10.11.道中での情報収集
マークディナ王国は以前と同じ様に入国に時間が掛かりそうだった。
あの事件からしばらく経っていると思うが……今ここはどうなっているのだろうか?
この状況を見るに、もう騒ぎは集結しているだろうが。
さて、ここから情報を収集していかなければならない。
待っている間は暇なので、できる限りあの空間で見守ってくれているであろう者たちのために様々な事を聞いていくことにする。
「レミはリーズレナ王国付近の農村育ちであったな」
「ん? はい、そうですね」
「その辺りからローデン要塞へと辿り着くまでには、どれほどかかるだろうか」
「これは地図を購入しておいて正解だったかもしれませんね」
「む?」
魔法袋に手を突っ込んだレミは、一つ大きな羊皮紙を取り出した。
丸められていたものを広げて、それをその場にいる全員に見せるようにしてくれる。
「何処で買ったのかしら」
「先ほど商人さんが暇そうにしていたので、何か使えそうな物がないか聞いていたんですよ」
「さすがレミさん。僕と木幕さんは買い物ができませんから助かります」
レミが取り出したのは大きな地図だ。
そこには多くの国や山、地形などが記載されている。
すべて大まかなものなので正確な距離は割り出されてはいないだろうが、ないよりはましだし、これで大方の見当がつく。
起点を利かせてくれたレミを木幕は素直に褒める。
「助かるぞ、レミよ」
「どういたしまして! えっと、今いるのがここ、マークディナ王国。ここから国を経由せずにローデン要塞へ行くには普通一ヶ月半かかりますが……馬車がすぐ壊れるので国を経由します」
「次はアテーゲ領か」
「はい。あの時は災害が多く道が悪くなって時間が掛かりました。今回もどうかは分かりませんが……あの速度であれば問題はないかもしれませんね。フレアホークの力が強いので」
普通の馬では引くことができない道も、あの怪鳥であれば問題なく突破することができるだろう。
その負荷に耐えることのできる馬車がないのが何とも残念だが。
とりあえずこちらの移動は問題なさそうだ。
では、本題に入るとしよう。
「魔王軍はすべての国に宣戦布告をしたと言っていたな。その様な手法はあるのか?」
「魔法……師匠が言うところの奇術であれば可能です。魔法袋みたいな魔道具が必要になりますけどね。魔王の顔が描かれたというところを考えるに、魔王自身がその魔道具で映し出されて宣戦布告をしたのでしょう」
「……」
木幕はそれを聞いて考える。
これは恐らく文などといったものとは違う。
使い方によれば、兵士へすぐに情報を届ける事のできる武器となる。
魔道具についても調査をしなければならなさそうだ。
調べなければならないことが増えていく……。
だがこれは戦争に絶対に必要な知識である。
疎かにすれば敗北の確率が上がるだろう。
「レミよ、戦に使える魔道具について教えてくれ」
「私も兵士ではないので詳しくは知りません……。ですが通信をすることができる魔道具があると聞いています。とても高価な物なので、貴族たちしか使えないようですが」
「貴族共は出張るか?」
「さて……どうでしょう……」
「誰も己の身が可愛い……か。立ち向かわねばならぬ強敵がいるというのに」
「ま、まぁまぁ。まだ出陣しないと決まったわけではないですから、ね?」
西形の説明に確かにと頷き、沸騰しそうになっていた頭を冷やす。
これもローデン要塞へ行けば分かる話だ。
その時になれば、その場にいる兵士たちで何とかしなければならない。
「では集まることのできるよ総戦力は?」
「わ、分かりませんて……」
「ローデン要塞、ルーエン王国、ミルセル王国、ライルマイン要塞は移動時間からしても間に合う」
「確かに……。その中で一番大きな国はライルマイン要塞です。ですがローデン要塞と同じ魔王軍と戦う最前線都市なので、増援あまり期待できないかもしれないですね……」
「そうか、あの場所も襲われるやもしれんのか」
「可能性はありますね」
となればライルマイン要塞からの増援は見込まない方がいいかもしれない。
魔王軍の進行してくる場所に建てられている国が、その二つなのだ。
どちらか片方に兵を裂けば、薄くなった場所を狙って来るに違いない。
ライルマイン要塞では馬車の交換だけして、すぐにローデン要塞へと向かう方がよさそうだ。
では残りの国はどうだろうか。
「ルーエン王国は……裕福層と貧困層がくっきり分かれています。暴徒も出るようなので国の警備はそのままに、冒険者たちが出てくるかもしれませんね。後バネップ様がいますから、ここの援軍は見込んでもいいと思います」
「ミルセル王国はどうだ?」
「何とも言えないですね……。ですが国の危機です。恐らくどの国も多少は兵を出してくれるでしょう」
援軍を出してくれる国は多くあるだろうが、二ヶ月の間に到着できるのはこの三ヵ国しかない。
リーズレナ王国はその辺りが不透明だ。
ギリギリ間に合うかもしれないし、間に合わないかもしれない。
こういうのは期待しない方がよさそうだ。
大体の場所は絞れたが、国の大きさから兵がどれ程出兵できるか、というのは分からない。
国の者でも上層部の者でなければ、そういった予想を付けることは難しいだろう。
だが大ざっぱでも援軍の確認できたのは幸いだ。
この事は今、あの空間で彼らが会議をしてくれている事だろう。
「次-! 通れー!」
「っ!」
「む、今回は早いな」
「辻間さんが暴れてないから警備も簡単になったんでしょうね」
もう少し話を聞きたかったが、とりあえず入国することにしよう。
しかし周辺を見渡してみても戦争の準備をしているという風には見受けられない。
この国は兵を出そうとしていないのだろうかと、木幕は若干心配になりながら門をくぐった。
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