残酷オペラ座ワールド
今日も どこかで誰かが不幸に負けている
頑張っても届かなくて 生まれついての何かの差で あっさり白旗を嘲られながら配られる
他の誰かも苦労してるなんて 参考文献もありゃあしない一般論で その不幸に敗れた者たちの墓は 今日もどこかで唾の雨に塗れているんだ
そんな事が正しい事なんて そんな事は僕にだって分かっているんだ 誰かがいつかは大人にならなきゃならないんだ どれほど理不尽だって世は事もなしと 伽藍な胸を張ってみせ 未だ純朴な子供の夢を 涙を流して叩き壊さなきゃいけないんだ
安っぽい高価なレストランの帰り道で ふと見上げた紫の雲の向こうの自分が 時折呟いてくるんだ
大人になって手に入れたものは何なのか
お前のみっともない演劇の向こう側で 子供たちが答えを待ってるぞ
最後にハッピーエンドのなのかと 世界を含めてお前が不幸に打ち勝つのを待ってるぞ
今日も どこかで誰かが不幸に負けている
敗北し続け転がって だけど不幸自慢にさえも勝てなくて 些末だと単純明快な文字に変換される
神は人に二物を与えずなんて 人の才能を勝手に縮小して 人間不信の裏返しを与えられ続けた者たちが 今日もどこかで過去の残酷に頭を悩ませる
それが諸行無常だなんて そんな事は僕じゃなくたって分かってるんだ 都合がいい時だけ正論掲げては 言葉を知らない誰かを殴っては 必死に書き上げた台本を火に焚べて それが世界なんだと勝ち誇って笑うんだ
安っぽい人生の折り返し道で 隣の部屋の五月蝿さに目覚めた頭の中で 忘れた夢を思い出して泣いたんだ
結局何がしたいのか
お前のみっともない演劇の果ての果てで 朽ち果てるお前が言ってるぞ
最後にハッピーエンドが来るものかと 世界を含めて誰も彼も死んでしまうのだからと
子供時代に見た景色たち 大人時代になってようやく意味が分かるんだ
人生は止まらない 何もしても 何もしなくても
幸福でも 不幸でも
叫んでも 喚いても
拍手をしても コインを投げても
生きることは素晴らしいとどこかで叫ぶ主人公を 鼻で笑う主人公がいる
鼻で笑った主人公を 人生が素晴らしいものじゃないからとそうなったと憐れみを押し付ける主人公がいる
そんな どいつもこいつもあれもこれもが いずれは朽ちて ちっぽけなオペラ座のように取り壊されて消えていく
残った残骸に 怪人を見出すやつなんかいやしない
輝かしい演劇は いつだって最後は朽ち果てるんだ
偉業を成したからなんだっていうんだ 演劇が終わった後の事なんて 主人公には分かりゃあしないのに
得意顔で終わった後の事を考える馬鹿どもが どうしようもなく演劇の先を怖がる僕を笑ってた
今日も どこかで誰かが不幸に負けている
幸福の尺度を誰かに委ねて まっさらな台本を不幸と嘆いて 演劇を止めてしまった
だから僕は 演劇をしながら そんな木偶の坊な主人公にコインを投げつけてやった
演劇は終わってないぞと 一般論も 常識も 優しさも 不安も 全てかなぐり捨てて叫んだんだ
それでも演劇を止めるなら 拍手をしよう 雨に打たれて 燃え上がった後の灰に涙しよう
だけど演劇を続けるなら 僕はいつか 君と一緒に同じ舞台で演じたい
みっともないオペラ座だけど それでも良いなら まっしろな台本を手に 些細な投げコインを期待して 演劇をしよう
投げられた一枚のコインが 幸福か不幸かと 束の間の幕間で 笑いながら話し合おう
残酷な世界で
それが一番 綺麗な演劇なんだ
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