第075話 『その日、爆弾を見つけた』
「ふふふ、お嬢様……ハッ」
……部屋を見渡すもお嬢様は、居ない。目の前には眠り続けるお母様とリリの姿がありました。
ゆ、夢でしたか……。
お嬢様が居ない夜は少し寂しさを覚えてしまいましたが、まさか夢に見るほどだとは……。
お嬢様のいない朝というのは不思議な感覚ですね。朝のお仕事は、初めはお嬢様の命令という形でしたが、あれは私としても至福の時間でした。ですからそれが無い朝というのは、なんだかスッキリしません。
お嬢様はどう思われている事でしょう……。
朝の日課が無い事にモヤモヤしながら支度を始めていると、お母様やリリが起き始めました。
お母様は昨日とは打って変わって、気を持ち直したようでした。
しかし、お嬢様が居ない辛さを味わっているようで、お母様も少し寂しそうですし、リリは寝惚けながらお嬢様を探しておりました。ううん、皆、たった1日でお嬢様欠乏症のようです。
リリやお母様は学園が始まれば、週に何度かしかお嬢様とは会えなくなってしまいます。
たかが半日お嬢様にお会い出来ないだけで、私も夢に見てしまっていますし、慣れてしまえと言うのも酷でしょう。むむ、どうにか学園でも、お嬢様と気軽に会える時間を設けてあげなければ。
2人が可哀想ですね。
ただ私は、未来永劫離れる心配はありません。そこはお嬢様専属メイドの特権ということで。
それからグラッツマン子爵と共に朝食をいただき、今日の予定と昨日の成果を改めて伝える。1日で大半の問題が解決したことに子爵は感動されておりましたが、お嬢様でしたら数刻も掛からず全てを解決してみせたでしょう。
まだまだ精進せねばなりません。
また、薬の調合も頼まれましたが、素材の良し悪しで結果が決まるため、正しい採取方法でなければ私の腕では高品質が精々であることを伝えておく。
子爵はそれでもお願いしたいとのことでしたので、受けておくことにしました。
素材は冒険者ギルドにあるみたいですので、時間のある時に寄ることにしましょう。
その後、お母様とリリは教会の神官様達のお手伝いに。どうやら軽症で家に籠っている人達の治療に向かうようです。
私は井戸の『浄化』作業へ。
お母様とリリとは、昼前に一度合流する約束です。
それはもちろん、諸悪の根源の可能性がある赤い縁の連中を確認をするためです。それまでに問題の井戸に関して、区切りの良い所まで終わらせてしまいましょう。
「アリシア様、汚染された井戸はこちらになります」
「案内ありがとうございます」
「構いません、本来であればこの仕事は私の使命でしたのに、手伝わせてしまって申し訳ない限りです……」
そう謝るのは、昨日仲良くなり、お嬢様の素晴らしさに感動したイングリット様。
ついさきほど、昨日の疲れが残っていた彼女に、覚えたての『ハイリカバリー』を使用して見ました。そこでようやく『ハイリカバリー』の秘められた力に気が付きました。この魔法、『リカバリー』とは根本から異なる効果のようです。
使用して初めて分かったことですが、『ハイリカバリー』の効果は、その治療速度が『リカバリー』よりも高い事もそうですが、明確に、対象をどう治療すれば効果的か、
あとはスキルと魔法の後押しで、その道程をなぞるだけ。
そうしてあっさりとイングリット様は体調を取り戻したのです。
この魔法は非常に便利で使い勝手が良さそうですね。お嬢様が初見でお母様を治療するのに選ぶ理由もわかります。
実を言うと彼女は、この街の教会に在籍する『神官』ではありません。
実力と実績のある『神官』は王都の教会から各街を慰安し、癒しの力を施して回ることを使命とする『巡礼神官』という任に就く事があります。
彼女もその1人だったようです。
スキルの伸びも優秀で、現時点で20を超えているご様子。この若さでこれほどの才能をお持ちなのですから、お嬢様の手ほどきを受ければ、確実に成長することでしょう。
『巡礼神官』は教会の教えを広める為なのか、それともパフォーマンスの為に存在しているのかは分かりませんが、『神官』の少ない街や、全くいない小さな村では必要とされている存在なのでしょう。
私もその職についているエルフを知っています。
長い間彼女を見ていませんが、果たして元気にやっているでしょうか……。
「ポンプ式の井戸ですか。多少錆び付いてはいますが、まだまだ現役ですね」
