第2話「講堂の外で」-2
(もしかして、俺今姫野さんを怖がらせてしまったんじゃないか)
と、不安になった。
そして、ほんの2.3秒前の自分の言動を悔いた。
「タカピョン、おい、タカピョン」
そんな俺の名を、光浦和希が耳元で何度も呼んでくる。
もう何だよ、気持ち悪いなあ。
「姫ちゃんは色や光が何となく分かるぐらいしか目が見えないんだから、頷いただけじゃ分からないよ。ちゃんと大きな声で、はっきりと答えてあげないと。ねっ、姫ちゃん」
「…はい」
光浦和希の言葉に、姫野さんは確かにそう答えた。
(そうか、そういうことだったのか!)
そういえば、完全に目が見えなくなってからというもの、友達や家族と会話している時に、この人は俺の話を本当に聞いてくれているのだろうかとか、もしかして俺は今何かへんなことを言ってしまったのではないだろうかとか、不安に思うことが多々あった。
なるほど、あの時に感じていた不安の正体はこれだったのか。
確かに目が見えていた頃は、頷くなんて人からあたりまえにされていたし、自分だってそうしていた。
だけど目が見えないと、そういうことが全く分からないんだよなあ。
(ん?)
と、その時俺は疑問にぶち当たった
(姫野さんは、色や光が分かるぐらいにしか目が見えないはずなのに、なぜ講堂の入り口でこけそうになった俺に、「だいじょうぶ?」って聞くことができたんだろう?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます