第342話 総司令
時間は少し戻って……ヴィスデロビアによって結界を破られ、統一神界の四方八方で爆音が鳴り響いた少し後。
「全くどいつも、こいつも……」
額に青筋を浮かべ、頬をピクピクさせながらコレールがポツリとぼやく。
「ふふふ、コレールが愚痴を言うだなんて珍しいですね」
「あら、そうなのですか?」
そんなコレールを見て、優しそうな雰囲気で微笑みを浮かべる2人の美女。
アヴァリスとミレーネがローテーブルの前に座り、ティーカップを片手に言葉を交わす。
「
「ええ、ここにいる事が今の私達の仕事なので」
「その通りですよ、コレール殿」
「いや、まぁそれはそうなのですが……お2人とも側から見れば、お茶をしている様にしか見えませんよ?」
優雅にティーカップを片手に腰掛ける2人の姿に、コレールは苦笑いを浮かべる。
「まぁ! こう見えても、私とアヴァリスさんは現在進行形でヴィスデロビアに破壊された結界を修復していると言うのに……」
「それに加えて、戦闘で致命傷を負いそうな攻撃への防御と負傷したものへの回復もやっていますよ。
ふふふ、コレールも一緒にどうですか?」
「いえ、せっかくのお誘いですが私は遠慮します。
さて……」
一礼して断りを入れ、コレールが扉に向かって向き直ると同時に……
バタンッ!
扉が開け放たれ、駆け込んで来る2人の人物。
片や統一神界が精鋭軍の1人、もう一方はナイトメアの軍服に身を包む少女。
その2人がコレールの前でビシッと敬礼をして報告を告げる。
「報告します。
先の爆発による統一神界への被害は軽微、多数の負傷者は出ましたが重傷者及び死者はゼロです」
「統一神界を包囲する様に散開・出現した敵軍にはシングルの6名、ナイトメア最高幹部3名、他ダブル上位者が対処中。
また現在、統一神界上空にで神王ネルヴィア様とヴィスデロビアによる戦いが展開中されています」
「戦闘に参加できるものは統一神界・ナイトメア双方の精鋭軍の指揮官の元、敵への攻撃と防備の指示を。
戦闘に参加できない者達はこの統一神城及び、学園にて避難させて下さい」
「「はっ!」」
コレールの指示を受けて、再び敬礼をした2人の姿が掻き消える。
「それで、どうでしたか?」
「ふふ、ご主人様と貴方の予測通り動いたわよ」
外から中は入る為には扉から入るしか無い様に強固な結界を張られた部屋の中に突如として姿を表すのは1人の妖艶な美女。
かつてはヴィスデロビアが四魔皇の一角にして、現在はルーミエルの忠実な下僕。
ルーミエル直属の特別諜報任務部隊、部隊長リーリス。
「時間は?」
「ちょうど今、出立したわ」
「リアルタイムですか。
流石は特務、ヴィスデロビアの眷属相手に仕事が早い」
「ふふふ、ナイトメア総司令殿にお褒め頂き光栄に思います。
これでご主人様に、ご褒美を頂けるかしら? ぐふふ……」
頬を赤く染めて上気させて恍惚とした表情を浮かべて、舌で唇をなぞり。
異性を誘惑する表情で微笑みながら何やら妄想をし始めたリーリスからスッと視線を外し……
「はぁ……」
総司令室となっている統一神城、謁見の間にすら響いてくる戦闘音を聴きながら溜め息をつく。
全体の指揮を押し付けて、飛び出していった自由過ぎる仲間達。
特にヴィスデロビアと対峙しているネルヴィア様を省いて、神として最も高位であるフォルクレスだけは後でお嬢様に報告してやると、心に決めて視線をリーリスへと戻す。
「特務は引き続き情報収集と、それに加えて敵の密偵の処理をお願いします」
「ええ、分かったわ」
それだけ言うと同時に、まるで初めからそこには誰も居なかったかの様にリーリスの姿が掻き消える。
「さてと、私も少し動きしましょう」
軽く笑みを浮かべてコレールの姿もリーリスに次いで掻き消えた。
そうして……黒龍が戦場に降り立った。
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