「この街には職人の方が多く住んでいますので、こう言ったものを作るのはお手の物のようです」
「なるほど。こちら、外してしまっても?」
「いえ、素人さんに任せるわけにはいかないと、職人の方がそろそろ……」
「すまねえ、待たせた!」
見覚えのある男性が走ってきた。彼は確か……。
「お、嬢ちゃんは昨日の! あの時はマジで助かった、ありがとよ!!」
「貴方は昨日の重症者ではありませんか。なぜもう動いているのです、まだ体力は戻っていないはずですよ?」
「いやー、薬のおかげかすげえ元気なんだよ! 街が忙しい中ぼんやりもしてらんねえし、働かなきゃ腕もこいつみてえに錆びちまう」
そう言ってポンプをバシバシと叩く。
昨日まで寝たきりだった人間だは思えません。この人間が単細胞なのか、『リカバリー』を同時使用したからか、薬が凄いのか……。いえ、お嬢様の薬だから凄いのです。そうに違いありません。
「確かにあの薬は最高品質ですから、元気になるのもわかりますが、だからと言って……」
「ああ大丈夫、無茶はしねえ。約束する」
「それで倒れても私は知りませんからね? ではこのポンプを外していただけますか。口元と手元は、毒の侵入を許さないよう徹底防護をお願いします」
「ああ、任せとけ!」
イングリット様には離れて見てもらうとして、私は口をハンカチで押さえつつ、井戸の付近で取り外されていくポンプを見守っていた。
お嬢様から状態異常にかかる条件を聞いた事がある。例えば毒であれば、毒の使用者及び、毒そのものの品質や格の3点と、毒を受ける生物の「すてーたす」の差で確率が決まると。
「すてーたす」に関しては明確にわかりませんでしたが、ここの水を飲んだ者や煙を浴びた者は、漏れなく発症しています。毒の質がどれほどのものかは不明ですが、あの川を見る限り並大抵の毒ではないでしょう。
レベル34のお母様が粉末状の毒を吸い込んで発症したのです。対策を怠れば、本気の私ですら、病気に罹る可能性がありますね。
「釘抜は終わったぜ」
「ありがとうございます」
「そんじゃ外すぜ……うおわぁ!」
男が蓋を上げた瞬間、井戸からはどす黒い瘴気が吹き上がった。
「くっ、『浄化』! ……ふぅ。これは、酷いですね」
恐らく、蓋をした事で中で発生した瘴気がガスのように溜まっていたのでしょう。そして蓋が外れる事で、燃え上がるように広がったのでしょうね。
毒の水と聞いていたため、普通の水が出てくるとは思っていなかったが、完全に油断していました。
咄嗟ではありましたが、瘴気は全て祓いました。少し吸ってしまいましたが……身体に異常はないようです。
ステータス異常の表記もない。職人の人も、驚いてひっくり返っていたおかげで難を逃れたようです。
しかしあの濃度、一般人が吸い込めば、それだけで重症者になりかねませんね。
「アリシア様、御無事ですか!?」
「ええ、私は無事です。貴方も大丈夫のようですね」
「あ、ああ。なんとかな」
改めて中を覗いてみる。紫色の粘液がポコポコと泡立ち、瘴気が井戸の中からまだまだ登ってきている。濃い瘴気と呪いで空間が歪んでさえ見える。よく見れば、取り外したポンプの裏蓋は真っ黒に染まり、その一部は腐り始めていた。
あと数日もあれば、ポンプは自然と崩壊し、中に溜まった瘴気が吹き上がっていた事でしょう。
……時限式のトラップ。これも犯人が計画して仕込んだものであれば、かなりのやり手のはず。あの赤い縁、奴らへの警戒度を1段階上げておきましょうか。
「俺も最初の井戸がここまで酷くなっているとは知らなかった。この街はいったいどうなってんだ……」
「防護しているとはいえ、この瘴気は触れるだけでも危険です。あなたも下がっていてください」
「ああ、頼む……」
彼をイングリット様のところまで下がらせ、まずはポンプそのものの『浄化』をする。
「『浄化』」
このくらいの穢れなら、祓うのも慣れたもので、一瞬で取り払った。流石に腐り落ちた部分はどうしようもありませんが、これで取り替えの作業も安全に出来ることでしょう。
次はこの井戸ですが……川の特に酷かったところより、さらに酷いですね。この状況を見る限り、川から井戸へと侵食してきたのではなく、
「『浄化』!!」
井戸全体が光り輝き、紫の液体が徐々にではありますが、本来の水へと戻って行くのを感じます。しかしそれは表面の部分だけ。もっと奥の水底、毒を発する何かが……。
『バチッ!』
「!?」
な……弾かれた?
