第1話「入学式」-5

 「新入生の皆様、本日はご入学まことにおめでとうございます」

声を聞く限り、たぶん50代後半だろうと思われる男の人が、そう挨拶を始めた。

 それからしばらくの間、学校長の話にありがちな、ありがたくもつまらない言葉が続いていったのだが…!

「それではここで、皆様のご入学を記念いたしまして、オカリナの演奏を一つ披露したいと思います」

と、学校長は、突然言い出したのだ。

(え?オカリナの演奏って…。おい、これ入学式だよなあ?学校長が、入学式の最中にそんなことしていいのかよ)

戸惑う俺に反して、周りの人たちは、ざわつくこともなく、しんと静かに座っている様子だった。

 まるで学校長が、入学式の挨拶でオカリナを吹くなんて、当然のことではないかと言わんばかりに。

 それから間もなくして、甲高くて澄んだ笛の音が聞こえてきた。

 そうこの音、オカリナで間違いないだろう。

 静まり返った空気に響き渡るオカリナの音色。

 とてもきれいだ。

 だが俺は「ん?」と思った。

(この曲、どっかで聞いたことある!)

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