第214話 『その日、堕天神獣と戦った』

「今のは合図、でしょうか」


 天幕の外。夕暮れ空に浮かび上がる漆黒の波動を見上げていると、憧れの先輩は否とした。


「いいえ、恐らくあれは魔人の攻撃でしょう。お嬢様が先手を取られるとは思えませんし、分かった上で敢えて煽ったのでは無いでしょうか。お嬢様曰く、魔人は煽り耐性が無いらしいですし」

「圧倒的な力を持つ種族の様ですから、それに準じてプライドも高そうですね」


 しばらく中央拠点付近を見ていると、今度は純白に輝く球体が現れた。あれはきっと、シラユキ様が抑えていた輝きを解き放ったのでしょう。

 シラユキ様が王国を離れ、第一の国を訪れてから徐々に現れた光の波動。あの光はシラユキ様にこそ相応しく、シラユキ様であればこそ輝いていても不自然では無い物でした。


 当の本人が一番困惑していらっしゃいましたが、シラユキ様でも存じ上げないこともあるのですね。

 ……しかし。


「……」

「ツヴァイ、何か不安ごとでもありましたか?」

「あ、申し訳ありません。私がこの様な事を考えることなど、烏滸がましいことでした。お忘れ下さい」

「お嬢様のことでしょう、言ってごらんなさい」

「……は。シラユキ様は、人を殺める事に抵抗はないのでしょうか。今まで一度も殺した事は無いと仰っていたのに、あんなに無造作に片付けていく姿に、その」

「不安を覚えたのですね。その内爆発して泣いてしまわれないかと」

「はい」


 シラユキ様は武術も魔法も、共に世界最高峰の腕前を持っているほどに強い。けれど、心はとても弱く、脆いお方だ。

 そしてそれは、あの方と関わりを持つ者であれば、誰もが知っている事。そんなシラユキ様が、戦争とはいえ人を殺めてしまって、心を痛めてしまわないか、我々ナンバーズも、ミカエラ様も心配していたのだ。


 けれど……。


「アリシア様は心配ではないのですか?」

「勿論心配ではあります。お嬢様がもしこの戦いで心を痛めてしまう様なら、すぐにでも戦場から離れてもらいます。戦いは何も前に出ることが全てではありません。後方支援でも、お嬢様なら十分同胞達の力になれるでしょう。お嬢様の症状が重篤であれば、最悪、この国から離れる事も視野に入れています」

「なら、なぜアリシア様は平気そうなのですか?」

「それはお嬢様から、この戦いでの心構えを、事前にお伺いしているからです」


 アリシア様が微笑むと同時に、閃光が空を埋め尽くす。

 どうやらシラユキ様が戦いを始めたらしい。


「お嬢様曰く、この世界には人の姿を模写する魔物がいる様です。そして恐ろしい事に、その魔物は分裂する事もあるらしく、本体であればまだしも分裂した相手の場合、いくら倒しても経験値は入らない様なのです。あの時はただひたすらに面倒だったと」

「ふむ……?」

「そしてこの戦いも、同じ物だと仰っておりました。お嬢様はレベルを上げる事に貪欲です。なのに目の前には、避けられない戦いと、経験値の入らない有象無象のゴミ達。相手が経験値が手に入るかどうかでしか考えていないのです。その考え方は、どう見てもアレらを人間として扱ってはいないでしょう?」


 つまりシラユキ様にとって帝国兵は、糧になるかならないかで見ていると。確かに、帝国兵にも家族がいるなどと、あれこれ余計な事を考えるより、経験値の入らない厄介な害獣と捉える。

 その方が、ずっと良いのかもしれません。


「それでもお辛いと感じる様なら、その時改めて手を差し伸べれば良いのです。……納得できた様ですね。さあ、同胞達! 準備は出来ていますね? 連中は中心部の騒ぎに浮き足立っています。武器を取り、奴らを突破して森へ帰りましょう!」

