第1話「入学式」-7
「ねえ、何でこの曲なんだろうね」
その拍手の音に交じって、光浦和希が、俺に耳打ちしてくる。
「知らねえよ。てか俺が聞きてえよ、そんなこと」
とうとう俺は、声に出して言ってしまっていた。
「あー、そっかー」
と、何かを思いついたように、光浦和希は言う。
「青雲のアオと、葵ガ丘のアオをかけているんだね」
司会者の進行の声と、光浦和希がひそひそという声が、見事に重なった。
(ん?それどういうことだ?)
俺は考えた。
そしてはっと気がついた。
「なるほど、そういうことか」
青雲のアオと、葵ガ丘盲学校のアオ…!
学校長、やるじゃないか。
盲学校への愛を、ひしひしと感じるぜ。
と、この学校と、学校長に対する信頼感をようやく得られたところで、入学式では学部主任や、各クラスの担任紹介が始まっていた。
「な?タカピョンも分かっただろ?」
小声ではあったが、光浦和希は得意そうに言う。
「おまえ、頭いいなあ」
俺も光浦和希に耳打ちし返してやる。
「えへへ?タカピョンに褒められた」
光浦和希の声からは、嬉しそうに笑っている様子が感じ取れる。
盲学校という、初めての場所での半端ない緊張で、もうがちがちだった俺は、この時ようやく少しほっとできたような気がした。
だがしかし、俺にはまだ一つ引っかかることがある。
「おい、そのタカピョンって呼び方やめろよ」
俺が光浦和希にそう突っ込んだ、その時だった。
「君たち、静かにしなさい」
幼稚部の担任だという、若そうな女性教師のかわいらしい声に重なって、男性教師の厳しい声が、俺たちに向けられた。
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