第4話「初めての教室」-2

「あーっ、はい、ありがとうございます」

なるほど、そういうことだったのか。

 ちょっとづつこの状況が飲み込めてきたぞ。

 つまり大山先生は、見ることができない俺に、手を取って触らせることで、俺の席を教えてくれていたのだ。

 大山先生は、俺の手をするっと離すと、元居た位置に戻っていった。

 俺はついさっきまで大山先生の手の中にあった自分の手で、改めて椅子に触ってみる。

 そしてそれをそっと引き寄せて座った。

 ついでに目の前にある机にも触ってみる。

 それらはどこの学校にもあるような、何の変哲もない、ごく普通の椅子と机だった。

「光浦さん、原田さんは盲学校が初めてなんだから、もっと優しく説明してあげてってさっきも言ったでしょう」

大山先生は少し厳少ししめな口調で光浦和希に言った。

「あー、ごめんごめん忘れてたー」

光浦和希は笑いながら言う。

(あのなあ!)

という俺の心の声と、

「はー」

と呆れたと言う風な大山先生の深いため息が重なった。

 しかし気を取り直してというように、大山先生は話始めた。

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