第323話 開戦ですっ!!

 一瞬にして敵を焼き払い、轟く雷鳴。

 入試の時と比べても比較にならないこの規模と威力! 計算通りです!!


 着弾箇所も効果範囲も狙い通り、実に素晴らしい! これぞ完璧ならデモンストレーションです!!

 遠くから……ネルヴィア様がいるであろう統一神城から見れば、幅数キロにも渡る巨大な青白い光の柱に見えた事でしょう!!


「完っ璧です!!」


 落雷によって発生した目視出来るほどの衝撃波で、統一神界を囲うように展開されている超大規模結界が完膚なきまでに粉砕しちゃいましたけど……

 その外側に群がり激しい構成を仕掛けるヴィスデロビア配下達もそれどころでは無いでしょうし、何の問題もありませんね!!


 攻勢に出る群がる様なヴィスデロビア配下達。

 その全員が到達者、幾人かの実力は超越者に足をかける程はあったでしょう。

 ふっふっふ! しかぁっし!! 僕からしてみれば、ぶっちゃけ唯の有象無象に過ぎないのですっ!!


「さぁ、刮目せよ!」


 今の雷霆ケラウノスで、アヴァリスが展開していた特殊結界が消滅。

 落雷やって生じた煙りも、所々にあった雲も衝撃波で消し飛び、邪魔するモノは何も無い。


「こほん、ヴィスデロビアが配下の諸君。

 初めまして、僕の名前はルーミエル。

 君らが奇襲襲撃してくれたナイトメアの創設者にして総統です」


 地上にて上空を見上げるヴィスデロビア軍。

 最前線で戦っていた雑兵達は消し飛び、後方にいた力のある者はボロボロになりながらも生き延びて。

 そして更に後方で優雅にお茶を楽しんでいた連中は、衝撃波によっ吹飛び滅茶苦茶になったテーブルやティーセット中で唖然と。


 まぁ、当然ですね。

 最後方にてこの場に似つかわしく無い豪奢で禍々しい朝に腰掛けていたヴィスデロビアも。

 その周囲に控えるヴィスデロビアの眷属達も、攻撃されるまで僕達の存在に気付かなかった。


 まだまだ小手調べ程度の軽い戦闘と思っていたら、突如として空から攻撃を受け。

 更には白亜の服に身を包んだ軍勢が現れる。

 事前連絡してあったハズの統一神界の神々ですら唖然とこっちを見てるのだから、ヴィスデロビアの軍勢が唖然となるのは至極当然の理ですね。


「それで、僕達からの奇襲ご挨拶は気に入ってもらえましたか?」


 目には目を、歯には歯を、奇襲には奇襲を。

 やられたらやり返す、倍返しですっ! さてと敵の反応は……


「やぁ、また会いましたね」


 静まり返る戦場に響き渡る美声。

 その声の持ち主は、豪奢な椅子に腰掛けて微笑みを浮かべる、魔性の美を持つ黒髪の美丈夫。


「深淵から世界を覗く者さん」


「お久しぶりですね、ヴィスデロビア。

 尤も本体のお前と会うのは初めてなので、初めまして、だと思いますけどね」


「はははっ、確かにその通りだ。

 では改めて、初めましてルーミエル、知っての通り私の名はヴィスデロビア。

 そして……」


「死ね」


 ヴィスデロビアの言葉を引き継ぎ、発せられる女性の声。

 一瞬にして僕の背後に現れた美女。

 手に持つ漆黒の剣を振り上げた状態で姿を見せた彼女は……


「ぐっ!」


 吹飛んだ。


「僕達を前にしていきなり我が君を狙うなんて、そんなの許す訳無いでしょ?

 想定よりもバカなのかな? それとも……余程死にたいのかな?」


 美女を蹴り飛ばしたエンヴィーがニッコリと微笑みを浮かべる。

 微笑みながらその存在感でもって空気を震わせるはエンヴィー。

 そう、エンヴィーです! 今日のエンヴィーは一味違う!!


 やべぇー、今のはマジでカッコ良かったです!

 だって表には出してないけど、オルグイユ達がちょっと悔しがってますし。

 まぁ事前に行われたジャンケン……厳かな会談の結果、敵の初撃の対処はエンヴィーに決まっていましたけど。


「ヴィスデロビア様、申し訳ございません。

 小娘の抹殺に失敗致しました」


 エンヴィーに蹴り飛ばされた美女。

 丁度元いた場所、椅子に座るヴィスデロビアの隣に轟音を立てながら着弾した美女は何事も無かったかの様に佇み、ヴィスデロビアに頭を下げる。


 あ〜あ、エンヴィー可愛そうに。

 完全に無視されちゃってるじゃ無いですか。

 地道に挑発までしてたのに……うん、やっぱりエンヴィーはこうで無いと!


 若干、頬をピクピクさせてますけど、僕はいつものエンヴィーで安心しましたよ!!

 まぁ、でも前哨戦としては十分なインパクトがあったでしょう。


「さて、ここからが本当の戦い! 開戦ですっ!!」

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