『はい!』


 アリシア様、そして救出した捕虜の方々と一緒に天幕を飛び出し、混乱する帝国軍陣地を突破して行った。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「ん?」


 魔人をマップを見ながら追いかけていると、その方角がエルフの王国であることが見て分かった。もしかしてエルフの集団に攻撃を仕掛け、私の足止めのために怪我人や混乱する場を作り出す腹づもりなのかと思い、ちょっと無茶をして速度を上げた所だった。

 けど、エルフ王国の軍勢はまだこちらの戦場にまでは辿り着けていない様子で、シラユキちゃんの超膨大広域マップにも、味方の光点は現れていなかった。


 だと言うのに……。


「新手ですって?」


 急に立ち止まったかと思えば、突然その場に新たな赤点が複数発生した。まるでその場に認識されていなかった存在が、急に現出したかの様な……。


「マップからも隠れる高度な隠蔽技術を持つ相手……。そんなのが相手に加わったとなれば……んふっ」


 経験値がとってもおいしい事になるじゃないの。

 無関係のエルフの子達が巻き込まれる事に比べれば、新手の出現には魔人グッジョブと言わざるを得ないわ。さっきの指揮官でレベルが上がったことだし、気分は高揚しっぱなしだ。楽しくて仕方がない。


 少し速度を落としてからマップを見ていると、魔人と思しき光点は直角に折れ、森の中へと飛び込んでいった。本来ならこいつを追うべきなんでしょうけど、せっかくご馳走を用意してくれたんだもの。残さず食べておかなきゃ。

 お礼に、貴方は最後に取っておいてあげる。


 現出した3つの赤い点は、ゆっくりとだが此方へと真っ直ぐに進んできた。ここで出してくる様な配下となれば、先程の『デュラハンナイト』より格上か、もしくは搦手が得意なタイプ。

 油断はできない以上、こちらも臨戦態勢は整えておいた方が良さそう。


「となると、ようやくこの子の出番かしら」


 マジックバッグから取り出したのは、桜の花弁が舞い散る様が描かれた、漆黒の鞘。刀身を抜き放つと、薄暗い森に美しい波紋が浮かび上がった。


********

名前:夜桜

説明:暗黒竜の牙をベースに作られた妖刀。斬った相手の血を啜り、魔力を喰らう。条件を満たさぬ者が触れれば、たちまち喰らい尽くされると云われている。

装備可能職業:侍・侍大将・勇者・魔王・グランドマスター

必要ステータス:総戦闘力8000以上

攻撃力:1980

武器ランク:20

効果:全ステータス+13%。特殊効果:攻撃時、相手の魔力にもダメージ。技後硬直減少。特殊技能『夜ノ太刀』使用可能

製作者:シラユキ

付与:斬撃強化・魔力強化・耐久強化

********


「急いで作り上げたから、性能を十全に引き出しきれてはいないけど、それでも実体をもったこの刀の前に、斬れないものは無いはずよ」


 夜桜を振り回して風を切っていると、眼前に3体の相手が現れた。

 1人は完全に人型……のはずだけれど、漆黒のローブを身に付けフードのせいか顔の全貌が見えない。それだけでなく、フードの内側からは暗い靄が溢れていて、内部がどうなっているか見えやしないわ。プレイヤーの鑑定スキルは……。


**********

名前:?&;@?¥-

レベル:@?}

説明:―――

**********


 弾かれはしないけど、見れないわね。

 この世界に落ちてきた事で、この辺りのシステムに異常でもきたしたのかしら? まあコレが何でアレ、風貌からして幽鬼レブナントね。

 ゴーストとかの実体を持たない霊体系の魔物の中では最上位に位置する存在で、厄介なのは人間の姿と能力を真似する所。それもプレイヤーの姿だったりNPCの姿だったりと、相手をするのを躊躇わせる事に長けている。

