カナリア孤児院
ここはカナリア孤児院。毎日のように子供の笑い声が飛び交う孤児院。当然のようにそこに住んでいる少年少女は家族がいない。ましてや、家族を失った記憶が残っている子供たちもいる。でも、子供たちは絶対に悲しい顔をしない。彼らにとってはこの孤児院こそが自分の家であり、『ママ』こそが自分の母親なのだ。その中でもクレール、ルイーズ、ナルシス、アレクシは仲良し四人組だ。四人は物心ついた時からずっと一緒の部屋に住んでいる。毎日ずっと一緒で、いつも笑顔が絶えない。また、その四人には共通点があった。四人とも大切な人をなくしているということだ。クレールは姉を、ルイーズは兄を、ナルシスは母を、アレクシは父をなくしている。四人は孤児院に来る前の記憶がない。それでも、自分の大切な人を失った時の記憶だけはあるのだ。
「クレール!!こっちよ!おいで!」
「ルイーズ…待ってぇ…。」
走り回るクレールとルイーズを遠くから優しい目で見つめるのはナルシスとアレクシだ。
「はぁ…。全く。相変わらずだな。クレールもルイーズも。」
「うーん…むにゃむにゃ…。」
10歳である四人はまだあどけなさが残っており、家族はいなくともとても充実している毎日を送っていた。
「クレール、アレクシ。そろそろ、採掘の時間よ。」
走り疲れてナルシスとアレクシのそばに倒れ込んでいたクレールの頭の上から声が降ってきた。
「ママ!!」
そこにいたのはママ。孤児達のお母さんで少し無口であれど、とても包容力があって優しいママだ。
「ちぇっ…。今日の当番はクレールと一緒かよ…。」
アレクシはそう言いながら足元の砂利を蹴飛ばした。少しむくれているが、少し頬が赤くなっている。その様子のアレクシを見てクレールは肩をすぼめて俯いた。
「ねえねえ、アレク!!なら私がアレクと変わってあげよっか!?私がクレールと一緒にやるわ!」
二人を見てルイーズが手を挙げた。手が宙に届くくらいに精一杯伸ばし、耳の下で二つに結んだ髪が揺れた。しかし、ナルシスがその手を掴んだ。
「ルイーズ…君もそろそろ空気を読めるようになったほうがいいよ…。」
ナルシスはなおも「行きたい行きたい」と喚いているルイーズを無視し、クレールとアレクシの方へ向き返った。
「ルイーズは僕がなんとかしとくからクレールとアレクシは採掘に行っておいで。」
促されるがままに、二人は採掘へ出かけた。一人はスキップをしながら。もう一人はその後ろを小走りで追いかけながら。
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