第343話 序列2位

 コレールが戦場に降り立つ少し前。

 地平線の先までも広がるヴィスデロビアの軍勢を前に、フォルクレスは苦笑いを浮かべる。


「いやぁ、それにしても凄い数だね……」


「はっ! この軍勢と俺様達を前にしてビビったか? あぁ?」


「はぁ、バロックさん、いくら殲滅対象とは言え品がないですよ。

 それにこの軍勢に加えて、我々を前にして怯えてしまうのは仕方のない事でしょう?」


「それって結局バロックと言ってる事同じだよヨーロ!」


 楽しそうに嗤う少年の言葉を受けて、ヨーロと呼ばれた男はそれを否定せずに軽く肩を竦める。


「じゃあお前はどう思うんだよ? スー」


「えっ? ボク? えー、そんなのバロック達と一緒に決まってるじゃん!

 シングルだか何だかん知らないけど、この軍勢に加えてボク達魔皇神を3人も相手にしないとダメなんだよ? あはは! 可愛そー!!」


 無邪気な笑顔を浮かべて嗤う少年スー。

 自身達の頂点に立つ魔皇神達の笑い声に釣られて背後の軍勢に笑いが広がる。


「へぇ、因みに君達の序列は何位なのかな?」


「あっ! それ聞いちゃう? それを聞いて絶望しちゃう!?

 う〜ん、どうしよっかなぁ? 教えちゃおっかなぁ??」


「俺は序列12位で、この優男が18位。

 んで、このガキが序列9位……」


「ちょっと、ちょっと! バロック、何でボクより先に言っちゃうかな!?」


 バロックに文句を言うスーから凄まじい魔力が立ち昇る。

 常人どころか到達者ですら浴びただけで死に至る程に膨大かつ濃密な魔力。

 しかし序列9位であり、ヴィスデロビアが眷属であるスーにとってはちょっとしたお巫山戯に過ぎない。


 神ですら……いや、超越者たる神だからこそ、その圧倒的過ぎる力を前に心が折れる。

 強者としての自負を持つ神の顔が恐怖に歪む、 その瞬間こそがスーが最も好きなとき!


 さぁ、自身と自尊心に満ちた表情を恐怖に歪めろ!

 愉悦に緩む頬を我慢する事なく、恐怖に引き攣ったいるだろうフォルクレスの表情を……


「はぁ、ハズレか」


「え?」


「5位以上でも倒さないときっと許してくれないだろうな……

 こんな事なら、素直に全体の指揮をすれば良かったよ。

 つい昨日、またコレクションを失ったところなのに……」


「な、何を……」


「おっと、申し訳ない。

 残念ながら一世一代の賭けに敗れてしまったね、これでまた世にも恐ろしいお仕置きが……」


 ヨロ……っとフォルクレスの身体が不意にふらつく。

 つい昨日、大切な秘蔵コレクションを失ったばかりなのに、職務放棄した結果背負ったダメージは大きい。

 余りにも大き過ぎた!!


「そ、そうか! この状況でおかしくなっちゃったんだね!?」


「あぁ、ごめんね。

 ちょっとショックが大き過ぎて、キミ達の事を忘れてたよ……はぁ……」


 深いため息をつき肩を落とし……


「いや、待てよ。

 私の事を〝ちょろ神〟とか言う割にルーミエル君は結構ちょろい。

 敵を潰して回り、で見上げにスイーツでもご馳走すればお仕置きは回避されるのでは?」


「あははっ! 哀れだねっ!!

 この絶望的状況を前にして精神が壊れちゃった? シングルとか言っても、お前達は所詮雑魚なんだよっ!!」


「よし、それで行こう」


 愉悦に表情を歪めて嗤うスーを完全に無視して、一人呟き……


「ぇ?」


「申し訳ないが、キミ達に構ってあげる時間が無いから……サクッと終わらせるよ?」


 元序列3位にして、現序列2位。

 神王であるネルヴィアと並んで、シングルの神々の中でも別格の実力を誇る魔力を解き放った。

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