 しかも厄介な所はそれだけじゃなく、職業やスキル、それからレベルまで完璧に模倣してくる。

 模倣する相手によって強さはピンキリになるとはいえ、強い職業のキャラを真似されたら、ひたすらに面倒だった記憶がある。


 こいつらが真似をする対象は、基本的に敵対者の近縁者であることが多い。まあ、元は霊体のはずだし、記憶とか盗み見てるんじゃ無いかしら。


「ギュウ」

「ミャオ」


 そして連れているのは2体の堕天神獣。

 魔人の力をその身に流し込まれ、突然変異した神獣だったモノね。これが生まれる経緯はよく分かってないのよね。ゲームでは、レヴナントも堕天神獣も、私が死ぬ直前に追加された魔物だったし、情報があんまり無いのよね。

 そして堕天神獣の種類はカーバンクルとケットシーか。となれば、このレヴナントは『召喚士』を真似てるのかしら?


 私を真似することは出来ず、手頃で手近い強者として、今日活躍していたと言う噂の子でもコピーしたかな? 本人は今頃お城のベッドで休んでるはずだしね。

 とりあえず、倒す前に顔でも拝んであげましょう。


「まずはそのフード、引っぺがしてあげるわ」


 刀身をレヴナントへと向けると、相手は緩慢な動きで片手を上げ、スキル名を宣言した。


「『オーバーフロー』『顕現:世界の理』『顕現:微睡の君主』」

「はっ?」


 レヴナントが使用した技に驚愕し、硬直していると、2体の堕天神獣の存在が膨れ上がる。体躯だけではなく、内包する魔力そのものも。


「ギュウウ!!」

「ミャオオ!!」

「初手から必殺技とか、聞いてないわよ!?」


 大技には大技でもって返さなければ。私は今、この世界に来て初めて、


 遊びを止め、笑みを消してすぐさま刀を引き戻す。

 そして夜桜を八相で構えた。


 この型なら、敵の大技にもある程度対応が出来るだろう。


 『オーバーフロー』は『召喚士』レベル80から使用可能な奥の手だ。全魔力を消費して、呼び出している召喚獣の真の姿を顕現させる。

 カーバンクルは黒い小動物から漆黒の輝きへと変貌し、身体の属性を、物質体からアストラル体へと変貌させた。この姿になれば、物理攻撃がほとんど通じない。

 ケットシーは黒猫から悪魔へと姿を変えた。この姿のケットシーは、逆に魔法攻撃がほとんど通じなくなる。


 こんな厄介な姿になった堕天神獣2体を放置して、術者とバトルする余裕はない。


 術者は後。

 まずは堕天神獣を削る。死力を尽くして。


「『プロテクション』『マジックシールド』『デバフアーマー』『痛覚遮断』『覇気』『無双の構え』『予知』『一点集中』」


 『痛覚遮断』は『バトルマスター』のスキルで、痛みを半減するスキル。『予知』と『一点集中』は回避と命中に高い補正をかける『巫女』と『武闘家』のスキル。

 予備動作無しで即座に発動出来、尚且つデメリットのないバフを一通り掛けたところで、こちらから攻める前にレヴナントがスキルを行使した。


「『落日の極星』『終焉の宴』」


 一瞬空が光ったと思えば、すぐさま世界は漆黒に沈んだ。

 周りの木々も、敵の姿も、自分の身体でさえ。周囲の全てが黒く塗りつぶされ、音すらなくなる。

 想定していた中で最悪の組み合わせに内心舌打ちをしながらも、一瞬見えた輝きに向き直り、力を溜める。


「っ……!」