今、何が起きたのか正確にはわかりませんが、私の力では届かないことだけは、頭ではなく感覚で
私の
『浄化』出来ない以上、他に解決策もありません。無念ではありますが、ここで無理して倒れるわけにはいきません。
井戸に関しては封をして、あとはお嬢様にお願いしましょう。
「申し訳ありません。私の力が及ばず、井戸の水は浄化し切れません。私の主人でもあるお嬢様なら取り払えますので、それまでは再び封鎖をお願いします」
「ああ、わかった。直せないってのは残念だが、触れなきゃ大丈夫みたいだしな! しかし嬢ちゃんも凄いが、あんたが褒め称えて仕えるお嬢様か。いったいどれだけすごいエルフ様なんだ?」
「ふふ、お嬢様は人間ですよ。あと、お年は貴方よりは若いですが……そこから先は見るまでのお楽しみですね」
お嬢様の存在は凄いとかその程度の言葉では言い表せません。……さて、計画としては井戸の水を『浄化』し、外部から水を買う必要はないとして商人の暴力的な商売から助ける予定でしたが、それは頓挫してしまいましたね。
仕方がありません、子爵には一芝居打ってもらいましょうか。
しかし、今日のタイミングですらあの量の瘴気が溢れた上、しかも井戸はまだ他にもある。……お嬢様との合流が遅れそうなら、私が積極的に瘴気を間引く必要があるかもしれません。
もしあれよりも溜まりに溜まった瘴気の塊が、街の各所から吹き出したりしたら、ここら一帯が一瞬で呑まれてしまいます。そうなれば一気に全員が重症者になりかねません。
それはお嬢様の慈悲が無駄になるということ。絶対にそうはさせません。
◇◇◇◇◇◇◇◇
時間が余ってしまった私は、イングリット様達と別れ、グラッツマン子爵の依頼通りポーションの作成をすることにした。
ギルドにて部屋を借り、解毒薬ポーションの作成をする。やはり根っこがズタズタ同士で掛け合わせると、品質は普通になる上で同時作成数も2個止まり。
そして根っこがそれなりに無事な物同士を掛け合わせ、何とか高品質が2個から3個といったところですか。
昔は3つ作れるだけで尊敬の対象でしたが、今では最高品質にならない物を作ると、ちょっぴりモヤモヤします。
毎日のように3つ。もしくは上手く出来れば最高品質まで作れてしまう喜びに目覚めてしまうと、この程度ではもう満足できない体になってしまいました……。
「アリシアちゃん、終わったかしら?」
「あ、お母様。お待たせしました」
「いいのよ、この街の人達のために必要な事なんだもの」
「アリシアお姉ちゃん、あんまり楽しそうじゃなかったの」
「ふふ、リリにはバレてしまいましたか」
「リリはアリシアお姉ちゃんの妹なの。だからわかるの」
笑顔を見せるリリの頭を撫でていると、シャルラさんが扉をノックして入ってくる。
「失礼するわ。食事の準備が出来ましたけど、どうされ……え!? もう終わったのですか?」
「はい、大した量ではなかったので」
お嬢様は3つ同時に作成してのけるが、私はまだ2つ同時が精々だ。それでもお嬢様直伝の作成方法は本来の3倍以上の速さで、更には2つ同時で進行出来る。その上作れる個数が増えるとなれば、10人分近くの仕事を終わらせたことになる。驚かれるのも無理はないかもしれない。
「流石は『
「それはリーダーが望みませんので。ポーションはここに置いていきますので、後程査定をお願いします」
「わかりました。食事が終わるころには報酬をお渡しできると思いますので、ゆっくり休んでください」
部屋を出ようとして、伝え忘れたことをシャルラさんにお願いしておこう。
「それから、子爵に至急伝えたいことがあるので、ギルドに呼んでいただいても良いでしょうか」
「子爵様を呼び出せるBランク冒険者なんて、おすごい話ね……」
「ふふ、他の地域では難しいでしょうけれど、グラッツマン子爵はそういうことを気にされない方なので、喜んで来てくれると思いますよ」
