第228話 『その日、急成長していた』
『精霊王スピカの抜け殻』を貴重品用のマジックバッグへと収納し、『精霊の清水』を汲ませてもらう。
あ、そうだ。
「スピカー、ここの清水だけど、あなたの力でもっとパワーアップさせる事は出来る?」
「うん、いいよー!」
スピカは指先を突き立てると、一瞬の内に清水に含まれた魔力量が跳ね上がった。視覚的にはなんにも変化はないけれど、『魔力視』で見ればその濃度の違いは明らかだった。
改めて、清水を汲んでみる。
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名前:精霊王の浄水
説明:精霊王の力が込められた至上の液体。底知れぬエネルギーに満ち溢れており、植物が浴びればたちまち急成長し、実を成すほど。人が飲めば一時的に魔力の総量が上昇する秘薬となるが、飲み過ぎると重度の『魔力酔い』になる。
効果:24時間の間、魔力の総量が1.5倍。自然回復量2倍。
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「わぁお」
「効果えっぐ……」
「エルフの国が戦争吹っかけられる理由作っちゃったかも」
「お口にチャックね」
「シルヴァちゃんにはあとで謝っとこ」
この浄水の何が危険かって、効果もそうだが、この水は『スピカの力が尽きるまで無限に湧き出る』というものだ。力を失っても、またスピカが触れてしまえば良い。
うーん、こりゃまたとんでもないなぁ。事情を理解できてないアリシアに説明してあげる。
「スピカ様、すごいですね」
「えっへん!」
どうしようか考えてたけど、胸を張るスピカを見てたらどうでも良くなって来た。
「まあいっか!」
「アンタって奴は……」
「それじゃスピカ、次にこの空間だけど、精霊達が自由に入れる様にしてくれる?」
「わかった! んー……出来たよ!」
スピカが指を振るうと、今いる場所を中心として彼女の力が
そして、結界が音を立てて割れた。
『ガシャーン!』
そしてしばらくすると、『精霊の森』に蔓延っていた寂寥感は消えてなくなり、『精霊の森』入り口から、賑やかな感情が流れ始めた。
どうやら、あの子達が来てくれたみたいね。
「ふふ、ちゃんと遊びに来てくれたみたいね。けど、変ね。入り口から動いてる気配がしないわ」
「そりゃそうでしょ。ここの新たな主人に挨拶もなしに、自由に飛び回れるほど、精霊は無節操じゃないわ」
「あ、そうなの!? じゃあ、あんまり待たせるのは悪いから、早くあの子達のところに行こう」
そう言って前のめりになる私の腕を、ミーシャが掴む。
「ん?」
「それは、遠回りして? それとも、直進して?」
「あ……」
忘れていたことを思い出し、二の足を踏んでいると、ミーシャが手を握ってくれた。
そして事情を説明していないけれど、なんとなく私の不安を察してくれたのか、アリシアも反対側の手を握ってくれる。
そしてスピカは、いつもの様に頭に乗っかってきた。……今のスピカは、人間とほとんど同じ見た目だ。不思議と重さは感じないけど、重量があるわね。
「ん。まっすぐ行く」
「わかったわ」
「どこまでもお傍に」
「いこー!」
スピカが楽し気に音頭を取るが、手乗りサイズの時と同じ調子じゃ困るわね。
「あー、スピカ。サイズ、変えられる?」
「できるよー」
「なら、その頭に乗るのは、小型の時だけにしなさい。そのサイズで乗られると変な感じがするから」
「はあい」
そうしてスピカはしゅるしゅると体積を小さくし、いつもの手乗りサイズへと変身した。けど、戻ったのは姿形だけで、内包された力は数十倍、下手するとそれ以上に膨れ上がっていた。
小さくなると余計に、どれだけパワーアップしたかわかりやすいわねー。
うーん、精霊王かぁ。まだレベルは半端なところだけど、今のこの状態でも神獣の本体に匹敵しそうな力を感じるわね。レベルがカンストしたらどうなるかしら。
そもそも、今の時点でシラユキちゃんよりも強いのでは?
「ねえスピカ」
「なにー?」
「貴女の力、私より強くなってない?」
その言葉に、ミーシャがぎょっとする。
でも、アリシアとスピカはきょとんとしていた。
「ん-? 違うよー。スピカの力も、シラユキにあげてるから、シラユキの方が強いよー」
「そうなの?」
「シラユキ、気付いてないの? スピカが精霊王になった瞬間、あんたから感じる強さも跳ね上がってるわよ」
「えぇ? そ、そうなの?」
「はい。お嬢様から放たれる輝きが、さらに増しております」
「えぇー!?」
言われてみれば、シラユキちゃんの光、強くなってる気がする……!
気付いてないのは、私だけだったって事?
とりあえず違いを確認するためにも、以前アリシアに見せた、レベル20になった時の紙を取り出した。
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総戦闘力:32448(7000 +3504)
STR:3537(+407)
DEX:3537(+407)
VIT:4667(+1000 +537)
AGI:3537(+407)
INT:3537(+407)
MND:5914(+3000 +669)
CHR:5919(+3000 +670)
称号:求道者+、悪食を屠りし者
装備:『夜桜』
*********
「これは戦争に行く直前のデータね」
「うん、見せて貰ったやつね」
「それじゃ、『ステータスチェック』」
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総戦闘力:56640(+15600 +8356 +6520)
STR:5063(+747 +583)
DEX:5063(+747 +583)
VIT:6690(+1200 +987 +770)
AGI:5063(+747 +583)
INT:5063(+747 +583)
MND:14839(+7200 +2189 +1708)
CHR:14859(+7200 +2192 +1710)
称号:求道者++、精霊王の主人、悪食を屠りし者、壊神を従えし者
装備:『夜桜』
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「ほ、ほわ??」
あまりの変化に、慌てて称号を全てタップした。
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称号:求道者++
真理を求めて日々精進を励むものに贈られる証。
人々からの祈りと希望と畏れを受け、女神の資格を得た。
該当のステータスに現在Lv×300の補正値。
神聖魔法に類する親和性上昇。
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**********
称号:精霊王の主人
精霊王から絶対的な信頼を得たものに贈られる証。
全ステータス20%上昇。
精霊魔法に類する親和性上昇。
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称号:悪食を屠りし者
悪食の怪物、ピシャーチャを撃滅せしめし勇者に贈られる証。
該当のステータスに現在Lv×50の補正値。
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称号:壊神を従えし者
壊神イフリートと契約を果たしたものに贈られる証。
炎魔法の威力10%上昇。
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「……」
あまりの効果とその力に、言葉を失った。
「どうだった?」
「……シラユキちゃん、ラスボス説」
今現在のステータスを紙に記す。
「……なにこの化け物」
「ミーシャ様!?」
ミーシャが呟いた言葉に、アリシアは睨むように怒ってくれる。
「あ、いいのいいの。私も実感してるところだから」
「お嬢様……」
アリシアが悲しげな顔で、手をぎゅっと握ってくれる。うん、それだけで私は幸せになれる。
女神だとか神格だとか、小難しい事はさておいて。
私が強くなるって事は、それだけ小雪を作る為の条件が整っていくという事だ。まあ、小雪の言う通り、このステータスで更にレベルアップしようものなら、その都度ぶっ倒れちゃうかもしれないけど……。
うん、着実に歩みを進めていこう。
『ま、大丈夫でしょ。ほとんどMNDとCHRだもん』
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