 五感を失った中、足元からズキリとした痛みが走る。それも1度ではない、何かに感覚だ。

 痛みに叫びたい感情と、ナニカが足元から這い上がって来る不快感を無視して、魔法と技を同時発動する。


「『セイントオーラ』! 『断界流、壱之太刀・破天』!!」


 纏う光は瞬間的に膨れ上がり、肩まで飲み込もうとしていた漆黒の闇を払い退けた。そして自由になった身体で放った全力の『破天』は、深淵の闇の先へと飛んで行く。

 私の視界には映ることは無かったが、放った技は高エネルギーの塊にぶつかったのだろう。

 鼓膜を揺さぶる爆発音と共に、暗闇を晴らすほどの閃光と衝撃が、私を襲った。


「ぐっ! ……っつァ~」


『状態異常『気絶』レジスト失敗。魔法効果により無効化されました。デバフアーマーは効果を失いました』


 踏ん張ろうと脚に力を込めるも、気絶しそうなほどの激痛が走る。咄嗟に夜桜を地面に突き刺すことで転倒を回避したが、それだけだ。見れば、闇に飲まれていたシラユキちゃんの眩い脚部は、無惨にも血まみれとなり、腹部や腕も裂傷が酷い。

 これでは、満足に立ち上がる事すら叶わない。


 うわ、ぐろい……。

 ていうか、半減してても痛いものは痛い。


 『痛覚遮断』の効果と、『デバフアーマー』。あとはアドレナリンのお陰で意識は保てたけど、ここまでの大怪我はこの身体になって初めてだ。


「ゲホッ」


 口から血を吐くが、この行為すら痛みでどうにかなりそうだった。

 服もスカートもボロボロで、特に酷い脚は、噴き出る血の中に白いものが見えている。

 アリシアが見たら卒倒するレベルで肉が抉れているわね。HPも5割は削られているし、今もなお減り続けている。


 回復に意識を割きたい所だけど、相手は強敵。なるべく無視はできない。

 隙を伺う様に相手の術者を見れば、レヴナントは仰向けに倒れていた。


「ん?」


 あー……。初手『オーバーフロー』すれば、そうなるか……。

 口に出すのも億劫だったので、目の前の状況を再確認する。


 どうやら全部の魔力を使った事で、衝撃に耐えうる魔力すら残っていなかったのだろう。本来召喚士の大技は、誰かの庇護の元でこそ真価の発揮出来るモノだ。

 ソロで考えなしにぶっぱするなんて、まさに考え無しの魔物がやりそうなこと。


「ギュウウ!」

「ミャオオ!」


 けど、堕天神獣は健在と。

 ま、神獣自体にも魔力が備わってるから、たとえ術者が倒れてもコッチは顕現したまんまなのよね。こっちが使う分には便利だけど、敵に回ると厄介だわ、ほんと。


 でも術者がまともに動けない状態だからこそ、堕天神獣は。だから、余力があるのに吠えるだけで攻撃をしてこれないのだ。


 これはチャンスと思い、視線はそのままに意識を全身の怪我に回す。色々と悲惨だけど、傷を認識しないと正確な回復は出来ない。


「『セイントヒール』」


 『ハイリカバリー』の更に上位。『聖女』専用の回復魔法を使用し、極光がシラユキちゃんの脚を癒す。光が消えたそこには、元のカワイくてつるつるすべすべの、最高の肌が現れた。喪った血液すら復活させる魔法により、霞んでいた視界も元通り。

 芸術的なまでに美しいこの身体を、思わずチラ見どころか見惚れてガン見しそうになったけど、なんとか耐える。今は命の危険がある戦闘中なのだ。しっかりしなきゃ!


