第1話「入学式」-3

 「中学部、以上3名」

俺たちを呼んだ男性教師が、無機質な声でそう告げた時、俺は思った。

(中学部の新入生ってこれだけなのか?たった3人だけ?!すくなっ!)

盲学校は、生徒数がとても少ないという話は何となく聞かされてはいた。

 でもまさかたった3人だけとは思わなかった。

 予想外の現実に、俺は戸惑った。

「着席」

先生の指示通りに、俺は真後ろのパイプいすに座った。

 中学部の同級生が、俺を含めてたった3人しか居ないという事実をかみしめながら。


 しかし、驚愕すべき事態は他にもあった。

「高等部普通科、中村あずさ」

こんどは少し低めの女性教師の声が、女子生徒の名前を呼んだ。

「はい」

と、やはり女子生徒の声が返事をした。

「高等部普通科、以上1名」

(えーっ?1名って…!まじかよ。そんなことってあるのかよ)

女性教師の一言に、俺は本当に驚愕した。

 これがもし一般の学校なら、クラスが一人だけなんて、きっとありえないことだろう。

 ということは、この女子生徒は、3年間の高校生活を、たった一人で過ごさなければならないのだ。

 俺だったらそんなこと、絶対無理だと思う。

(よかったー、俺にはまだ同級生が二人も居る。一人よりかはまだましだ)

中村さんには大変申し訳ないが、俺は今さっき自分に突き付けられたばかりの予想外の現実に、ほんの少し優越感を覚えていた。


 それに引き換え、高等部専攻科には、新入生が7人も居た。

 そしてこれは今気づいたことなのだが、幼稚部と小学部には、新入生が誰も居なかった。

 幼稚部と小学部は0人、中学部に3人、普通科は一人、そして専攻科には7人。

 盲学校は、人数が少ないところとは言え、この格差はいったい何なんだ?!

 恐るべし盲学校の縮図。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る