第1話「入学式」-4

 と、俺がそんなことを思っていると、来賓の挨拶が始まった。

 教育委員会会長やら、親の会会長やら、何ともお堅い名前の役職を持った人たちが、次次に立ち上がっては一言二言と挨拶していく。

 この人たちのことなど、俺は当然知るよしもない。

 そんな人たちから、入学を喜ばれたり、祝われたりされてもなあ。

 そんなことを考えながら、彼らの挨拶を、ぼーっと聞いていた時だった。

「なあ、あの親の会の渡辺会長、志村けんに声似てねえか?アイーンって言わせたら、絶対似てると思う」

俺の左隣で、光浦和希がひそひそと喋る声が聞こえた。

(おい、いきなり何を言い出すんだこいつは!)

怪訝に思っている俺に向かって、光浦和希はさらにこう言ってきた。

「なっ?なっ?タカピョンもそう思うだろ?」

(た、タカピョン?!)

肩を小突かれながら、小声で話しかけてくる光浦和希に、俺は叫びたいのを堪えるのがやっとだった。

(タカピョン!?タカピョンって…。そりゃないだろう)

そんな呼ばれ方をされたのは、もちろん生まれて初めてである。

 そうこうしているうちに、学校長の挨拶が始まった。

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