 そうして苦渋の決断をしながら前を向き直すと、ふらふらと起き上がり始めたレヴナントの姿があった。起き上がる際、重力には逆らえなかったのか、フードがずるりと落ちた。


「……え」


 その中に隠れていた風貌に、目を奪われた。

 金の髪に、ローブからはだけた緑の服は、エルフの物に違いない。けれど、その顔は……。


「え……、うそ。うそよ」


 思わず、『夜桜』を手放しそうになってしまう。

 咄嗟に掴みなおし、バランスを崩したところに攻撃指示が聞こえた。


「『コズミックレイヴ』『ファントムゲート』」

「……なんで、なんでよ! 『ダークエンチャント』『デバフアーマー』!!」


 どうやら相手は考える時間を与えてくれない様だった。

 私を囲む様にして四方に髑髏模様の門が現れ、中から様々な状態異常を誘発する瘴気が漏れ出す。

 そしてカーバンクルは、光の筋を残しながら上空へと飛び上がり、何度も体当たりをしてくる。


『ギュン!』

『ガィンッ!』

『状態異常『恐怖』レジスト』


 私は夜桜に、カーバンクルの弱点である暗黒属性の力を纏わせ、迫りくる流星を何度も弾き飛ばす。アストラル体とは言え対象はカーバンクル。武器の追加効果で、攻撃対象の魔力を激突と共に削っていく。


『ガィンッ!』

『状態異常『絶望』レジスト』

『状態異常『眩暈』レジスト』


 普通なら状態異常を誘発させるフィールド展開魔法に、上空から何度も突撃を仕掛けられるコンボは、最悪の組み合わせだけど、残念だったわね。シラユキちゃんはね、直接的な痛みの伴わない状態異常には滅法強いのよ!


『ガィンッ!』

『状態異常『激毒』レジスト』

『状態異常『憔悴』レジスト』


 だから、カーバンクルの動きにだけ気を付けていれば、相手の顔を見てじっくりと思考と観察に専念することが出来た。

 『コズミックレイヴ』も『ファントムゲート』も、魔力が尽きるまで永久に展開されるスキルだから、耐えるだけなのは救いね。


 それにしても……。


「あの顔はどう考えても、ミーシャ……よね?」


『状態異常『麻痺』レジスト失敗。魔法効果により無効化されました。デバフアーマーは効果を失いました』


「ぐっ。『デバフアーマー』!!」


『状態異常『絶望』レジスト』


「ふぅ」


 危ない危ない。さっきの大魔法から察するに、このレヴナントのレベルは100確定。私のステータスをもってしても、レジストの壁を越えてくるほどの能力値。ただの100ではないわね。

 そんなレヴナントが、なぜこんなところに……?


 それに、ミーシャが一番得意としていた職業も、『召喚士』だったはず。彼女は……というか、全ての職業はまだしも、全てのスキルをカンストまで育て上げているプレイヤーは珍しかったこともあり、基本的にはどれか1つの職業に専念する子がほとんどだった。

 あの子も、そんなプレイヤーの1人で、ペット系の職業が大好きだった。


 考えれば考えるほど、がミーシャに見えて仕方がない。けど、どれだけ考えたってありえないもの。


 あの子は、私のように誰かから恨みを買ったり、それが原因で大人しく殺されるような子なんかじゃない。だから彼女が、この世界にいるわけがないもの……。


「ギュウ……」

「ミャオ……」


 気付けば光の筋も闇の門も消え去り、堕天神獣の2匹は地面に倒れ込み、元の姿へと戻っていた。

 ゲームなら力尽きて消えていったはずなんだけど、ココではのね。


 まあ、魔力を回復するには時間をかける必要があるから、今は放っておきましょうか。


「「……」」


 大事な親友の姿を模した相手に、夜桜を向ける。

 その子は、虚な目でこちらを見つめ返していた。


 私は……。偽物とは言え、彼女を手に掛ける事が出来るのだろうか?


「ミーシャ……」

「……」


 コレは魔物だ。その証拠に、黒いモヤは先程から変わらず顔の周りを漂っていて、首から下はよく見えない。

 だから、倒さなければならない。


 私でなければ、コレを止められる者はいない。

 ここで倒さなければ、一体どれだけの人が犠牲になるのか。もしも大切な人が傷つけられたら、私は正気ではいられない。

 そして何よりも、ミーシャの姿をしたコレの手を、血に染めるわけにはいかない。


「ごめん。ごめんね……」


 覚悟を決め、震える手を振り上げる。


「さよなら……」


 静寂を切り裂く叫びが私を貫いた。


『魔人め、絶対に許さないわ!』

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