「この地方の貴族は皆、懐が広いですね。支配する公爵家の賜物でしょうか」
お嬢様がコンタクトを取りたいと言っていた公爵家。あの家の内情は知っていますが、旧体系の貴族としての在り方を嫌うところでした。
あの方には美しく優秀な令嬢が2人もいましたね。昔、短い期間でしたがお世話をさせて頂いた時期があります。久しく見かけていませんが、噂ではその美しさに磨きがかかり、国の内外からその美貌を一目見ようと人がやってくるのだとか。
まあどう成長しようとお嬢様以上という事はありえないでしょう。長女の方は天才肌ですし、お嬢様とは波長が合いそうです。その内ご挨拶する機会が訪れるでしょう。
「そうですね、あの方は素敵な人ですから、そこに形成される派閥の人達も温和な方が多いようです。その分、他の派閥からは毛嫌いされがちのようですけれど……」
お嬢様が敵視する伯爵はその筆頭なのでしょう。アレの視線は耐えられるものではありませんでしたし、何度かあの家からは誘いや強引な手段を受けましたが、全て断りました。
お嬢様にはその話は伝えていませんが、話せば妬いてくださいますでしょうか……。
食事中、お母様やリリに相談すると、絶対に妬いてくれるとのことでした。
今度話してみましょうか。ちょっぴり楽しみです。ふふっ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ギルドでの食事が終わり、特製ジュースを飲んで待っていると、グラッツマン子爵がやって来た。
「やあ、待たせたかね」
「いえ、こちらこそお呼び立てして申し訳ありません」
「ははっ、私は構わんよ。して、何か協力してほしいことがあるのだね?」
私は子爵に、井戸の浄化が失敗に終わったことを説明する。
「そうか、君の力でも解決は出来ないか……」
「力及ばず申し訳ありません」
「いや、良いのだ。それを抜きにしても君たちの活躍は余りある。どうか気にしないでほしい。……やはり、君の所のリーダーでも解決出来なかった場合の策を、考えねばならないな」
「それこそあり得ない話でございます」
「ハハ、絶大な信頼だな。しかしそこを疎かにした結果が、今の我らの状態なのだ。気を悪くせんでほしい」
肯いて返す。確かに水は生活に必要なもの。もし解決できなかった場合……可能性の話ですが、最悪街の位置を変えるとか、全員が水魔法を覚えるとかでしょうか。
どちらにせよ大変な規模の話になりますね。
「ねえアリシアちゃん、その井戸だけど、ママ達に手伝えることはないの? 心配だわ」
「いえ、私の『浄化』が効かない以上、他に手はないでしょう。お嬢様にお願いすれば、すぐに解決して下さるでしょうし」
「確かにそうかも知れないけれど……」
お母様は心配症ですね。そこがお母様がお母様たる所以ではありますが。
さて、井戸を使えるようにする策は潰えたため、次点として用意していたプランをグラッツマン子爵に説明する。
まず私とお母様で水魔法を使い特大の『ウォーターボール』を作る。そしてそれを街の人達に提供するというものだ。
そしてそれを無料で配ってしまえば多方面から反感を買うが、事前に領主が支払済とする。それにより軋轢が発生せず、住人達の負担は減りますし、領主様へ感謝もするでしょう。
「なるほど、無料ではなくそうする事でお互いのメンツが守れるか」
「はい、それと昨日もお伝えしましたが、私はその連中こそ怪しいと睨んでいます。もしかしたら強硬的な手段に出るかもしれません。ですので、プランを実行する前に、奴らの実力を直接確認したいと思っています」
「どうやって……いや、詮索はすまい。では私は領兵を連れて行こう。この時間であれば、彼らは街の奥にある広場で商売を始める頃合いだ」
「よろしくお願いします」
◇◇◇◇◇◇◇◇
冒険者に案内され、街の奥にある広場に着くと、丁度商人と思しき男が大量の水をマジックバッグから取り出し、販売の準備を始めていた。
