第074話 『その日、治療を開始した』

 シャルラさんとグラッツマン子爵、それからギルドにいた冒険者を手伝いとして連れ、教会へと足を運ぶ。お嬢様が以前、神聖魔法で扱う魔力の空気感が感じられる場所として、教会を例に挙げられていた。しかしこの教会は、まるで違う様相を呈していた。

 感じるのは毒と呪い、そして人々の苦しみにより生じた苦痛と悔恨の念で埋め尽くされ、瘴気が発生しているかのような雰囲気すら感じられた。


 教会に入った瞬間、リリは嫌そうな顔をしましたし、お母様ですら顔をしかめました。こんな場所、数刻居るだけでも病気になってしまいそうですね。


「これは、想像以上に空気が悪すぎますね。このような場所では治療したところで、体力も心も弱った人達では、再び病に侵される可能性があります」

「そうね、とっても嫌な空気だわ」


 グラッツマン子爵を見つけた神官が、駆け寄ってきたため事情を説明するが、次第に表情が怪訝な物に変わっていく。現場は猫の手も借りたい状況でしょうが、治療もいきなり任せろというのは、怪しまれて当然でしょうね。

 子爵が連れてきた客人を無下にするわけにもいかず、困っている様子です。


 実際に協力を仰ぐには、まずは力を魅せて納得させなければなりません。お嬢様なら存在感だけで彼らを納得させられるのでしょうが、私では無理でしょう。

 エルフは魔法使いの代名詞ではありますが、神官として注目を集める事は稀ですからね。エルフの国には生きる伝説のような聖女様はいらっしゃいますが……。


 礼拝堂の中央に立ち、全体を見回す。治療にあたる神官達は、何日もまともに睡眠を取れていないのでしょう。皆さん、疲れ切った顔をしています。


「まずはこの邪気を祓ってみます……『浄化』!!」


 『浄化』で祓おうとして、改めてハッキリと対象を認識する。怨念が渦を巻き、実体化しているようにすら錯覚するほどに、重く、苦しい。

 いえ、が『浄化』も捗るかもしれませんね。『浄化』する対象を強く思って魔法を行使し続けていく事で、イメージによる除去を後押ししてくれているように感じます。

 お嬢様はいつもこのようにして、除去する物を明確にイメージしてから魔法を行使しているのでしょうか?


 今回は、川の時とは違い物質への作用ではなく、場の空気感という曖昧なものに対する『浄化』ということもあり、作業は難航しました。魔力が尽きる事を見越し、『浄化』を行使しながらポーションを3つも飲むことになってしまいました。とても苦かったです。

 お腹が水分でいっぱいになった気がしますが、ポーションの成分は消化が非常に速く、その半分ほどが魔力に変換されるので、お腹に溜まる不快感も少しの間の辛抱です。最高品質のポーションとなれば、全てが魔力に還元される上、その吸収速度も凄まじいようです。飲んだ本人ですら、飲んでいないのではと錯覚するほどにお腹に溜まらないと聞きます。

 その上お嬢様なら味の改良も出来るでしょうね。


 ……そういえば結局、お嬢様が作られた最高品質の回復のポーション、それから解毒のポーションですが、機会が訪れず飲んだことがありませんでした。

 いつかお嬢様が作った物を飲んでみたいものです。


閑話休題つまりお嬢様は至高


 結果的に、魔力の残りが2割にまで減ってしまいましたが、教会内の空気が清涼な物へと変わったように思います。息苦しいような感覚もなくなり、居心地の良い空間になりました。

