第1話「入学式」-11
(あの子、良い声だなあ)
校歌を歌う女子生徒の、たんたんとしているけれど、それでもどこかのびやかな歌声に、俺は光る物を感じた。
彼女の声は、聞いていて心地良いというか、癒されるというか…。
安っぽい言い方になってしまうかもしれないが、とにかくその女子生徒の歌声は、本当に綺麗だった。
(ん?もしかして、あの声は…)
さっき講堂に入る前に、光浦和希が、「姫ちゃん」と呼んでいた女子生徒に違いないと、彼女の歌声が聞こえてくる位置と方向から、俺は直観的にそう察知した。
そうこうしているうちに、校歌斉唱は終わった。
「着席」
そう指示する司会者の声に、俺たちは再びすぐ後ろのパイプ椅いすに座った。
「新入生、退場」
(やれやれ、今座ったばかりなのに、また立たなきゃいけないのかよー)
そう思いながらも、俺たちは再び席から立ち上がった。
そして、入ってきた時と同じように、俺は光浦和希の肩を掴んだ。
「姫ちゃん、行くよ」
こちらもやはりさきほど入ってきた時と同じように、光浦和希が、小声で姫野さんに言うのが聞こえた。
会場内の拍手の音を背に、俺たち新入生は、ゆっくりと講堂の入り口に向けて歩き出した。
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