お母様の『探査』では白い丸のようですが、少し離れた場所に赤い縁の連中が固まっていますね。
「あの人がその商人ですか?」
「ああ、間違いない」
「わかりました。『観察』」
**********
名前:ベグリッツ
職業:シーフ
Lv:17
サブ職業数:0
総戦闘力:780
**********
ふむ、シーフは移動速度が速くなる特徴がありますから、商人としての職業としてはありふれた物ですね。戦闘力も並。今の私よりは強いですが……お母様やリリよりは弱いですね。
……そう言えばお嬢様の武器を装備した時に、体が軽くなったように思えました。もしかすると魔力回復以外にも強力な効果があるのかもしれませんね。
私は懐から鏡を取り出し、鏡の自分と視線を交わし合う。
「『観察』」
**********
名前:アリシア
職業:神官
Lv:15
サブ職業数:11
総戦闘力:1004
**********
……想像以上に伸びていますね。
装備1つで240も総戦闘力を増やすとは、戦争が起きかねませんね。流石はお嬢様です。
とにかく、私自身の戦闘能力も、ある程度は問題ないことがわかったのは朗報ですね。
「お母様、今一度赤い縁の者たちの場所を確認させて下さい」
「ええ、さっき確認した場所からは動いていないわ。あの建物の裏手ね」
「わかりました、見て参ります」
グラッツマン子爵に目配せする。彼には準備をしてもらい、私は件の人物達の姿を見に、建物……高級宿の裏手へと近寄る。
暗い裏路地を覗き込むと、男3人が何か相談をしているようでした。
今の私は隠密系の職業ではない為、聞き耳を立てたところで全てを聞き取ることは困難でしょう。さっさと確認をしなければ。
「『観察』」
**********
名前:モーブス
職業:魔法使い
Lv:8
サブ職業数:2
総戦闘力:319
**********
**********
名前:カーバス
職業:レンジャー
Lv:21
サブ職業数:3
総戦闘力:1273
**********
**********
名前:ゲイス
職業:暗殺者
Lv:22
サブ職業数:2
総戦闘力:1322
**********
あの魔法使いは貴族で間違いなさそうですね。直感ですが才能があるようにも見えませんし、隠れ蓑として丁度良い権力役と言ったところでしょうか。
そして隠密職業が2人ですか。厄介ですがレベルが低いのでなんとかなりそうです。そして全員見るからに人族ですね。魔族特有の空気感はありませんし、思い過ごしでしたか……。
ともかくバレる前に撤退しましょう。
コッソリこそこそ、しかし早足でお母様達のところへと戻る。そして見てきた情報をそのまま伝える。
「そう、魔法使いは良いとして、あとの2人が気になるわね」
「はい、赤い縁は立ち位置からしてもその2人で間違いないかと。ですが、彼らの強さは然程問題はなさそうです。どんな魔道具を隠し持っているか分かりませんので、注意が必要ですが、そこはリリが居ますので」
「うん、頑張るの」
リリのやる気は十分のようだ。お母様も昨日ほどに怯えは無い。
「ちなみにあの商人に見覚えは?」
「……無いわ」
「分かりました。では作戦を開始しましょう」
冒険者に合図を出し、グラッツマン子爵を呼んできてもらう。
お母様もリリも、いつでも魔法が撃てるよう準備をしてもらう。作戦の開始を確認したグラッツマン子爵は、護衛を連れてそのまま商人へと向かっていった。
私たちはフードを目深に被り、その後を追うのでした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この作品が面白いと感じたら、ページ下部にて評価していただけると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます