第6話

『簡単に言うと契約だね。

お互いに裏切れない関係になるって事だよ。

僕は周りからの信用を失うと人生詰み。

その鍵を握っているのが楓ちゃん、君ね。


そして楓ちゃん、君に必要なものは何だろうね?

自分でわかるかい……?

僕にあって楓ちゃんには無いもの。


わかるかい……?』



『…………。』



『……それがもし……手に入るとしたらこれからの楓ちゃんの人生はどう動く……?

……僕も今、非常に切羽詰まっていてね。

早いとこ和解の握手と救急車か、僕の知り合いの医者を呼んでほしい所だ……。』



『それを私に全てお前が提供すると…… ?』


『おっと、良かった。少しは興味が湧いたのかな……。

そうだね……。僕の持っている物は



そう、ご名答。権力と人脈と金と信用だ。


君に少し話した事はあったよね?


僕が政治家の母親と大手の車メーカーの社長の父の息子だって。』


確かに聞いた。

そうもらしているのを楓は井上との会話の中でそんな話をした。



『……矛盾してないか……?』



『僕が楓ちゃんに権力という力を使ってねじ伏する事も可能だってっ言いたいのかな……?』



『そうだ。』



『やっぱりね、楓ちゃんは頭がキレる子だよ、全く……。確かに、僕ぐらいの力があれば楓ちゃんひとりくらい消しちゃう事も出来ちゃうんだけどね……。


だけどそんな事はしないよ。』


『……口約束なんてあてにならない。証拠を見せろ。』



『まったくもう……用心深いったらありゃしないね。

証拠ねぇ……。僕の考えている事が直接楓ちゃんに伝わればいいのにねぇ……。


楓ちゃんは僕が君にした事を人にバラさない。

その代わり、僕は楓ちゃんの言いなりになるよ。』


『私から逃げない証拠は?

私を消すことも可能なんだろ?』


『だーかーら

楓ちゃんには理解出来ないのかなぁ……

この感情を……。

僕はね……。君を見届けたいんだ……。

綺麗な花には棘がある。まさにそれだった。

それもまた美学だね。こんなに惹きこまれたのは初めての感情なんだ……。

なんこう……ゾクゾクするんだ……。』



はぁ……と楓はため息をついた。

変態の考えている事なんてわかるわけない。


『……少なからず、殺意レベルは下げてくれたようだね。


約束する……。僕が必ず君の役にたってあげること、君を裏切らないこと。もし……僕が変な行動をとろうもんなら、君は秘密をバラせばいい。

君にそんな事されたら、さすがの僕もヤバイからね……。僕も行動はつつしむよ……。』


井上はズボンのポケットに入ってるスマホを操作し始めた。


『ちょっと……ごめんね……楓ちゃん、もう僕、意識が飛びそうなもんで……。

もし契約成立なら、ここに電話して……。

駄目なら……もう見殺していいよ……。』


そう言って血まみれになったスマホを楓に渡したのち、井上は力なく床にパタンと倒れたのだった。













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