第2話「講堂の外で」-1

「いいよなあ、タカピョンの前の学校の校歌、かっこよくて」

講堂内の拍手の音に交じって、光浦和希がそう呟く声が聞こえた。

(おい、何で知ってるんだよ?見られていないだろうと思っていたのに…。もしかして、こいつは目が見えているのか?)

予想外の出来事に、少し動揺したのか、講堂の入り口の手前まできた時、危うく外と入り口の間のわずかな段差につまずきそうになった。

(おーっと危ねえ)

焦りと恥ずかしさがこみ上げてきた時だった。

「だいじょうぶ?」

少し後ろの方で、俺に言っているのだと思われる、女子生徒の優しい声が聞こえてきた。

 それはさっき校歌斉唱の時に聞いた、あの声とよく似ていた。

 きっとその彼女で間違いないだろう。

 『姫ちゃん』こと姫野麗菜だ。

 俺はうんと首を振って頷いた。

「ねえ、だいじょうぶ?」

姫野さんは再び聞いてきた。

 俺も再び頷いた。

 よほど心配なのだろうか。

「ねえ、だいじょうぶ?」

姫野さんは、また同じことを聞いてきた。

(何でそんなに同じことを何回も聞いてくるんだ?いくらなんでも心配しすぎじゃないか?)

俺は姫野さんの言動を、少し怪訝に思った。

「あー」

俺は心配性らしいクラスメートへの戸惑いと、それによるわずかな苛立ちとが入り混じった声で答えた。

「…」

そんな俺の声に、姫野さんが怯んだのが、何となく雰囲気で分かった。

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