 ただ、これも患者が無数にいるこの状態が続けば、また元通りになるかも知れません。その前に治療を済ませてしまいましょう。

 神官達も、場の空気が変わったことに気が付いたようですね。これで少しは話が通しやすくなったことでしょう。


「では皆さん、手筈通りにお願いします。神官様方は彼らに引き継ぎが済み次第こちらへ来てください」


 お母様やリリ、冒険者達が薬を手に、重病者の介護を始める。リリはお母様のサポートがお仕事ですね。

 実際に服用させるのは私の準備が完了してからとなるので、まずは汚れた服や包帯の交換からしてもらいます。


 引き継ぎを完了した神官達と共に、グラッツマン子爵が1人の男性を紹介してきた。服装からして神官長のようですね。

 私も自己紹介を済ませる。


「先ほどの『浄化』、拝見させて頂きました。まるで噂に聞く『聖女』様の祈りのようでございました。エルフの高名な神官様とお見受けします。なんなりとお申し付けください」


 皆さんが高名な神官と勘違いして頭を下げておりますが、まさかその神官が、成って10日前後の初心者だとは思いもしないでしょうね。

 1ヶ月程度前の私でさえ、そんな非現実的なこと、世迷い事だとバッサリ斬り捨てていたでしょう。


「これは、尊敬する我が主人の教えをそのまま実行に移しただけです。私がすごいのではなく、我が主人が素晴らしいのです。その辺り、お間違えのないよう」

「は、はぁ……」

「とにかく、治療を頑張り続けているあなた方に、主人から労いの品をお持ちしました。この中で『リカバリー』を取得されていない方は手を挙げてください」


 5人の神官から手が上がる。手を挙げなかったのは神官長と、年若い女性の神官。彼女は貴族令嬢でしょうか? この若さで『リカバリー』を扱えるのであればのでしょうね。お嬢様が変革するまでの世界価値では。


 頂いたは全部で5枚。ちょうど良いですね。

 いえ、それすらもお嬢様が予想されていた可能性が……? 

 とにかくお嬢様の言う通り、頑張りには褒美がなくてはなりませんね。


「こちらを受け取ってください」


 神官達に配っていく。そして彼らはすぐに読み終えたようで、ソレは燃え尽きてしまう。


「リ、リカバリーの魔法書!?」

「一瞬で読み終えてしまった……」

「こんな紙切れ1枚の魔法書があるなんて聞いた事がないわ。あるとしても物凄く高価な品なんじゃ……」

「いや、俺達は疲れているんだ。幻覚を見ているのではないか?」

「そ、そうかもしれない……」


 戸惑いが広がっているようですが、なかなか失礼な物言いですね。お嬢様の英知の一端を手に取ったのですよ?


「あなた達、これは夢ではありません。今燃え尽きた魔法書も、習得した魔法も現実です。ほら、この方に言うことがあるでしょう」

『し、失礼しました! 貴重な魔法書をありがとうございます!!』


 おや、神官長は冷静ですね。多少は驚いたようですがすぐに諫めてくれました。若い神官は衝動的に感謝の言葉を返してくれましたが、まだその衝撃からは復帰していませんね。

 やはりこのような奇天烈な魔法書、お嬢様の存在感無しに納得させるのは難しいようです。私ではお嬢様の素晴らしさを伝えることができないだなんて、悔しいです……。


「ご安心を。驚く気持ちはわかりますし、我が主人……お嬢様は些細なことは気にされません。今この街にはいませんが、後日合流する予定ですのでお礼はその時に」

「承知しました。ですが貴女様にもお礼を伝えたいのです。手伝いを申し出て頂き、本当にありがとうございます」

「……はい。まだ解決には至れていませんが、共に頑張りましょう」


 神官長と握手をする。お嬢様の素晴らしさを語るべきか大いに悩みましたが、それは今である必要はありませんね。今は治療を急ぎましょう。


「皆さんは症状が軽微の方から治療を。重症者は私が薬での治療を行います。治療で完全に癒せなくても構いません。ひとまずは重症者の数を増やさないようにお願いします。生きてさえいれば、全員助けられますから!」

『はい!』


 まずはお母様のところへと向かう。話をしているうちに病人の処置は全て完了しているようです。流石はお母様。2級どころか、1級メイドの検定を受けられる素養がありそうですね。

