第3話「いざ教室へ」-5
「麗菜ちゃん、原田さんが作業室って何するところって聞いてるよ」
踊り場から再び会談を上り始めた時、大山先生が姫野さんに言った。
「…粘土のお部屋」
姫野さんは戸惑いながらもそう言った。
「粘土の部屋?」
「おーそうだ。それと作業室にはなあ、でっかーい窯があるんだぜ」
「でっかい窯?」
「あー」
姫野さんと光浦和希の説明に、俺はますます作業室がどういうところなのか分からなくなった。
「原田さん、盲学校の中学部と高等部普通科の授業には、作業学習という授業があるんです。その授業では、陶芸をやったり、クッキーやカップケーキを作ったりして、放課後や文化祭のイベントの時に販売しているんですよ」
と、大山先生が説明してくれた。
なるほど、作業室とは作業学習の授業をする時に使う部屋のことをいうんだな。
「へえ、なんかおもしろそうですねえ」
俺は本当にそう思った。
クッキーやカップケーキ作りなら、地元の中学でも家庭科の授業でやるかもしれない。
でも陶芸は、よほどのことがない限り、地元の中学ではたぶんやることはないだろう。
(俺は地元の中学に行ったやつらとは違う授業ができるのかもしれない)
そう思うと、俺はさらにこの盲学校という未知の世界に足を踏み入れることがとても楽しみになってきた。
「はい、2階に着きました。階段を上ったら、右に曲がって、スロープを降りるとすぐ目の前にある部屋が、みなさんの教室です」
大山先生の言うように、俺たちは階段を上り終えると、すぐ右に曲がった。
そして1階にもあった軽いスロープを下って、ほんの少し真っすぐ進んだ。
「はい、ここが皆さんの教室です」
俺たちがスロープを下りきると、大山先生が、ドアらしき物を軽く手で叩きながら言った。
そこからさらに少し進むと、部屋の敷居らしき物に足が触れた。
それを踏み越えたということは、俺たちは今教室の中に入ったということになるようだ。
俺たち中学部1年の教室に。
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