第107話 暴食の眷属
この光景、既視感が凄まじい!
そう、まさに前回、瀑水の試練に訪れた際のエンヴィーの様です。
「い、いやですよ九尾殿。
私が貴女のことを忘れるはずもありませんよ」
「あら、それは光栄ね」
若干引きつった苦笑いを浮かべるネコ耳さんとは対照的に、アヴァリスには余裕の微笑みが浮かんでいます。
「ですが、流石ですね九尾殿。
あれほどの数のベヒーモスをいとも容易く退けるなんて」
「あら、あれをやったのは私では無く、こちらのコラール殿です。
尤も、この場にいる全員が可能でしょうが」
「ハッハッハ! 九尾殿も面白い冗談を仰る。
あれだけの数のベヒーモスをその男…に……」
アヴァリスの言葉を本当に冗談だと思ったのか、心底面白そうに笑い……微笑みを浮かべるコレールを見て、再びフリーズしました。
「みんなとネコ耳さんとの関係性、気になります。
メルヴィーは何か知っていますか?」
「はい。
あの男、白虎は新参者の神獣で、古の大戦時の最も新しい
あの男、自分が超越者に至った事で調子に乗り、先達に勝負を挑んだのです」
うん、まぁ調子に乗っちゃうお馬鹿さんって何処にでもいますよね……
「無論、手も足も出ずに惨敗。
人間の街に行って、やけ酒を飲んでいた際に偶然目に止まった女性に向かって愚かにも〝俺のものになれ〟と言い放ち」
「偶然人間の街に遊びに来ていたアヴァリスだったと」
「その通りです。
アヴァリス様にその様な言葉をはくなど、自殺志願者とマゾの変態だけです」
……うわぁ、それはイタイですね。
けどそれって変態って言うより、若気の至りここに極まりって感じですね。
でもまぁ、かの有名な赤い彗星の名言にも〝若さ故の過ち〟ってありますしね!
「この魔力に気配、そして何よりそのスカした態度…!!
お久しぶりです、黒龍殿」
どうやら僕がメルヴィーの話を聞いている間に復活した様ですね。
「ええ、お久しぶりですね白虎。
ですが、私だけではありませんよ」
「えっ? ま、まさか……」
コレールの言葉に促されて漸く周囲を見た、ネコ耳さんこと白虎さんはその顔に、引きつった苦笑いを貼り付けました。
「よっ!」
「久しぶりですね、白猫」
「ん、久しぶり」
リュグズールはニカッと笑って片方で挙げ。
オルグイユは蔑む様な冷たい視線で。
そしてフェルは欠伸をしながら。
この様子を見るに、どうやらネコ耳さんはフェル達にも喧嘩を売ったようですね。
「お、お久しぶりです。
それにしても、皆様がお揃いでいらっしゃるとは、何かあったのですか?
ま、まさかっ……」
「ご安心を。
別に貴方と戦いに来たわけではありません。
尤も、そうなる可能性もゼロではありませんが」
「それはどう言う…」
「それは、僕から説明しましょう」
「お前は、先程の……」
めっちゃ怪訝そうな目を向けられますね。
まぁ確かに、僕みたいな見た目幼女が出しゃばればそうなるのもわかりますけど。
「初めまして、僕はルーミエルと言います」
「我らの会話に口を挟…」
「このお方は、我々の主人です。
その事を、お忘れなきよう」
「ようこそ、お越し下さいました」
コレールの言葉を受けて面白いくらいの変わり身ですね。
一瞬にして跪きましたよ。
「じ、実はですね。
僕は友人たちから八大迷宮の攻略を頼まれているのです」
「友人ですか?」
「はい」
友人と言っても、神様たちですけど。
「そんな訳で、この火炎の試練に来たのです。
そこで一つ、提案なのですが、僕の眷属になりませんか?
勿論、貴方が僕の眷属になっても良いと言うのであれば、ですけど」
「黒龍殿たちも、貴方様の?」
「はい、皆んなは僕の
「本来であれば、貴方様の力を確かめたいところではありますが……皆様が本当に貴方様の眷属ならばその必要もありませんね。
この私で宜しければ、その申し出、喜んでお受け致しましょう」
こうもあっさりと了承してくれるとは。
それ程までに、こてんぱんにやられたと言う事なのでしょうね……
ですが、超越者へと至り、さらなる高みを目指してコレールたちに挑む貪欲さ。
アヴァリスに教育されたようですけど、その根の部分までは変わっていないでしょう。
そんな彼にこそ、暴食の名は相応しい。
「では、貴方に名前を授けます。
貴方の名前はグラトニー、暴食の意味を冠する名前です」
「謹んで、拝命致します」
今までのやりとりを見ている限り、多分常識人です、僕たちって非常識な人が多いから非常に安心しました。
そしてなりより重要なのは、これでネコ耳をモフれますっ!!
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