 しかし、どうにもお母様の顔色が優れません。お母様の頭上にあるゲージに状態異常を示す表示はありませんが……どうしたのでしょう。命の危険がないとはいえ、心配ですね。


「お母様、リリ。お待たせしました」

「あ、お姉ちゃん……」


 リリも心なしか元気がない。しかしリリの場合、こういった場所が初めてなのでしょうね。ケガ人が溢れる場面に出くわすのは、冒険者として生きるなら必ず通る道です。頑張りなさい。

 そんな環境でも自分に出来ることを頑張っているようですし、帰ってきたお嬢様に最初に可愛がってもらう権利は、リリに差し上げても良いかもしれません。


「お母様、どうされましたか?」

「……え?」


 聞こえていなかったようです。これは思ったより深刻ですね。


「気になる事があるなら仰ってください。私達は家族なのですから、困っている事に対する秘め事はダメですよ」

「あ……、えっとね。気のせいかもしれないんだけど」

「構いません」

「……ううん、まだ確信が持てないの。まずはこの人を治療してからにしましょ?」

「あ、そうですね」


 それもそうでした。全力で『浄化』に使用した魔力は、もうほとんど回復している。一度この人の治療で魔力を使ってから、回復の名目で話を聞こう。

 寝込む人を見遣る。辛うじて、事が分かる。

 顔の半分は黒く染まり、首から下へと続いています。お母様が新しく服を着替えさせたのでしょうが、新品の服でさえ、黒い染みに触れた部分は火に炙られたかのように炭化していく。

 包帯も、黒い染みを覆うために使用しているのではなく、ポーションを染み込ませた包帯を巻くことで、黒い染みの進行を抑え、瘴気をばら撒かないための処置らしい。

 そんな状態でもまだ、呼吸をしていた。彼はまだ生きているし、朧気ながらも意識はあるようだ。そんな彼と視線が交わる。


『生きたい』


 そう告げているように感じました。

 ええ、必ず助けますとも。


「『浄化』」


 まずは彼自身が発する瘴気や、体の汚れを取り除く。お母様に合図をし、薬をゆっくりと流し込む。すると、ゆっくりとだが嚥下しているようだった。


「『リカバリー』」


 薬による内部からの治療と、魔法による外部からの治療を行う。だが目的としては、相手に魔力を通し治療を行う事でを把握するためだ。

 絶対に私では治せないと断言できてしまう体の変異が、薬によって正常な状態へと巻き戻されていく現象を、魔法を通して知覚する。この光景を知っているか知らないかで、今後の治療行為の質が大きく変わる事でしょう。

 その後も『リカバリー』で彼の体が回復していく姿を追いかけ続ける。そうして、薬の効果が十全に発揮され、彼の体が完治したことが外からでも見て取れた。


「処置完了です」

『おおおお!!』


 治療行為を、固唾をのんで見守っていた人達から歓声が上がる。

 私達が来る前には、もっと沢山の重症者がいたらしい。しかし、彼らは間に合わなかったらしく、全て火葬されたようだ。そんな中、次の火葬候補だった彼を介護する神官も、彼自身も、殆ど諦めているようだった。

 確かに彼の状態を見た時は酷いものだと思った。生きているのが不思議なくらいに。

 そんな彼の病状が完治し、毒に侵される前の体に戻ったことは、彼らにとって真に希望となったのだろう。見守っていた神官達は涙を流し、喜びを分かち合っている。


「薬を飲ませて治癒されていく状態を確認していましたが、他の重症者達は薬だけで問題なさそうです。念のため神官数名でサポートしながら飲ませてあげてください」

『はい!』


 神官長に休憩をすると説明し、お母様と共に教会の一室を借りる。


「さて、お母様。そろそろ話して頂けますか?」

「ええ。……さっきの治療される人を見て、やっぱり確信したわ」


 お母様が覚悟を決めるように、一呼吸した。


「私、この病気に罹った事があるの」



◇◇◇◇◇◇◇◇



 お母様の告白は衝撃的でした。しかしそれ以上に、お母様自身がショックを受けていました。改めて口にした事でその時の恐怖が蘇ったのか、すぐに震えだしてしまいました。

 それ以上の詳細を聴けるような雰囲気ではなかったため、お母様には先に休んでもらうことにしました。


 グラッツマン子爵に事情を説明すると、快く領主の館に泊めていただけることになり、リリと一緒に先に向かってもらいました。私はまだ、治療状況の確認や川の『浄化』など、やっておかねばならない事が盛り沢山でしたので。


