげるから、こっちに来て」

「……っぐ、お主は! 何故此処に!」

 亜久刃つかさは驚いたのか後退りした。

「酷いな、君が誘ったんだよ……覚えていないなんて……友達としてショック」

「ふっ、我に友達など居ない! 何か勘違いしてないか! お主」

 公衆の面前で痛い台詞と寂しい事を言う亜久刃つかさ。

「まぁまぁ、人の世も捨てたもんじゃないから、忘れる事はない。そうでしょう!」

 と同意を求めて来る富崎。

「……はは、何がなんだかな……」

「主……うん~困った。何を言い返せば良いのか分からない」

 頭を抱える亜久刃。

「まぁ、ちょっと話があるのよ。良いかしら?」

「……うん」

 ちょっと待て、仕事中なのに良いのかよ。

「主よ、もう直ぐバイトの時間が終わるから、外で待っていて貰えない」

 と亜久刃つかさが言った。

「えっ、もう良いの?」

「うん、直ぐ支度するから」

 とその場を去るつかさ。

「……本当に良いのかな」

「良いじゃないの、さぁ行くわよ」

 と立ち上がり、店の出口へと向かう。

 結局、何も頼まずに店を出るとはな。


「腹減った~」


 と言いながら店を出た。


 

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