 患者の治療をして回る中で発見がありました。先ほどの優秀と判断した神官の女性ですが、やはり確かな実力を持っているようです。

 神官長は彼女に全幅の信頼を寄せているようで、疲労がたまりつつある私を彼女はサポートしてくださいました。話してみればとても若く、学園を卒業したばかりなのだとか。

 優しく患者たちを治療するその姿は、まさしく聖女のような姿でした。清楚で可憐。……男性はこういう女性が好きだと聞きますが、お嬢様も気に入るに違いありません。

 彼女……イングリット様とはお仕事の関係上話す機会も多いでしょうし、この方からお嬢様の素晴らしさを説いてみましょうか。


 その後、患者の治療にもある程度の目処がついたところで、イングリット様の案内の下、川の汚れが溜まっている場所を案内してもらいました。しかし、どの場所も最初ほどの汚れはなく、それほどの苦労もなく正常な状態へと戻す事ができました。

 しかしスキルはきちんと上昇したようで、念願のスキル25へと到達しました。これでお嬢様に頂いた『ハイリカバリー』を習得できます。


 私が元より習得している水魔法や風魔法は、スキル25に到達するまで一体何年かかったやら分かりません。それがたったの数日でここまで成長をするとは。

 未習得の『浄化』を先んじて練習する。本来の自分では扱えないはずの、先にあるスキルの模倣……。確かに成長するにはもってこいの修練方法ですね。お嬢様の成長手段は理にかなっています。


 『ハイリカバリー』は、お母様の話を伺ってからゆっくりと読むことにしましょう。粗方の『浄化』作業は終わり、後は細かい部分の確認が残るのみとなりました。そして残る問題は井戸、ですか。可能ならばすぐに動きたいところでしたが、流石に暗くなってしまっては作業も捗りません。

 イングリット様には働きすぎだと必死に止められてしまいましたので、今日のところはこの辺りにしておきましょうか。


「……むむ」


 ……いけませんね。注意されるまで気付きませんでしたが、私今、お嬢様と同じことをしていましたね?

 今の私は、お嬢様のこの武器のおかげで魔力切れの心配はなく、疲れても自分に『リカバリー』をかけてすれば、また動ける。これは恐ろしい循環ができてしまっています。

 お嬢様の事は普段からよく注視していますが、疲労具合はともかくとして、魔力に関してはまともに減ったことがない気がします。

 体験したからこそわかりますが、これは自分ではなかなか止まれませんね。


 お嬢様が夢中になってひたすら作業を繰り返す気持ち……。不肖アリシア、今にしてようやく理解しました。

 これからはお嬢様がご自身で止められなくても、咎めたりせず、優しく止めて差し上げましょう。


 イングリット様とはそこで別れ、領主の館へと向かう。

 道中街の住人達からは沢山のお礼の言葉を貰った。間に合わずに助けられなかった人には申し訳ないが、この世界ではどこでだって、こんな光景があり触れている。少なくともお嬢様が王都への道に、この街を通るルートを使わなければ、この街の人間は誰一人として救えなかっただろう。救われた彼らは運がよかった。それだけの話です。


 館に着き、グラッツマン子爵からは晩餐に誘われるが、流石に今日は辞退させていただいた。お母様とリリが元気になった上で、お嬢様と合流してから参加させていただく旨を伝えた。彼は2つ返事で了承をしてくれた。

 今日は休む旨を伝えると、教育の行き届いたメイドに案内を受け、お母様のいる客室へと通される。


「お母様、ただいま戻りました」


 ベッドに腰掛けるお母様に声をかける。


「おかえりなさい、アリシアちゃん。そしてお疲れ様、頑張ったわね」

「はい、ありがとうございます。……リリは?」

「さっき眠ったわ。今日は慣れない事をして大変だったもの」


 リリはお母様の後ろで、スヤスヤと眠っているようだった。私はお母様の隣に腰を下ろす。


「……そうですね。お母様もお疲れさまでした」

「ありがとう。ごめんね、途中で抜けちゃって」


 その顔からは疲労感は伺えるが、先ほどのように取り乱してはいないようだった。


「いいえ、あとは楽な仕事でしたので。……お母様、先ほどの件、お嬢様はご存じなのでしょうか」

「ううん、シラユキちゃんは知らないわ。ただ、シラユキちゃんに治してもらったの」

「……と言うと、私を迎えに来てくださったあの日ですか?」

「ええ。シラユキちゃんと初めて会った日に、私の体調が優れない事を教えたら心配して治してくれたの。その後は買い物に行ってくると言って出かけて、それからはアリシアちゃんが知っている通りよ」

「そうだったのですね……」


 お嬢様は相手の状態が深くわからずとも治療が出来るのでしょうか。それがお嬢様の経験のなせる業なのか、それともお嬢様が時折口にされる「すてーたす」というものの恩恵でしょうか。

 総戦闘力とは近いようで異なる物だとはお聞きしていますが、お嬢様の強さを知っている分、何となくですが理解できますね。


「では、気になるのはどのようにしてその病気に罹ったかなのですが……心当たりがあるのですね?」

「……ええ、前に話したわよね、リリを引き取りに来た人たちの事」

「はい」

「体調を崩す直前。ううん、それより前からもなんだけど、嫌がらせのようなことをされていたの」

「ほう……」

「最後にやってきた日に関しては、これが最後通告だと言ってて、それを断ったときに粉末状の何かをぶつけられたの。それから彼らは現れなくなったんだけど、日が経つごとに体に力が入らなくなっていって……」

「……」


 お嬢様にこの話を聞かせるべきか悩みますね。お母様を溺愛しているあの方が聞けば、怒り狂う可能性があります。今の私ですら、憤りを感じているのですから、感情制御の難しいお嬢様では……。


「今日、この街の人達の症状を聞けば聞くほど、あの時の症状に酷似してるの。もしかしたら、似ているだけで全く別の病気の可能性もあるけれど、苦しんでる内容も、体が黒くなっていく現象も、私の知っている通りだったの……」

「お母様にも黒い染みが現れていたのですか!?」

「ええ、お腹周りだったから人目に触れなかったんだけどね。シラユキちゃんに治してもらって別れたとき、すぐに確認したわ。あの時は本当に嬉しかったわ。原因はわからなかったけど、治ったんだって」


 お母様がお腹をさする。

 ……ああ、やはりそうだ。


「……お嬢様としては、気ままに決めて、たまたま動いた結果のものだったのでしょう。ですが、その結果リリも、お母様も、私も。皆救われました」

「そうね……」

「ポルトの人達、シェルリックスの人達、そしてこの街や今お嬢様が向かっているエルフの森。皆お嬢様に救われる運命だったのですね」

「運命か……。そう思うと、あの子が現れなかった場合を想像すると、とても……怖いわ」


 お母様は自分の体を強く抱いた。

 それは私も考えたことがあります。もしもあの方が現れなければ、ポルトは闇ギルドに支配され、街道はテラーコングが暴れまわり、シェルリックスはマンイーターの群れに喰い尽くされる。そしてこの地では災厄竜や無限に溢れる毒の川まで……。

 まるでこの世の終わりですね。


 私はお母様をやさしく抱きしめた。


「……お母様、もしもを気にしても仕方がありません。今、私たちはお嬢様と共にあり、家族なのです。この現実は覆りません。だから、お嬢様が帰ってきたら、めいいっぱい甘えましょう」

「ふふ、そうね。そのためにも明日は、もう一頑張りしましょ」

「はいっ」


 まだ井戸と商人の件が残っている。明日も頑張ろう。

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